第32話 アルベルト
アルベルトは表情を変えず、ロザリオを掴むとソフィアからそれを取り上げポーンと後ろに投げ捨てた。
「なっ!触ったらただでは済まないって!」
ソフィアの叫びに、アルベルトはクククと笑い声をあげた。
「それはロザリオを銀の娘が持った場合だ。込められた祈りは銀の娘のためのものであって、お前のためのものじゃない。お前が持ってもただのロザリオと変わりない。」
「ひっ!」
近づいてくるアルベルトにソフィアは恐怖に引きつった表情を浮かべた。
アルベルトはそんなソフィアを放置し、祭壇近くにいたルイスの方へ身体を向けた。
「そうだ、ルイス。お前は代償を決めるのに15年もの時間をかけ私を待たせたあげくに、別の娘で誤魔化そうとしたな。その分の代償も必要だと思わないか?」
穏やかな口調で、とんでもないことを告げる悪魔に、誰も何もいう事は出来なかった。
「そうだな・・・、その金の少年も貰おうか。」
アルベルトはルイスの横に佇んでいたノアを指さした。
指差されたノアは身体をビクっと震わせ、真っ青になった。
アルベルトの手から放たれた茨がノアの身体を拘束した。
「いやだ!やめろ!」
ノアが絶叫した。
「お願いだ。止めてくれ!ノアは大事な跡継ぎだ。クルム家が終わってしまう!」
悲愴な表情で訴えるルイスにアルベルトはおかしそうに笑みを浮かべた。
「大丈夫だ。喜べ。私は優しい悪魔だからな。一番有能な後継ぎは残しておいてやる。その銀の娘がいればクルム家は安泰だろう?」
「そ、そんな・・・。」
聖堂の床に座り込んだルイスは、それ以上何も言うことが出来なかった。
「さあ、ギャラリーもたくさん増えてきたことだ。私もこんな所で滅されるわけにはいかないしそろそろ帰るとするか。」
そう言うと、アルベルトは右手を聖堂の扉に向けた。
バアンッという大きな音とともに扉が開き、その向こうには白い甲冑を着たたくさんの聖騎士の他に、クララとヨハン神父、そしてエルフリードが立っているのが見えた。
「エル、クララ、ヨハン先生・・・。」
レイアは彼らの姿を見つけ、ホッとしたように呟いた。
「レイア!」
エルフリードが名前を呼びながらレイアの方へ駆け出してきた。
後ろからクララも走って来るのが見えた。
「エル・・・」
レイアが彼の名前を呼ぶのと同時にギュウっと抱きしめられた。
「レイア。無事で良かった・・・。心配した。」
少し遅れてクララもレイアのところにたどり着いた。
「お嬢様・・・。」
クララは目に涙を浮かべていた。
一方、ルイスは聖騎士の姿を見て驚愕の表情を浮かべた。
「聖騎士!なぜ・・・」




