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第16話 ”エロいこと”は悪いこと?

「アンタ……ジルって言ったな。男が嫌いなのは分かるけどよ、恋愛ってそんなに悪い事じゃないぜ?」

「……はぁ」


 ジルはため息をつくと、机に置いてあったコップの水を飲んで息を整えた。


「女性に好かれるためのノウハウを説くなど、いかがわしいこと極まりない……」

「そうかあ?」


 リヒトは半笑いで答えた。


「何がおかしい?」

「アンタさあ、”エロいことを悪い事だと思ってる”だろ」


 ジルは狼狽えた。

 敢えて意識はしなかったが何となく思っていた事を、初めて明確に言語化された気がした。


「エ……性的な事は、いかがわしいだろうが!」

「じゃあアンタはどうやって生まれたんだよ」

「そ、それは──」

「男女交際や性行為が悪い事だって、どうして言える?」


 漠然と、そういった行為はいかがわしいと思い込んで生きてきた気がする。

 しかしそれがなぜかと聞かれると、ジルには答えられなかった。


 言葉に詰まった彼女を見かねて、リヒトは話を進めた。


「ところで、ジルは学校行ってたのか?」

「修道院付属の学校に通っていたが……それが何だ」

「学校じゃ、勉強以外にも色んな事を教わるだろ。道徳に、掃除に、友達の作り方。目上の人間との話し方とかな。恋愛について勉強するのだって、それと同じじゃねえのか? もちろん”歳相応”ってのはあるけど」

「……」


 ジルはもう何も言い返せなかった。

 ただ、深く考えずに雰囲気だけで突っ走ってしまった自分を恥じた。


「私は……騎士失格かもしれないな。すまなかった」

「まあまあ、そう肩を落とすなって。アンタも色々あったんだろ? 別に深くは聞かねえけどよ」


 ジルは黙って、後ろの机に置いてあった水差しを取った。

 それを自分のコップにつぎ足すと、もう一つのコップにも水を入れリヒトの前へ置いた。


「……あなたの話もきちんと聞こう」

「そうかい。じゃあ説明させてもらうぜ」


 リヒトはチラシを出すと、ラヴクエのシステムを一通り紹介した。


「なるほど……女性会員も多いのか?」

「今のところ3割くらいだな。水商売の営業に使ってる子たちも含めて、だが」

「それ以外の一般人は、やはり純粋な恋愛を求めて来ているのか?」

「そういうやつもいるし、身体目的、それこそワンナイト目的の女の子もいるぜ。女にだって性欲はあるからな。ちゃんとお互いの合意があれば、別にやましい事でも何でもないさ」


 この時のリヒトは営業トークではなく、完全なる本心で喋った。

 そして、客に読ませる用の利用規約もたまたま持ち歩いていたので、ざっとかみ砕いて説明をした。


「随分手の込んだ規約だな……これをあなたが作ったのか?」

「ああ。こういった場を提供する以上、俺にはユーザーを守る責任がある。規約違反の不届き者は稀に出たりするが、全力で取り締まってるぜ」


 リヒトはついでに、規約違反への対応の詳細や、今までに成立したカップルについても話しておいた。


「とまあ、こんなもんかな」

「なるほど、よく分かった。……やはり私の早とちりだったようだ」

「だろ? しかも女性ユーザーに関しては無料でコイン配布があったり、割引も多い。むしろ男の方が不利益を被ってるくらいだぜ?」

「なるほどなあ」


 ジルは資料から顔を上げると、リヒトを見つめた。


「……んだよ?」

「いや。何でもない」


(女を蔑む男ばかりを見てきたが、意外と真面目なヤツもいるもんだな。男がみんなコイツくらい真剣に考えていれば……)


 こんな状況でもはっきりと自分の意見を言うリヒトに、ジルはいつの間にか惹かれていた。

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