「後半」
その予想は的中した。「前半」の動画から遅れること一時間、「後半」の動画も世に公開される。
この「後半」は、大きく二つのパートに分かれていた。
まずは、贋作が完成するまでだ。やはり、ところどころ省略して、重要な部分を見せないようにしている。贋作づくりの専門技術については、絶妙に隠していた。この動画、贋作づくりの技術を大勢に拡散する、そんな目的ではないらしい。
で、絵が完成する。
その出来栄えは、すさまじいものだった。
見た目だけなら、真贋の鑑定は非常に困難だろう。そう専門家が思わずにはいられないほどの、出来栄えだったのである。
これだけでも問題なのに、この動画の続きが、さらに問題を大きくしていた。
贋作をつくっていた倉庫から、覆面男たちが絵を持って外に出たのだ。
そこから先、男たちは覆面を脱いだらしい。代わりに、顔にモザイクがかかるようになった。
どこかへ向かう男たち。
倉庫の外にある風景は田舎だったが、そのあと自転車、バス、鉄道と、次々と乗り換えていく。
やがて車窓の風景が都会になった。さらに地下鉄へと乗り換えて・・・・・・。
映像は飛び飛びだったが、この時点でピンときた者もいた。
男たちが運んでいる贋作絵画、それの本物がある美術館に向かっているような・・・・・・。
そこで動画が、いきなり終わる。今回のは二分半しかなかった。
映像を見ていた者たちの一部が、次のことを考える。あの男たちは美術館にたどり着いたのだろうか。
もしそうだとしたら、あの贋作をどうしたのか? まさか、本物とすり替えた?
そんな疑念を抱いた者たちの一人が、美術館に通報した。あの絵は人類の宝だ。もしものことを考えれば、用心しすぎることはない。
美術館はまだ開館前だったが、急いで確認に動く。館内に何か異常はないか。
それから三〇分後、テレビで緊急ニュースが流れた。
衝撃の映像に、人々は釘付けになる。
美術館の一室に、問題の絵が二枚あったのだ。一枚だけのはずなのに、二枚が並んで飾られている。
こんなことはあり得ない! 片方は間違いなく贋作だ!
すぐに二つの絵の鑑定が始まった。