真っ白な世界
この作品はフィクションであり実際の事象や人物、団体名等とは全て無関係です。
目の前に広がる、真っ白な世界。まるで天国のような現実味の無い世界に私はうっとりとした気持ちになる。きっと、私は今夢を見ているんだ。
「さあ、おいで」
ふわりと柔らかな声が耳元を掠めた。私はその声に導かれるように白い大理石の上をゆっくりと歩いていく。
その先で待っていたのは、私がこの世で最も愛する人だった。私は差し出された掌の上にそっと自身の手を乗せる。
ずっと待ち望んでいたこの瞬間。私は高鳴る鼓動を確かに感じながらそっと目を閉じる。
初めて出会ったあの日から何か運命のようなものを感じていた。あの時の彼はどこか孤独でとても寂しげに見えた。
ただ、あなたの側にいたい――。そんな想いが一瞬私の頭の中を駆け巡った。今思えばそれが一目惚れだったのかもしれない。
あなたが私の通う小学校の転入生である事や私のお家の隣である事とか、こんなにも偶然が重なるのかと思うほど驚く事ばかりだった。
あれから十二年。私達は遂に結婚する。たくさん喧嘩もしたけれど、それ以上にたくさん笑い合った。これからもそんな風に二人で一緒に歩んでいくのだろう。
「君の優しさに僕は何度も救われた。これからもずっと側にいてほしい」
ふと、彼が耳元で小さく囁いた。その声に驚いた私がとっさに目を開けると、そこには真剣な表情を浮かべた彼の姿があった。
「どうか僕と結婚して下さい」
真っ直ぐに向けられたその熱い眼差しに私はただ黙って頷く。
この先に何があるのかなんてわからない。それでも、私はずっと彼の側にいたいから――。
「……はい、よろしくお願いします」
そう言って、私達は誓いのキスをした。