命の期限
「その時の小鳥はレナンの魔力を封じた時に死んでしまいました。多分だけど、レナンの魔力が小鳥を生かしていたようですわ」
「封じた? あなたが」
リリュシーヌはそんな事も出来るのか。
「魔封じの腕輪と同じような原理です。生物を生き返らせる魔法なんて、危険すぎるからとディエスと相談して封印しました。レナンは知りませんが」
リリュシーヌは二コラを指さす。
「あなたの魔法も似たようなものでしょ? 禁呪と言われてる魔法よね、魂に干渉するもの。そんなものが世に溢れたら大変なことになるわ」
二コラは胸を押え、苦い顔をする。
使い方によっては不死の軍団を作ることも出来る危険な魔法だ。
だから王家で管理している禁呪の一つとなっている。
「確かに危険ですね。もしもこの力が知れ渡ったら、大変なことになる」
二コラにかかっている魔法も、レナンの魔法も使い方次第ではあるのだが、死なない魔法なんて、欲しがるものばかりだ。
「エリック様の死という強いショックが引き金で、レナンにかけた封印が解けたのでしょう。今もずっとエリック様への魔力の供給は続いてるはずですが、レナンはそれを知らないと思います。幼い頃から魔法が使えないと思いこませてきましたから、魔力が出ている感覚もわからないと思うのです」
もしも気づいていたら、ミューズなりキュアなりに相談しているはずだ。
身近な魔術師に話もないとなると、全く知らない可能性が高い。
「そうですね。リリュシーヌ様貴重な話をありがとうございます、そして幼き頃のレナンの魔法を封印していてくれた事も感謝します。そんな魔法が使えるとは想像もしていませんでしたが、レナンが知らずに過ごせてよかった。俺も実の子がそんな魔法を使えると知ったら、同じことをするでしょう」
悪しきものに狙われることなく、ここまで過ごすことが出来たのは奇跡だろう。
もし知られていたら、その力欲しさに誑かそうというものが出ていたかもしれない。
「魔法の使い方も知らないし、今はエリック様に魔力を注いでいるため、魔法が使えたと気づいても大したものは使えないはず。仮にレナンが魔法を使って、魔力が尽きてしまったら」
リリュシーヌもさすがに言い淀んでいる。
「俺は死んでしまうでしょうね」
言いづらい言葉をエリックはあっさりと口にする。
「二度目は生き返れるか分かりませんから、充分に気をつけてください」
死んだ小鳥はもう花弁のようには散らなかった。
残った小さい亡骸を泣きじゃくるレナンと共に埋葬してあげたのが思い出される。
「大事な話ですがあまり広めたくないのです、その為にまずはお二人に話しました。二コラさんはエリック様が死んでしまうと一緒に亡くなると聞いたから、同席してもらいました。誰に話すかは、お二人で決めてください。ミューズには私が伝えます、あの子の魔力が必要になる時が来るかもしれませんので」
リリュシーヌからの話は以上だ。
「エリック様……今後どうしましょうか」
二コラは心配そうに、沈黙するエリックを見る。
エリックは考え込んでいた。
リリュシーヌから聞かされた、生き返った経緯。
何故隣国のパルス国で生まれ変わったのか。
自分の体の前の持ち主はどうなったのか。
何故急に記憶が戻ったのか。
曖昧な事は多いにせよリリュシーヌの話が本当なら、この命はレナンが救い、与えてくれたものとなる。
レナンが死ねば魔力供給も断たれ死んでしまうだろうが、それは別にいい。
置いていかれるのも置いていくのも辛いものだ。
自分はいくら傷ついてもいいが、レナンが傷つくのは嫌だ。
「レナンと俺が一蓮托生になったくらいだ。今までとそう変わるものではない」
命を賭して守るのは苦ではない。
「ただレナンの守りを強化しなくてはならないだろう。俺が死ぬのは良いが、魔法が世に知られて利用されるのは避けたい。父上や弟達なら悪用の心配もないし、前触れなくまた俺が消えてしまうかもしれないから、早めに事情を伝えておいた方がいいな。レナンにもいつかのタイミングで伝えるが、今は心身を整えてからだ。相当憔悴しているから、これ以上無理させたくない」
エリックがいない間、相当頑張っていたからこそ、今は言えない。
「いつか俺が話すから、ニコラは皆に伝えて欲しい」
「わかりました」
エリックと二コラの様子にリリュシーヌは安心する。
「荒唐無稽な話を信じてくださってありがとうございます。そしてエリック様、改めてレナンをよろしくお願いしますね。まだまだ謎だらけな魔法なので、私の方でも弟のロキと一緒に調べていきますわ」
生き返らせる魔法についてなど情報が少ないが、他国の魔法や魔道具についても詳しいロキにも相談すれば、新たな展望も期待できる。
「こちらでもまた何かわかりましたら伝えますね」
リリュシーヌを見送り、レナンのもとへと急ぐ。
やることはいっぱいあるが、今は心配しているだろう妻を早く安心させてあげたかった。




