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目覚めたら死んでから10年経っていた、まずは国に帰ろう  作者: しろねこ。


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味方で敵

「あの男は誰だ」

レナンの隣でお茶を飲む男を見て、急転直下にエリックの雰囲気が変わる。


明確な殺意を持って、レナンの隣に座る男を睨みつけた。


年の頃はレナンくらいだろうか、優し気で柔和な雰囲気を醸し出している。


レナンも微笑みを返していた。


先に気配を感じたキュアが真っ青な顔をしてエリックを見る、次いでレナンに話しかけていた。


「レナン様、エリック様がおいでです」

それを聞いて、レナンの表情が明らかに変わった。


ぱぁーっと明るくなり、席を立って駆け寄っていく。


エリックは殺気を引っ込めて両手を広げた。


「エリック、来てくれたの? 忙しいから会えないのかと思って」


「一段落着いた。レナンと久々にお茶を飲もうと執務室に行ったが、侍女からここにいると聞いてな。会えて良かった」

レナンよりも身長が高くなったので、しっかりと抱きしめることが出来る。


「それであちらの人は誰かな?」

レナンに見られないように気をつけ、男を射抜くような目で一瞥する。


「エリックは初めて会うかしら? 宰相のカイル様よ。ヒューイ様が腰を痛めてから後任を務めてくれているのだけど、いつも色々な事に相談にのってもらってたの」

カイルと呼ばれた男もまた、エリックを何とも言えない表情で見ていた。


「初めまして、エリック様。宰相のカイルと申します」


「初めまして、ではないな。そう言えば数度顔を合わせている」

レナンの体を離し、自身の横に並ばせた。


肩に手を回し、引き寄せることは忘れないが。


「知っているの?」

レナンのキョトンとした声。


「知っている。さっきは気づかなかったが、ヒューイの息子だろ? 俺の付き添いもしてくれていたな。カイルは覚えていないか」


「失礼しました。あなたが本物のエリック様とは限らないので」

カイルが頭を下げるが、悪びれた様子は感じられない。


「エリック様は死んだと伺っていますし、複数の兵士も目撃しています。ですから、今目の前にいるあなたが本物なのか。疑わしいです」


「生きていた。こうやって動いているし、レナンも国王も認めている。呪いで小さくなったから、解決するまで表舞台から姿を消していただけだ」

エリックは淡々とそう述べる。


家族以外には詳しい事情の説明はしていなかったが、こうして真っ向から否定されたのは思えば初めてだ。


カイルは納得していない憮然とした表情をしている。


「そうですか」

当たり前だが、まだ信用は得られていないようだ。


納得していないのは仕方ない。


この姿のエリックは何も成しえていないし、ブランクもある。


しかし、それらはレナンに近づくことを許す理由にはならない。


「何故一緒にお茶を? そんなに親しい仲なのか?」

少し拗ねたようにレナンに囁けば、レナンは顔を振って否定する。


「仕事の話をしていただけで、そんな深い意味はないです」

はっきりというレナンの言葉に安心した。


「すまない、要らぬ嫉妬をしてしまった。けれど今度からはキュアがいたとしても俺抜きで男とはいないでくれ」

そっと耳元でそう言われ、レナンはさっと血の気が引く。


「ごめんなさい、わたくしそんなつもりは……」


「わかっている。そんな気はない事も」

本当に仕事の相談だったのだろう、わかっているつもりだが、許せるわけではない。


「カイル。レナンを支えてくれてありがとう、礼を言う。今後は俺を通して話をしてくれ。もう大丈夫だから」

レナンの腰に手をまわす。


「近々正式に発表する。空白の王太子の座は終わりだ」

真っ向からカイルを見る。


どう感じたのだろうか。


「アルフレッド様より、お言葉を賜ったのであれば信じましょう」

どこまでもエリックの言は信じないカイルに、控えていた二コラが隠し持った短剣に手を伸ばす。


「放っておけ二コラ、信じられないのは仕方がない」

宰相たるもの確固たる証拠もないままに、他人の言葉を信じてしまう軽い頭でも困る。


「今後は俺の手足となって動いてもらうかもしれないしな。ただし、必要以上にレナンに近づけば許さない。覚えておけ」

カイルがレナンを見る。


レナンは男同士のやり取りになんとなく居心地の悪さを感じていたが、カイルと目が合ったため、にこりと微笑んだ。


カイルは少しだけ切なげな目をレナンに向ける。


「レナン様がこれ以上傷つくことがなければ、それでいいです」

カイルは失礼しますと言って、その場を後にする。


「キュア、少々お話したいことがありますね」


「は、はいっ!」

二コラの丁寧な口調の中には、何故レナンの側に男を寄せていたのかという棘が、隠れもせずに入っていた。


二コラとキュアが離れたところでエリックはレナンと向き直る。


「俺も話したいことがある。なぜ俺ではなく他の男とお茶をしていたのかと」

エリックは椅子に座り、自身の膝の上にレナンを呼び寄せた。


有無を言わさぬ圧をかけられ、恐る恐るレナンはそこに座る。


「仕事の相談で、お礼のつもりでお茶に誘っただけよ。キュアもいたし、変なことにはならないわ」


「そうだとしても、俺がいない時は近づかないで欲しい。俺がもしも他の女性と楽しそうにお茶をしていたら、嫌じゃないか?」


「……ごめんなさい」

レナンは素直に謝る。


「今まではいい。仕事の相談を宰相とするのは自然な事だから。ただ、今後は俺か二コラを通して欲しい」

頷くレナンをしっかりと抱きしめる。


(知らぬ間に厄介な恋敵が出来ていたな。一筋縄ではいかなそうだ)

恐らくカイルはレナンに思慕の念を抱いている。


そんな感情もあってエリックを本物だと認めず、寧ろ否定的だ。


宰相が認めていないのに、王太子へと返り咲けるのかと怪しくなってきた。


このまま戻っても仕事に支障はきたすし、下手したらまわりと同調してエリックを締め出そうとするかもしれない。


「何を持って知らしめればわかってくれるか、ということになるだろうな」






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― 新着の感想 ―
[一言] ムムムッ一筋縄ではいかないようですねぇ(;´・ω・) 10年の年月は・・長い!! カイルの存在は今後も気になります。悪い人ではなさそうなので・・ レナンは悪気なく鈍感なところがあるようだしな…
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