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第4話 緊張の初メッセ

 ”のんのん”にメッセージを書くことを決めたトムスに、リヒトは何かを手渡した。


「これが専用の紙とペンね。他の紙使っちゃダメだぜ。怪しい動きがあれば罰金を……まぁ君は大丈夫そうだな。あっ、そうだ。ニックネームと年齢、居住番街は向こうにも提示されるから、わざわざ書かなくて大丈夫だぞ」


 その時、トムスが口を挟んだ。


「僕の趣味は提示されないのか? この人のクエストには趣味欄があるが」

「趣味はその都度変わるからな。例えば『スポーツしたい』ってクエストにメッセージ出すなら『自分も趣味はスポーツです』とか書いた方が都合が良いだろ。だから好きな風に書けるよう、趣味は会員情報として管理してないんだ。自由に書けよ」

「なるほど……」


 リヒトは喋り終わると、またすぐに引っ込んだ。

 彼はヘラヘラしているが、本当はすごく頭の良い男なのだろう。

 トムスはそんなことを考えながら、丁寧な字で手紙を書き上げた。


**********

のんのんさん、初めまして。

あなたの真面目そうな文章に惹かれまして、お手紙差し上げます。

私も休暇には外食を楽しみにしております。

今夜是非ご一緒したいです。

待ち合わせは20刻、14番街の噴水の前などいかがでしょう?

**********


 最後に「トムス」と書きそうになったが、ニックネームのことを思い出して「トーストより」と書いておいた。


──チリーン


「おう、書けたな。じゃあ配達で3コイン頂くぜ。この後しばらくはこの酒場にいるだろ?」

「僕は夜までここにいるよ」

「分かった。返信が来るかどうかは、向こうの女性次第だがな」


 トムスは客席に戻ると、リヒトに奢ってもらったエールと、アテに頼んだフレアバードの手羽先をちびちびやりながら返信を待った。


 夕方16刻頃。

 返信は思いのほか早く届いた。


「トムスさんッスよね?」


 そう声をかけてきたのは、目をくりくりさせた可愛らしい少年。


「ラヴクエ配達員のウリルッス! 初めましてッス」

「ああ、よろしく」

「お渡しの前に会員証を拝見して良いッスか? 規則なので……はい、確認しましたッス。どうぞッス」


 ウリルはぺこりと一礼すると、小走りで他の客のところへ向かってまた会員証を確認している。

 忙しそうなウリルの小さな背中を横目に、トムスは手渡された封筒を開けた。


**********

トーストさん、初めまして。

丁寧なお手紙をありがとうございます。

あなたのような誠実そうな方を探してました。

是非ご一緒しましょう!

20刻に噴水の前でお待ちしてます。

黄色の髪に銀の髪飾り、黒のカーディガンを着てますので、見つけたら声をかけてくださいね。

楽しみにしてます!


のんのん

**********


 同年代の女性から手紙を受け取るなど初めての事だったので、トムスは舞い上がった。

 上気した顔のままカウンターに目をやると、リヒトと目が合った。

 トムスの嬉しそうな顔を見たリヒトは、グッと親指を立てておいた。


「リヒトのアニキ~。あの人すっごく嬉しそうッスね」


 配達仕事を一段落させたウリルは、ニコニコして言った。


「そうだな……」


 「最初からそんなうまくいかねえだろうけど」という言葉を、リヒトはギリギリで吞み込んだ。

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