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09話.[だからちゃんと]

「犬塚は変わったなあ」

「そうですか?」


 今日も手伝いをしていたら間瀬先生が急にそんなことを言ってきた。

 そこまで変わった感じがしない自分はすぐにそうか? と聞き返してしまう。


「ああ、なんか四月と違って明るいんだよ」

「それは碧とか他の友達のおかげです」

「そうか、良かったよ」

「ありがとうございます」


 依然として楽な作業しか任せてくれないからまた早めに終わってしまった。

 まあ約束をしているからいいんだけどさ。


「碧、終わったよ」

「お疲れ様、ここに座ってちょうだい」


 椅子に座ったら肩を揉んでくれた。

 優しいな、態度も力加減も。

 今日は汗もあまりかいていないから問題もない。

 なんだろう、これが母性なのだろうか?

 彼女の側にいるとなんか落ち着く。

 無茶な要求とかをしてこないからと考えているけど……どうなんだろうね。


「あなたは発言通り、私といてくれているわね」

「うん、芽生には凄く文句を言われるけどね」


 だけどそれとこれとは別だと考えているからと伝えた。

 彼女も大切な友達のひとりで、寧ろこちらから行きたいぐらいだった。

 何故かよく話を聞いてくれるからだ。

 だからぺらぺら何度も話してしまうという流れになってしまっている。


「あなたは間瀬先生が言うように変わったわ」

「あれ、聞いてたの?」

「ふふ、気になったのよ」


 どうやら拒絶オーラを出さなくなったみたいだ。

 個人的には出しているつもりはなかったからそう言われても違和感しかないけど、結局のところ判断するのは他者なんだから彼女が正しいということにしておく。

 そもそも見てくれていたのは彼女ぐらいだろうからそれを信じないとどうしようもないし。


「芽生だけじゃない、碧のおかげでもあるんだよ」

「私は最初、あなたのことが少し怖かったわ」

「そうなのっ?」


 私が怖いとは……柔らかい雰囲気をまとってそこに存在していたつもりだったんだけどなあ。


「でも、関わってみるとその人のことが分かって、あなたなんて特に雰囲気で損しているなと思ったの」

「それは碧もそうだよ」

「それなら似た者同士ということでいいじゃない」

「ははっ、そうだねっ」


 きっかけは無数にあって、だけどそれを有効活用できるかどうかはその人間次第で。

 私がそれを活かせたのかどうかはまだ分かっていない。

 けれど、こういい状態に繋がっていたわけなんだから良かったと考えて堂々と過ごしていればいいだろう。

 大丈夫、仮になにかが間違っていても友達が止めてくれる。

 友達が困っていれば大丈夫? と歩み寄ることができる。

 そうなれたことに感謝しかない。

 だからちゃんと、直接、言っておいた。

 彼女は笑って、


「こちらこそありがとう」


 と、言ってくれたのだった。

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