第38話 国王との謁見
文官に案内され着いたのは、レイアの身長の2倍はありそうな大きさの荘厳な扉の前だった。
濃い茶色の木で造られた扉は、表に精緻な模様が刻まれ厳めしい雰囲気を醸し出していた。
ゴクッ
レイアはつばを飲み込んだ。
そして扉は開かれた。
謁見会場は大きなホールになっていた。
ホールの奥は数段階段状に高くなっていて、一番上の段の中央に豪奢な椅子が置かれ40代くらいの男性が座っていた。
そして男性の両横の椅子には若い青年が2人腰かけていた。
あの中央の方が国王陛下・・・。
文官に促され3人は中へと進んだ。
まず、ヨハンが少し前に出た。
エルフリードが後に続き、左腕を差し出してレイアを見た。
ヨハンを先頭に、エルフリードにエスコートされ王座の方へと歩を進めた。
聖女の正装は薄いベールもセットになっており、視界が遮られるおかげで緊張も少し和らぐ気がする。
階段の手前には左右両横に年配の男性が十数人並んでいた。
高位貴族や役職についている大臣などだろう。
段の手前で跪いたヨハンとエルフリードに倣い、レイアもスカートを摘み膝を折った。
「クルム侯爵令嬢、フェルゼンシュタイン公爵令息およびヨハン神父が謁見に参りました。」
文官の紹介を受け、王が頷いた。
「そなた達は尋問に呼んだわけではない。畏まらないで顔を上げてくれ。」
国王は思ったよりも気さくな方なのだろうか。
ヨハンやエルフリードに倣いレイアも姿勢を正し、顔を上げた。
「クルム侯爵令嬢。顔が見えないと話がしにくい。ベールも外してくれ。」
国王に促され、レイアは緊張しながらベールを外した。
ザワッ
王を含め、その場にいた全ての者が息を飲んだ。
救国の乙女
皆の脳裏に浮かんだのは同じ言葉だった。
サラサラとした銀糸の髪に深青の瞳
聖女の正装に身をつつんだ儚げで繊細なその姿は、大神殿の肖像画に残された初代クルム侯爵クリスティーナそのものだった。
「これは驚いた。そなたは父親似なのだな。救国の乙女にもよく似ている。大神官から侯爵家の跡継ぎとして申し分ない神聖力を有しているとの報告を受けているが、そなたは侯爵家を継ぎたいと思っているのか?」
いきなり国王が尋ねてきた。
てっきり決定事項を伝えられると思っていたレイアにとって、継ぎたいかどうか尋ねられることは予想外だった。
侯爵家に思い入れなどあるはずもなく、一瞬答えに窮してしまった。
レイアの心情を察したエルフリードが手をあげ、発言の許可を請うた。
「発言を許す。」
王の許可を得て、エルフリードが発言した。
「許可をありがとうございます。彼女はクルム侯爵家の長女ですが、特殊な事情でずっと田舎で生活をしてきたため貴族社会の常識に疎いところがあることは否めません。私とレイアは幼馴染で婚約を交わしております。彼女が女侯爵に就任することになれば、私が彼女を支えるつもりでございます。」
その発言を国王も頷きながら聞いていた。
「なるほど。彼女の足りないところは夫となるエルフリードが補うということか。ふむ、それなら・・・」
国王が言葉を続けようとしたのを、右隣に座っていた青年が遮った。
「父上。少しよろしいでしょうか?」
「なんだ?フェリクス。」
フェリクス第一王子・・・あの方が王太子殿下なんだ。
レイアは青年の方に視線を向けた。
金髪碧眼で整った容姿の青年だった。
「彼女を私の妃に迎えるのはどうでしょうか?」
「なっ!」
声をあげたのはエルフリードだけだったが、その場にいた全ての者の視線がフェリクスに集まった。




