物語のあらすじ
冴えない女、桜木キリコ十八歳。
平凡の鑑のような彼女の願いは、ただその存在を認めてもらい愛情を注がれることだった。
大家族の長女である彼女は、自分の存在に価値があるのかどうか自信を失いかけていた。
そんな彼女は、誕生日の日にあっけなく人生に幕を下ろした。
キリコの魂は次元の狭間を流れ、やがて地球とは別の異世界で花の種として生を受ける。
ここは死者の魂が花の種となって蘇る世界であった。特に異世界から流れてきた魂の種は高値で取引される。
この種を植えると、それはいずれ“花妖精”と呼ばれる霊となり、育てた人次第で、花妖精の能力や知能度が変わるのだ。
そこで、冴えなかったはずのキリコは世界で最も価値のある種へと生まれ変わった。
店先に並んだキリコの種。
それを購入したのは、花育ての名手と言われる貴族の男であった。
誰もがうらやむ美貌、誰もがうらやむ財力、名誉、地位、そして完璧なまでの優しさを備えた性格。
男には全てがそろっていたが、一番大事なものが欠けていた。
そのたった一つが欠けているせいで、男は生きているのに死んでいる。
しかし、その闇に気づく者は誰もいない。
男は、花を殺すために育てていた。
もうずっと前から、そうするつもりだったのだ。誰でも良かった。ただ、運の悪いことにキリコが選ばれただけ。
自分に注がれる愛情に期待するキリコ。
殺すために育てている種へとひたすらに愛情を注ぐ男。
心の闇が、じわりじわりと広がっていく――……
【! Attention1 !】
本作品はその性質上、冒頭部分に以下の表現が出てきます。
≪主公への試練が多め、流血描写、ヒーローによるヒロイン騙し表現≫
【! Attention2 !】
本作品はその性質上、“匂い”“臭い”“香り”の3種類を使い分けています。
匂 い:プラスの思い
臭 い:マイナスの思い
香 り:どちらともつかない思い、はっきりさせたくない思い