第15話 鎧の中の素顔
13番街にある大衆酒場”ビッグハット亭”。
【みんなの出会いのギルド ”ラヴクエ”】の看板の下には、”本日休業”と書かれた紙が貼り付けられている。
ネズミから連絡を受けた配達員のウリルが、大慌てで用意した貼り紙だ。
「リヒトの兄貴、大丈夫ッスかねえ~」
「大丈夫だろ。リヒトは強え」
ビッグハット亭の裏口で、心配そうに目をウルウルさせるウリル。
その隣には、フードを深く被ったネズミの姿があった。
「ま、オイラはオイラに出来ることをするだけだぜい」
「そうッスよね……とりあえず今日の分は、配達頑張るッス!」
ウリルは目元を拭きながら店に戻った。
「さてと、オイラは早いとこリヒトを探さねえと……」
ネズミはフードをより一層深く被りなおすと、身軽な動きでどこかへと走り去った。
***
一方その頃。
リヒト、カイン、ミロクの三人はジルに捕らえられ、東区2番街にある衛兵の詰め所へと連行されていた。
従順にここまでついてきたリヒトの要望が通り、取調室に拘束されるのはリヒトのみ。
カインとミロクは広い待合室で、お茶を飲みながら待つこととなった。
「で、何なんだその”出会いのギルド”とかいうのは? どうせいかがわしい売春の仲介でもしているのだろう!」
兜を外したジルは、鼻が高くて眼力が強く、凛々しい顔をしていた。
金色の短髪で、瞳は透き通ったエメラルドグリーンである。
「いやいや、たしかに営業に使ってる女の子もいるけど、大半は一般ユーザーだよ。別に悪い事はしてねえって」
「クソ男共を女性に引き合わせて、強姦の手助けをしているのと同じだろうが!」
「全然違ぇよ……規約違反の報告にはきちんと対応してる──」
「言い訳無用!」
そう叫び、ジルは目の前の机を殴りつけた。
木製の机にピシッとヒビが入る。
「おいおい落ち着けって……俺たちはただ、男女の出会いをサポートしているだけだってば」
「はーん? まだ言い逃れするつもりか」
ジルはリヒトの顔を睨み、覗き込んだ。
(やっぱ綺麗な顔してんな……目つきさえ直ればモテるだろうに)
「おい! 何ぼーっとしてる!?」
「すまん、見惚れちまって」
「なッ……!?」
ジルの白い肌が一瞬にして赤くなった。
「眉間にシワ寄っちまうぞ? 綺麗な顔してんのに勿体ねえ」
「お、お前、何言って……?」
メイクが濃いギャルほど、内面はナイーブ。
服装の派手な港区女子ほど、実は寂しがり屋。
“言葉や態度の強い女性ほど内面が柔らかい”というのは、リヒトの元いた世界では常識だった。
「まあまあとりあえず、一旦落ち着いて話しようぜ」
この一言をきっかけに、一気にリヒトが話のペースを掴んだ。
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