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花蜜  作者: 悠里
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カモミールは森の中

 学年一の美少女美咲(みさき)かえと、学年一の問題児正木由紀(まさきゆき)は仲が良い。

 それは、この私立海苑(かいえん)高等学校の七不思議の一つといっても良いくらいに謎だった。


 ひとりの女生徒はこう言った。


 「あれじゃない?苗字が似てるから」


 ひとりの男子生徒はこう言った。


 「結局顔だろ、どうせ」


 まず美咲かえは艶美やかな黒髪を長く伸ばし、パッチリとした二重まぶたで小さい鼻、世に言う美少女そのものだった。そして正木由紀は茶髪と金髪の中間の髪色に黒いメッシュの入った髪の毛を男子としては長めに伸ばし、目鼻立ちの整った美青年だった。つまり、二人は尋常じゃないほどにモテるのだ。

 だが、この二人には決定的な違いがあった。性格である。

 かたや授業にもしっかりと出席し真面目で物腰の柔らかい、天然気質な美少女。かたや遅刻やサボタージュは日常茶飯事な校内の問題児。例え苗字が似てようが顔が良かろうが接点なんて皆無な二人である。

 


 「…っくしゅ」

 「…なに、美咲風邪?」

 「どうでしょう。夏風邪でしょうか…?」

 「………いや、夏風邪じゃないだろ」

 「え、どうしてですか?」

 「だって…違うだろ」

 「だからどうしてですか」



 二人はお昼休みの屋上にいた。美咲はくしゃみをして、正木がそれを心配する。心配、なのだろうか。

 

 「ねえねえ田中くん。夏風邪ではないってどういうことなのかしら」

 「美咲は馬鹿じゃないだろってことじゃないか?というか、ここからあそこの会話が聞こえるとかお前怖いな」

 「あら、田中くんってばひどい」


 そんな二人を覗き見る生徒が二人。地獄耳の女のほうが一河(いちかわ)やよい。それに応える男が田中大翔(ひろと)。両方共この海苑高校の新聞部の一年である。



 「取り敢えず、あの二人のスクープ掴んで先輩たちをギャフンと言わせましょう」

 「…なあ、これただのストーカーじゃないか」

 「ふふ、今更そんなことは言わない約束ですよ」


 パチリとウインクをかました一河の語尾にはハートマークが見える。田中はそれに渋々付き合うというのがこの新聞部二人のお約束であった。

 日陰に涼しい夏の風が吹いて、一河のツインテールが揺れた。




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