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花蜜  作者: 悠里
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花開くミセバヤ

 わたしと由紀くんが出会ったのは、約数ヶ月前に遡る。

 桜が舞い散る入学式。わたしはこの私立海苑高等学校の一年生になった。憧れの制服に袖を通し、これからどんな出会いが待っているのか、高鳴る胸を抑えながら校舎をうろちょろと歩き回っていた時だった。


 目の前に、今日という日に相応しくない服装の男子生徒が立っていた。

 身長が高く、明るい金髪。ブレザーではなく灰色のセーターをだらりと着こなして、この廊下から見える桜の木を見ている…と思われる。桜の木かどうかはわたしの想像。そばの窓から見えたから、予想。

 

 興味本位で、少しだけ近づく。先輩かもしれない。


 (…あ、この人ピアスもつけてる)


 髪の毛の隙間から伺える耳たぶに、黒いピアスを捉えた。でも、校則でそういうのは禁止って書いてあったきがする。もしかして、不良さんかもしれない。

 

 心配の募るわたしに一向に気づく気配のない彼は、窓の外から全く目を離さない。


 (そんなに、綺麗なのかな)


 横顔が、とても綺麗だと思った。そんな憂いを帯びた横顔で彼が何を見ているのか、とても気になった。ゆっくりと窓に近づき、わたしはそろりと窓を開放する。

 瞬間、強い風が廊下へ吹いた。


 「…っわ、」


 突然の風に驚いて閉じた眼を開くと、優しい桃色が空を舞っていた。


 「これ…桜?」

 「あんたも、桜見てるの?」

 「!?」 


 不良さん(仮)に声をかけられてしまった。

 わたしは恐る恐る「そう、です」と答えた。あなたを見ていました、なんて言えるはずがないのだから。


 「綺麗だよな、花って」

 「え?あ、はい。…花が、好きなんですか?」

 「ん、そう」

 「…わたしも好きです、お花」


 意外な答えに驚くも、純粋にお花のことが好きと言っている不良さん(仮)に好感を持つ。やっぱり人は見た目で判断しちゃ駄目だよね。

 ああわたし、この人とお友達になりたい。


 「あ、あの」

 「ん?」

 「お友達に、なりたいです。あなたと!」

 「え…俺と?あんたが?」

 「はい!」


 食い気味に迫る。彼にはこのくらいしないと友達になってもらえない気がする。なんだか、一匹狼という感じするし。


 「ちょっと…わかったからそんなに近づかない」

 「わわ…!」

 「友達、別にいいけど。どうせすぐ話したくもなくなる」

 「そんなことありません!」


 彼ははわたしの返答に苦い顔をした。だけど渋々、諦めたように一つ溜息を吐いた。高校生になって初めて友達が出来たことを純粋に嬉しく思ったわたしは、きっとものすごく幸せな顔をしていただろう。


 それから、わたしと由紀くんは友人となり、由紀くんがわたしと同じ新入生ということを知って、彼のサボり癖を知り、ゆったりとわたしと由紀くんの仲は続いていた。


 そして数ヶ月たった今、彼はわたしの憧れになっていた。




 

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