32話 パーティーメンバーを、増やす提案をしてみました
「と、いうわけで、シャロを俺たちのパーティーで預かろうと思うんだけど」
「・・・・・・わけを聞こうじゃないの」
ずい、と歩み寄りながら、リンネが言う。
彼女の目がやけに冷たく感じられた。
「ほら、彼女あそこで働いてた、ってだけじゃない?それで拘束されちゃうのも、かわいそうかな、って」
リンネは冷めた目をそのままに、続けて、とひらひら手を振った。
「なにもすぐにパーティーに加えよう、ってわけじゃないんだ。とりあえずはお試し期間ってことで、ギルドで拘束するかわりに、うちのパーティーで見張る、みたいなかんじでさ、どうかな?」
リンネはまだ無言のまま、軽く目をつぶって人差し指を軽くあげた。
「なに?」
「いいたいことは、わかりました。私は、ね。でも、こういうことはパーティ全員ではからないといけないわよね。」
そう思わない?と、彼女は斜め後ろに振り向いた。
「タロちゃん?あなたはどう思う?」
そもそも、この部屋はタロのためにあつらえた部屋である。
俺たちはともかく、オーウェンやギルド員たちに押しかけられて、タロは端の方で手持ち無沙汰にしているようだった。
それが急に呼びかけられて、タロはとことこ前にでてきて、リンネの脇に腰をおろす。
「聞いてたわよね?タロちゃん。タロちゃんの意見がききたいわ?」
タロはリンネをちらりとみて、それからシャロの方を見る。
見られて、シャロはびくりと体を震わせた。
タロはしばらくそうしてから、やがてぷい、と顔をそむけるようにした。
「タロちゃんは反対に一票、と。さあ、どうしましょうねえ」
リンネはにこにこしながら、俺の方を見た。
「タロやリンネには悪いけど、もう決めたことだから」
俺が言うと、リンネが、ついでタロが驚いたような顔をする。
特にリンネは、俺が自分の意思をおし通したのにかなりびっくりしたようだ。
「ちょっと、ロッカさん?わたしは別にギルドにいってもいいと思ってるんですよ?あんまりわたしのこと、かまわないでください」
横からシャロがそう言った。
俺はそれすらもひとまずおいておいて、オーウェンに向かう。
「もともと、シャロはうちのパーティーに加入を願い出ていたんです。だから、彼女はうちのパーティーの預かりってことで、いいですよね?」
「ふむ」
オーウェンはいつもの、あごひげをなでる癖をみせる。
「なにか事情がありそうじゃの」
一瞬、彼の視線が鋭くなった。
次の間にはいつものオーウェンに戻りつ、笑みを浮かべている。
「まあ、重要なことは聞けたきもするし、の。こちらがなにかあたらしく質問したいときには、いつでも応じてくれる、という条件でなら、ありじゃ。」
「シャロ、いい?」
「わたしはなにかいえる立場じゃないです。もう、まかせますよ」
「もちろん、なにかあったときの責任はロッカ君がとるんじゃぞ?」
いいかね?というオーウェンに俺は大きくうなずいた。
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「説明、してくれるんでしょうね。たらしこまれた、ってわけではないみたいだけど」
人聞きが悪いですね、という顔をしたシャロを完全に無視して、リンネが俺につめよった。
パーティー内での話し合いを後々報告することを条件に、オーウェンをはじめとしたギルド員はひきあげている。
いまこの部屋には、俺とタロ、リンネにシャロと、パーティーメンバーしか残っていない。
「シャロがかわいそうだ、っていうのはほんとう。それが1番の理由だよ」
俺がそういうと、シャロはふくざつな表情をして下を向いた。
「それとね、これはギルドにはないしょなんだけど、」
詰め寄ったまま、さらになにかを言おうとしたリンネに、俺は続ける。
「アドルフが、いたんだ」
聞いたリンネは、ふらつくように2、3歩うしろに下がってから、しばらくの間、絶句する。
「だから、俺たちだけでシャロの話を聞いた方がいいかな?っていうのもあって」
「そう、そうなんだ。それ、ほんとうに?」
「ほんとう。この傷も、アドルフにやられた」
俺は前をはだけて傷を見せる。
応急処置に加えて、リンネが全力で回復魔法をかけてくれたおかげで、すっかり傷は塞がっている。
それでもしっかりとあとはのこって、赤くミミズ腫れのようになっていた。
「ええ、あ、まあそうね。傷口をみても、ちょっとわからないわ」
なぜか真っ赤になりながら、リンネは急におとなしくなった。
そのまま、近くにあった椅子にこしかける。
「アドルフ、アドルフさんですか?あの、有名な勇者の」
「やっぱり、知ってた?彼は俺の、俺たちの元パーティーリーダーだったんだよ」
そうなんですね、と言ってから、シャロは下を向いて考えるふうにする。
しばらくしてから、思い切ったように話し始めた。
「あの店に来てたのは知りませんでした。でも・・・・・・」
彼女はちらちらと俺の方を見て、そうして続ける。
「わたしが、その、ロッカさんをですね、誘惑しようとした、その参考にした女性がいるんですが」
リンネが上目でシャロを睨む。今日の彼女はいつにもまして表情豊かだ。
「そのひと、エヴァさんが相手にしていたのが、たしか勇者アドルフさんでした」
「なるほどね」
とリンネが頭をかかえながら言った。
「あのバカ、それで・・・・・・」
おさななじみとして、なにか思うところがあったのだろう。
「わたし、まだよくわかっていないんですけど」
シャロが手を挙げて言った。
「あのひとたち、なにか悪いことをしようとしてたんですか?その、男の人をだます他に、ですけど」
「俺も、聞いた話だよ?オーウェンさんに」
前置きして、俺は続けた。
「もともと、勇者堕とし、っていって、だますほうを専門にしてたのはその通り。それでそこからどうつながるかはわからないんだけど」
話に飽きたのか、床に体を横たえて眠そうにしていたタロの耳がぴくり、と動いた。
「王政打破。武力による革命が、彼らの最大目的、なんだって」




