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そして妻の元へ 

朝が来て、皆で朝食をとった。

二コラの姿に驚くかと思ったが、驚いていたのはセレーネとヘリオスくらいだ。


マオを含め、皆二コラが来るだろうと知っていたらしい。


どうにも秘密にされることが多い。

動じるほどの事ではないが、良きサプライズとして受け取るにとどめた。


いつか仕返しはしてやるが。





他愛ない会話をしつつ食事を取るが、つい気が急いてしまう。





ようやく出発し、アドガルム王城に向かう馬車の中で、突然ミューズやティタンに謝られた。




「不便をかけてしまい、すみません。転移魔法でアドガルム王城へ行ければ早かったのですが」

「いや、それはミューズ嬢の負担がかかるだろうと思っていわなかった。何か別な理由があるのか?」


ミューズは一人で転移魔法を使えるくらい強い魔力を持っている。



ミューズの負担もあるだろうし催促はしなかったが、あらためてティタンが言うのだから何かあるのだろう。


「魔法の危険性を考え、使用には国王の許可がいるようになりました。有事の際ならともかく、迂闊に使用したら厳罰となります」


「まぁ確かに危険だからな」


使用者が限られるとは言え、悪用されれば逃げ放題だ。


必ずしも善人が用いるわけではない。





「兄上を殺した者たちもそうした転移魔法を用いての急襲でしたので。今はリリュシーヌ様やロキ殿にお願いし、常に国中を見張ってもらっています」

リリュシーヌはミューズの実母にあたり、ロキはその弟だ。


二人とも強い魔力を持つため、国全体へ防御壁を張ってくれているそうだ。


負担を減らすためにと、ロキが開発した魔道具も用いて防御壁の強化を行なっている。


魔術師が魔力を注ぐだけで国全体への防御壁が張れるようになっているが、まだ完成途中だそうだ。


いずれはリリュシーヌに頼ることなく、永続的に張れるようにと魔術師と魔道具の強化を急いでいる。


魔力の強いロキの子ども達もその仕事を担っていた。




「そうか、対策がなされているなら何よりだ」

使えなくても支障はない。

もともとエリックにはない力だし、移動手段ならこうして馬車もあるのだ。


過ぎた力は身を滅ぼすものだ、制限をかけるのは当たり前だろう。





あの時は大規模な転移術により突如現れた多数の敵兵により、護衛にあたっていたアドガルム兵にも多数の死者を出してしまった。


美しい花々が咲く季節で、皆で花見でもしようと兄弟達とパーティを開く予定だった。


エリックの別邸で行われる予定で、皆が来る前に色々な準備をしていた矢先の事に、エリックは暗殺されてしまったのだ。





ティタンは話題を変えようと、王城に着いてからの話をする。


「まずはレナン様に会いに行きましょう。一番会いたいはずです。父上や母上、甥達も城内にはおりますから、レナン様との話しが落ち着き次第、話をしに行きましょう」


「オスカーやキュアも王城にいるのか?」


「えぇ。オスカーもキュアもレナン様の為に尽力してくれています」


「変わらず仕えてくれているとは有り難い」


レナンと従者達といた、騒がしい日々が思い出される。



「大きく変わったこともありますが、早く兄上に教えてあげたいですね」

ティタンとミューズが微笑み合う。


「俺を驚かせようという事だな。ニコラの件といい、ヘリオスの件といい、俺に隠し事をするとはティタンも随分偉くなったものだな」


そうは言いつつも咎めるような口調ではない。


「大人になったと言ってください。どれも悪い隠し事ではなかったと思いますよ」


茶目っ気たっぷりに笑って言った。





「ふふ、楽しみにしているよ」

エリックは着くのが待ちきれない程、高揚していた。






城門が開き、中に入る。


先頭をティタンとミューズが、その後ろにエリックが付いていき、更に後ろにはマオとニコラ、そしてルドとライカも従っていた。



アドガルム城は経年劣化によりところどころ補修されて綺麗にはなっていたが、外観も内観も大きく変わりはない。


自分の記憶の中のものと大して変わらない城内にホッとする。


兵士たちはエリック達を見て、敬礼をしてくれる。


「見知らぬ者も増えているが、そこは仕方ないか」

エリックの物言いにぎょっとしているのは新米兵士だろう。

見たこともない子どもが不遜な言い方をしているのだ、驚くのも無理はない。


エリックを見たことがあるものは何となく感じられる威厳に威圧され、身動き一つしない。



「エリック様!」


オスカーとキュアが駆けつけて来た。


ニコラも一緒にいるのを見て、オスカーは涙を流す。






「良かったです!ずっと心配しておりました!」

白髪の一部を紫に染めた騎士がエリックに跪く。


端正な顔をグズグズと涙と鼻水で汚し、何枚もハンカチを出して拭っていた。


上質な生地で仕立てた騎士服に腰に差した剣。


エリックの元護衛騎士で、今はレナンの護衛騎士をしている。






「あたしもずっと待っておりました!レナン様もこれで元気になります!」


キュアも同じくらい泣いていた。


緑の髪をサイドテールにした術師の女性だ。

マントを羽織り、腰には細身の剣がある。

レナンの護衛術師だ。




「二人がレナン様のもとを離れてどうするのです。安全な城内とはいえ、油断してはいけません」

ニコラが心配になって咎めた。


感情起伏の激しい二人と、冷静な二コラ。

三人の関係性は昔と変わらなかった。


「ご安心を。レナン様の元にはリオン様とカミュがおります。私達は皆様をお迎えに来たのです」

オスカーに促され、エリックは足を早めた。


「レナンは、どういった様子だ?」


「とても緊張なされていますわ。早く会いたいと昨夜もあまり眠れなかった様子でした、ずっとエリック様を想っております」

キュアの言葉に嬉しくなる。


自分も早く会いたいと願っていた。



変わらぬ廊下を通り、ようやくレナンの部屋の前へと来た。

ノックをし、エリックは自らドアを開ける。








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