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神様に選ばれて異世界に来たようです。

 異世界と言われて素直に「はい、異世界ですね納得しました」なんて、言えないし言いたくない。だけど、じゃあさっきの動物さんと会話が成立していたのはどう説明するのかと聞かれても、答えられない。

 異世界だから動物も話せると説明されたら、納得出来なくもないけど。


「でも、どうして」


 ここが本当に異世界だとして、なんで私がここに来たの?

 偶然私。それとも理由があるの?

 分からないことだらけで、なんか気持ち悪い。


「君をここに呼んだ理由が知りたいかな」

「それは、まあ」


 そう聞かれたら頷くよね。

 だって、理由があるなら知りたいに決まってる。


「君を選んだのは僕の気まぐれ。条件にあう人間を観察していた時、君が気になったから」

「条件、それってどんな条件なんですか」

「何だと思う?」


 にこにこと人当たりの良さそうな笑顔を浮かべているこの人、神様のイシュルさん、……様、取り敢えず様かな。イシュル様はかなりの美形だ。金髪に青い瞳、痩せているけど華奢じゃなく、白い肌は私よりよっぽど手入れが行き届いている様に見える。

 そんな人が目の前でニコニコ笑ってたら、安心するどころか普通なら身構えちゃう筈なのに、今の私は何故か落ち着いてしまっている。これって、イシュル様が神様なせいなのかな。


「女性、若い、体が丈夫、後は」


 ぼんやりとイシュル様の顔を眺めていて、慌てて考え始める。

 異世界に連れてこられた理由。

 異世界って、小説とか漫画のイメージはファンタジーな冒険世界。イメージに合ってる世界ならそれに必要なのって色んな意味で体力?


「後は?」

「どこでも生きていけそう」

「そうだねえ。近いかな」


 イシュル様は何だか楽しそうに笑ってる。

 これじゃ、当たってるのか外れているのか分からないけど、近いっていう事は正解じゃないか、他にも答えがあるって事なのかな?


「近いというのは、他にも条件があるという事ですか?」

「根性があり、適応力もあり、魔力の適正もあり、身体能力が高い。そして、あの世界に未練が残るような人間関係が無い。そして逃げたいと願っていた」


 言われて納得した。色々言われた中で、最後の2つが落ちてくる前までの私の気持ちそのものだったからだ。


「地球で神とよばれる存在は沢山いるけど、この世界の神は僕1柱だけ、住人達の認識とは少し差異がある。人々に神と呼ばれているものはいる。だけど実際は違う。あいつらは、僕の配下なんだ。ここまでは理解したかな」

「はい」

「僕は地球の神に比べたらかなり若い部類に入る。僕が生まれてから、いくつかの世界を作ったけれど。一番初めに作ったこの世界には、思い入れがあってね。他の世界には殆ど介入しないのだけど、この世界は時々手を入れているんだ」


 世界をいくつも作るって、なんだかゲームみたい。

 ファンタジーなゲーム。

 私はゲームなんてしたことないけれど、動画サイトでゲーム実況を見るのは結構好きだった。


「今まで地球から人材を借りたのは三回。そのお礼に向こうの神の頼みを聞いたのも、君で三回目。これで貸し借りは無し」

「向こうの神様の頼み? 条件にあったから連れてきたんじゃないんですか?」

「そう、条件をつけて選ばせて貰った。神様の頼みが何だったかは内緒だけどね」


 綺麗なウィンクをして、イシュル様が笑う。

 ウィンクなんて、テレビや映画以外で本物見たの始めてだ。イシュル様みたいな美形のウィンクは、なんだか破壊力がありすぎてドキドキする。


「君を無理矢理連れてきたけれど、帰りたいなら元の世界に戻してあげる。未練があるのは良くないからね」


 戻すと聞いて慌てた。

 戻されるのは嫌だ。


「私がこの世界に適応出来るならここで生きていきます。元の世界では私は元々居なかったことになるんですよね」

「そうだよ良く覚えてるね。頭の良い子は好きだよ」


 イシュル様は優しそうな笑顔を浮かべながら、私の頭をポンポンと撫でる。

 こんなこと誰にもしてもらったことがないから、戸惑ってしまう。


「あ、あのっ」

「何?」

「あの、ええと。そうだ、質問してもいいですか」


 戸惑って、なんだか恥ずかしくなって、何か話さなきゃと焦って考えた。

 質問しなきゃ、時間は有限。無駄にしちゃいけない。


「うんいいよ。何が知りたい?」

「私が異世界から来たというのは絶対に内緒にしないといけないことですか。その、もしばれたら元の世界に戻らなきゃいけないとか」

「それはないよ。一度君の存在を消してしまったら元に戻すことは出来なくなる。後々戻りたいと泣かれても戻してあげられない。だから、戻るかここで生きていくかを、申し訳ないけど今すぐに決めて欲しいんだ。猶予をあげられなくてごめんね」

「戻りたいとは思ってないので、それはいいです。むしろ感謝してます」


 この世界で生きていけるのか分からないけれど、向こうに居るより良い。情報も何もないのに何故かそう思う。

 感謝は言い過ぎかもしれないけど、承諾なしにこの世界に連れてこられた事に対しての怒りも悲しみもない。


「なら良かった。未練は無さそうだと判断したから引っ張ってきたけど、そう言って貰えると助かるよ」


 神様と話すなんて最初で最後の事だろうけど、妙に人間臭い方なんだなぁと思ったりするのは失礼かな。


「君の質問に答えていなかったね。異世界から来た事は基本的には話さない方がいい。話して信じるとも思えないけれどね。でも、君が誰かと親しくなって、素性を隠したくない、知っていて欲しいと思ったら話してもいいよ。」

「素性を知っていて欲しい」


 そんな相手出来るだろうか、今まで誰からも必要とされたことがなかったし、親しい話を出来るトモダチもいなかったのに。


「そうだよ。例えば恋人とか」

「そ、そんなの」


 友達よりもハードルが高い。恋人なんて。


「無理だと思う?」

「無理だと思いますが、イシュル様は私の事をどこまでご存知なんでしょうか」


 元の世界に未練がないと知っているのだから、全部分かっているのかな。それでも親しい人が出来るって、イシュル様は思っているんだろうか。

 でも、親しい人が出来なくても元の世界にいるよりはずっと良い。私はそう思っていた。

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