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10話.[やれているんだ]

「はぐー!」

「暑いよ」


 碧の相手をするなら当然、こちらの相手もしっかりしなければならない――というか、こちらの方を本来は優先しなければならないんだけど……。


「あー、夏休みは部活ばかりだよ……」

「お疲れ様」


 そう、これのせいであまり会えていないのだ。

 練習時間が普段と違いすぎるせいで夜に会いに行くということすらも疲れてできないらしい。

 友達としても彼女としても休めるときには休んでほしいからそれでいいと言っている、けど、彼女的にはどうやら納得のいかない毎日みたいだ。

 部活は好きだけど私が好きだからこっちを優先したい! ということをこの夏休みでもう何度も聞いた。


「でも、犬子がこうして構ってくれるからやれているんだ」

「それなら良かった」


 ただいつも通りなにがあったかを聞くだけしかできないけど、彼女がそう言ってくれるならとそのまま受け取ればいい。

 余計なことを言わなくていいんだ。

 それに私は色々吐きながら色々な表情を浮かべてくれる彼女が好きだから。


「芽生」

「うん?」

「好きだよ」

「え」


 彼女と一緒に過ごす度に彼女が近くにいてくれることのありがたさに気づけるからだ。

 学校でどういう風に、部活でどういう風に過ごしているのかはあくまで想像でしか分からないけど、こうして忙しい間にもちゃんと来てくれるところがいいから。


「というわけでほら、休んでよ」

「ありがとー」


 あとは甘えてくれるところかな? って、いまのだけで判断すれば無理やりそうしてもらっているみたいだけどさ。

 髪を優しく撫でると触り心地がいいし、彼女も笑ってくれくているような感じがするからいいんだ。


「犬子」

「うん?」

「もっと会いたいよ」


 そう言われても部活を休んでとは言えないし無理だ。

 彼女もまたサボれるようなメンタルはしていないだろうから所属した以上、仕方がないことだ割り切るしかない。


「私はいつでも待っているから」

「……でも、私がいられない間に恵ちゃんや碧ちゃんと仲良くして離れていくかもしれないし」

「それはない、あくまで友達というだけだよ」


 まだまだ不満そうな顔をしている。


「……はい、これでどう?」

「……なんで唇にじゃないの?」

「そんなの未経験の私が効率的にできるわけないでしょ」

「じゃあ、んー!」


 あの……全然届いていないんですが。

 本当に部活をやっているのかな? と疑問に思っていたらいきなり届いて流石に驚いた。


「ふふ、犬子は私のだから」

「私は私のだよ」


 腹筋が尋常じゃないぐらい弱いというわけではなかったみたいで安心だ。

 もし弱かったらそれはどうなの? って聞きたくなるぐらいだから良かった。

 あとは不安や不満そうな顔をされなくなったのと、またあの好きな笑顔を見られて良かったのだった。

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