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子ども達と

「お父様は俺達を覚えているかな」

アイオスが心配そうに言う。

「当たり前よ。それどころかお父様の事だから、私達がした悪戯も絶対覚えているわ!」

フィオナは身を震わせていた。



「そう言われると、会いたいような、会いたくないような」

アイオスは記憶の中の父を思い出す。


優しくも厳しい父親だった。

おっとりとした母と違い、理論詰めで怒られた時は本当に怖かった。



「お父様は、こわいのですか?」

一度も会ったことのないリアムは恐る恐る聞く。

肖像画でしか見たことがなく、想像が出来ない。


頭が良く、そして母を寵愛していたと聞く。


一方では慈悲深いという話と、一方では冷酷という話を聞いた。


叔父のリオンが王太子になればいいのに、という話も聞いた事があるが、リオンも祖父のアルフレッドも、それをよしとしなかった。


「こわい。でも、それだけじゃない。とても強くて、優しい人だ」


最後の光景はアイオスもフィオナも幼いながらも覚えている。


楽しいパーティ準備から一転、見たことない兵士達が迫ってきた。


いち早く察した近衛兵たちに抱えられ、アイオスとフィオナは屋敷内の隠し部屋へと匿われた。




父が母を庇っていたのが見えた。



その後父の訃報を聞いた。






アイオスとフィオナは信じられなかった。


遺体を見ていないから尚更だ。



そのうちに、いつの間にか父の従者の二コラの姿も見なくなった。


亡くなったという話だが、本当は生きているとこっそり教えてもらえた。




母のレナンにはあの日の事を聞けないから、そう言った疑問が浮かんだ時は主にリオンに教えてもらった。


いつでも穏やかな雰囲気を纏っていて、どんなに忙しくてもアイオス達をないがしろになんてしない人。


言いづらいことを聞いても、真摯に対応してくれて、嘘や誤魔化しもしなかった。

年齢にそぐわないことは、

「もう少し大きくなったらね」

と言って、その年齢になるときちんと教えてくれるような人だ。





そんなリオンをアイオスとフィオナはひどく怒らせてしまったことがある。


何かの一度リオンが本当の父親だったらいいのにと言った時、珍しくリオンが大声を上げたのだ。


「二度とそんなことは言わないように」


驚いたし、焦った。


あの時はしばらく言葉も交わしてくれなくなり、困ってしまった。


もう一人の叔父、ティタンが間に入ってくれて、諭してくれた。


「リオンはアイオス達の父親で、俺達の兄でもあるエリックを尊敬している。今リオンが力を尽くし、そして親身にお前達の面倒を見ているのは兄上が帰還した時の為だ。その兄上を蔑ろにするような発言が、許せなかったのだろう」



「…でも二コラもいなくなって、もう何年も経つよ。本当に父様は生きているの?」


「生きている、必ず帰ってくるさ」


ティタンは自信満々で言った。




そんな話をしてから、数年。


ようやく今日会えることとなった。


今、父は母と会っているはずだ。

まずは二人を先に会わせようということで、三人は待つように言われたのだが…。





遅い、遅すぎる。



「これ、もしかして、今日会えないパターン?」


暮れゆく空を見ながら、そんな予感がよぎってしまった。

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