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存滅の柱   作者: 茶谷 創懐(くらふと)
最終話(第三話) 「存滅の柱」
6/9

屋内デート

飛と幻が結ばれたこの瞬間も、宇宙空間をCMEが泳いでいた。

地球目掛けて。

CMEそれは、巨大太陽フレア発生後に宇宙に放たれる。

三部構造から成っており、外側はループ・シェル構造をしていて殻のようになっており

その内側には太陽と同様、プロミネンスが起きている。磁気構造が螺旋状なのだ。

これによって惑星間空間撹乱を引き起こして、宇宙空間をかき乱すのだ。

遂にCMEが金星を通り過ぎる。

金星は地球に類似しているところがあるが、空は二酸化炭素の分厚い雲に覆われていて

蒸し焼き状態である。

まさに地球温暖化の終点なのである。


CME(コロナ質量放出)。

これが地球を狙撃した暁には、いかなることが待ち受けているのだろうか。



午後六時、飛は待ち合わせ場所である新光樹ショッピングセンターへ

一時間も早めに向かった。

街路樹の下で長い美脚を組み、スマホをいじって幻の到着を待った。

一分がとても長く感じる。

飛はインディゴブルーのシャツの上に

シルキーホワイトのジャケットを羽織って初デートに臨んだ。

熱帯夜の猛暑を少しでも和らげるために、涼しいコーディネートを選んだ。

スマホの時刻を見ると、六時半と表示されていた。

それから、頻繁にスマホの電源を点けたり、消したりして時刻を毎分確認した。

目が疲れて、遠くのほうに視線を移した。

街並みのビスタ景観の中に彼女の気配を察知し、目を凝らす。

「あ、幻だ」

でも人の視線が気になって、手を振る勇気がない。

幻が近づいてきたところで声を掛けた。

「私服、可愛いじゃん」

幻はフェアリーピンクのワンピースを着用していた。

ちいさなからだが、すっぽり埋もれてしまっているところが、いとけない。

飛の脳内で赤ちゃんペンギンと幻が一致した。

「じゃ、行こうか」

と幻は言って、飛を先導した。

先導する幻に続いて飛は新光樹ショッピングセンターに入店した。

エントランスの床はターコイズブルーの上に白いグリッドが引かれているデザインで、近未来感を演出していた。

どうして、新光樹だけ異様に科学技術が発展しているのだろう。

この大都会だけ、時が急速に進んでいるとしか考えられない。


眼前には三基のエレベーターが隙間なく並んでいた。

白い半透明な直方体のボックスのようだ。

幻が振り向き、笑顔を湛えて言った。

「これに乗って、周るの」

飛の心に何かが刺さった。一目惚れした時と同じ感情だった。

シンプルなデザインのエレベーターの前に立つと自動ドアが機械音を立てて開いた。

中は普通のエレベーターとなんら変わらなく、幻が三階を押した。

四方八方が透けていて、体躯が宙に浮いているような感覚がした。

きっと魂が抜けて、天に召されるときはこんな感じなのだろうなと飛は空想した。

幻は時折、飛の様子を窺った。飛はその度に照れてそっぽを向いた。

新型エレベーターは水平を保ちつつ、斜め上に進んでいく。

愉快な音楽がうっすら流れ、それは次第に大きくなり、二人を現実逃避させた。

ある程度上昇したところで前進移動にシフトした。

一つ一つの動作に感嘆の声をあげた飛を、幻は面白がった。


「3」と書かれたガラス床の前で扉が開いた。

回廊の中心部をエレベーターが斜め上へと移動し、回廊の直径が階を上がる度に大きくなっていた。

斬新なデザインの建築物だと飛は感心した。


三階のメインは百円ショップのようだが、黒とゴールドで高級感が出ていた。

吊り下げられた看板には「千円ショップ」と書かれていた。

買い物カゴを二つ取りながら、幻は言った。

「ここで買い物しよ。ちょっとリッチだけどね」

「ふえー、こんなのあるんだ」

口が卵形に開いていたらしく、幻は思わず失笑した。

幻が店頭の「手持ち型扇風機」を買い物カゴに即決入れた。

僕もそれが欲しかった。でも先取りされた。

「お揃いで、僕も買っちゃおう」

幻はキュンとしたらしく頬と耳が紅くなった。

飛君とお揃いなのが嬉しいようだった。

手持ち型扇風機をすぐに使いたかったが、電池を入れなければならず、それは叶わなかった。

それだけ買うと二人は千円ショップを後にした。

二人ははたから見ると、兄妹のように仲良く買い物しているように見えた。


再びあの幽体離脱エレベーターに搭乗する。

「今度は屋上でイベントがあるの」

幻はそう言い、屋上のボタンを押した。

エレベーターはグイーンと音を立てながら、垂直に高速で上昇した。


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