第20話 戦火の一目惚れ
人間の国アダーマと、エルフの国ハイガルド。
二つの国は、”神樹の森”と呼ばれる大きな森と川で隔てられている。
ある時、その森でモンスターの大量異常発生が起こった。
しかも異常発生したのは一種だけではない。
スライム、リザード、ビースト……森に住むモンスターの全てが突如として大量に出現し、自然を破壊し始めた。
さらには森を超えて人間やエルフの生活域にまで出没し、農作物を食い荒らしたり、住民に危害を加えるといった事件まで起こったのだった。
そこで人間とエルフは結託し、大規模な掃討作戦を決行した。
それぞれの国から兵員を出し合い、数万人に及ぶ部隊を結成してモンスター討伐を行ったのである。
五日間に渡る激戦の末、モンスターは激減し、森の生態系は無事に正常を取り戻した。
エリスはその際、魔法兵として作戦に参加した一人であった。
***
アーウィンはウンウンと頷きながら話を聞いている。
「なるほどなるほど。で、その作戦中に共闘した戦士を探していると」
「そうなんだけど……戦いではずっと銀色の鎧兜を付けていたから、顔が分からないのよね」
「他に何か特徴は?」
「うーん、とにかくものすごい強さだったわね……大槍を振るって敵を蹴散らすあの姿……あぁ、是非もう一度お会いしたいわ」
エリスは両手の指を組むと、うっとりと目を閉じた。
アーウィンは困ったように髭を撫でている。
「協力したいのは山々なんだが、俺には分からないな……」
そこへ、リヒトがひょっこりと顔を出した。
「へーえ、エルフって本当にいるんだな。この長ぇ耳、ゲームやアニメで見た通りだ!」
「ちょっと、あなた何?」
「ああ失礼、みんなの出会いのギルド“ラヴ・クエスト”代表のリヒトだ。さっきの話、聞かせてもらったぜ」
リヒトはエリスの隣に座ると、手に持ったエールをごくごくと飲んだ。
そして、得意げに笑いながら言った。
「俺、心当たりあるんだけど」
「本当!?」
エリスはカウンターに手をついて勢いよく立ち上がった。
エメラルドグリーンの髪がなびく。
「あぁ本当だ。銀の鎧に大槍で、ものすごく強ぇんだろ?」
「ええ、それはもう常軌を逸した強さだったわ……」
「アンタはその騎士が好きなのか?」
「……」
エリスは頬を赤らめて頷いた。
リヒトはその様子をニヤニヤと眺めている。
「ははーん、一目惚れみたいな事か」
「私、強い人が好きなの」
「“強い人”で良ければウチにも変な喋り方の青いヤツがいるけど……」
その時、二人の様子を黙ってみていたアーウィンが口を挟んだ。
「さすがリヒト、顔が広いな。心当たりがあるなら紹介してやれよ? 知り合いなんだろ」
「知ってはいるけど、何ていうか、その──」
リヒトが言いかけた時、店の扉が開いた。
そして入ってきたのは、見覚えのある銀鎧であった。
「失礼。ビッグハット亭ってのはここだな?」
「あーあ、向こうからやってくるとは……」
リヒトはため息をついた。




