第6話 エルフリード
「レイア、遊ぼう!」
「エル、おはよう。今日は元気そうね。」
レイアが5歳になったばかり頃、エルフリードという名の新しい友達が出来た。
それまでもレーゲンスブルクの村の子供たちとは遊んでいたが、エルフリードは貴族の子供だった。
彼はレーゲンスブルクの隣町であるフェルゼンシュタイン公爵領のオイレンベルクから遊びに来ており、公爵家の次男だったのだ。
オイレンベルクには公爵家の別荘があった。
豊かな自然に恵まれ空気の良いこの土地に、病気がちな公爵夫人が静養に訪れていたのだ。
そして、静養には喘息持ちだった次男のエルフリードも連れて来ていた。
レーゲンスブルクとオイレンベルクは雑木林が境界線になっていたが、子供でも通り抜けられるような小さな林だった。
山菜取りに来ていたレイアが、道に迷って雑木林に入り込んでしまった彼を見つけたことが2人の出会いだった。
出会ったころのエルフリードは病弱で身体も小さく、同じ年だったもののレイアは弟が出来た気分になり、かいがいしくお世話をしてあげたり、遊んでやったりした。
エルフリードはレイアと遊びたいがために、嫌がっていた薬をきちんと飲むようになり、休む時は早く布団に入りしっかりと寝るようになった。
そしてレイアや村の子供たちと外を駆け回っているうちに、すっかり身体が丈夫になっていったのだ。
エルフリードが12歳になり王都にある王立学院に入学するまでは、身分の差も関係なく村の子供たちも交えてみんなで遊んでいた。
しかし、病気がちだったエルフリードの母が亡くなったこともあり、学院に通い始めてからは長期休暇の時にしかレーゲンスブルクを訪れることが出来なくなった。
別荘に滞在できる期間は限られている。
そのため、エルフリードはレイアの屋敷に入り浸り、家の雑用を手伝ったりしながらなるべくレイアと2人で過ごせるように努めた。
そして学院に通い始めてから、小さい時には気が付かなかったレイアの家の異常性も見えるようになってきた。
救国の乙女の血筋を受け継ぐ伝統ある侯爵家の長女であるレイアをあんな田舎に閉じ込めておいて、対外的には”長女は身体が弱く王都で暮らせないため、田舎で療養させている”と言っているのだ。
身体が弱い・・・?
むしろ、出会った頃などエルフリードよりも丈夫なくらいだった。
以前はレイアと一緒に王立学院に通いたいと思ったこともあった。
しかし、儚げでガラス細工の様に繊細で美しい容姿をもつレイアが学院に入学すると周囲の男がほっておかないだろう。
特に同級生である第2王子や2つ上の第1王子の目に留まり、妃や側妃にと望まれたらエルフリードにはどうすることも出来なくなる。
レイアの実家は侯爵なので、身分的に王子妃に選ばれることは問題がない。
エルフリードは違和感を感じつつも、レイアを他の者に見せたくないという気持ちが働いて、その違和感に蓋をしてきたのだ。




