第一章_05
「そういえば依頼の内容ってなんだったんだ?」
ぽつぽつと大きな家が建っているの広い通りを雑談しながら歩いていると、不意にカケルが質問する。
「丘の上の果樹園を荒らす魔獣の討伐です」
「なんと! あそこの果樹園おいしいのに、荒らすなんて許せない!」
ミユが両手を上げて怒りを露わにしている。
「魔獣の予想って出ているのか?」
「はい、学校側の予想によるとシカ型の魔獣ではないかと」
「シカかぁ。かわいらしいよね、あのつぶらな瞳が!」
今度は両腕で自分の身体を抱きしめながら左右に揺れる。
「シカ型ね。魔法を使ってくるかもな」
「俺もそう思います」
「ヒロトくんの能力が活かされる相手だね!」
そして笑いながらヒロトの背中をバンバンと叩く。
「……ミユちゃんっていつもこうなの?」
カケルは声を小さくしてヒロトに話しかける。
「……はい、俺の知っている限りではいつもこんな感じです」
ヒロトもつられて声を小さくして答える。
「へっくし! うー、誰かな、わたしの噂をしているのはー」
ミユは鼻を人差し指でこすりながら、むむむ、と唸る。噂をしているのは近くにいる二人であるということには全く気付いていないようだった。