第3話 悪魔との出会い
次の瞬間、周りから男たちの姿が消え明かりのない真っ暗な空間が広がった。
そして、目の前には男たちの代わりに恐ろしい程の美貌を誇る悪魔が立っていた。
「俺を召喚したのはお前か?祓魔師のくせに悪魔を呼び出すとは見上げた奴だな。この悪魔アルベルトに何を求める?」
ルイスは悪魔召喚が成功したことに驚きつつ、彼の言葉にハッとした。
見たところその圧倒的な美貌や身から放つ凄まじいオーラから、かなり高位の悪魔だと思われた。
悪魔はその美しさが力に直結するのだ。
しかも、名まで名乗られた。
こんな悪魔を呼び出してしまったからには何もせずに帰ってもらうわけにはいかないだろう。
ルイスは一瞬ためらった後、腹をくくった。
「目の前の借金取りの始末と、借金を全て失くして欲しい。」
アルベルトと名乗った悪魔はニヤッと笑った。
「なんだ。そんなつまらない願いか。いいだろう、叶えてやろう。代償は何を貰えるのだ?」
悪魔との取り引きには身を切るような代償が求められる。
「私の命とかでなければ・・・。」
小さな声でルイスがつぶやいた。
そんなルイスの顔をしげしげと眺めた後、アルベルトが提案してきた。
「では、お前の最愛の娘を貰おう。」
「む、むすめ?そんな・・・。」
自分に笑いかける可愛いレイアの顔を思い浮かべ、ルイスは狼狽えた。
アルベルトは意地が悪そうにほほ笑んだ。
「お前の妻でもいいぞ。美しい女だ。」
エマは自慢の妻だ。
祓魔の腕も勉強も何も敵わなかった兄に唯一妻だけは自分の方が勝っていると思っていた。
「わ、分かった。娘でいい。」
もちろん娘は可愛いが、エマとどちらかを選べと言われると、それはエマ一択だ。
子供はまたそのうち出来るだろう。
「契約成立だ。娘はまた気が向いた時にもらいに来る。それまで大切に育てるんだぞ。」
かき消すようにアルベルトの姿が見えなくなった。
その直後
ドンッ
ガラガラ
ドカーン
ザーザーと降る雨音にかぶるように、もの凄い轟音が鳴り響いた。
「うわあぁぁ」
鉄製の長剣を持つ目の前の男たちに雷が直撃した。
ルイスはもの凄い音にビクっと身を縮め目をつむった。
そして次に目を開けた時には、そこに焼け焦げた5人の死体が転がっていた。
悪魔の力の恐ろしさを目の当たりにし、ルイスはカタカタ震え出した。
「ここを早く去らないと・・・。」
ヨロヨロとどうにか足を動かし、その場を立ち去った。
大雨が降り雷が鳴る中、外を歩く者は他に誰もいなかった。
男たちは翌朝、町の警備隊に発見され落雷による事故死として処理されることとなる。
一方、家に帰り着いたルイスはずぶ濡れのまま、レイアを抱くエマの元に向かった。
「まあ、ルイス。ずぶぬれでどうしたの?顔が青いわ。風邪を引くから早く脱がなきゃ。」
エマがレイアをベビーベッドに降ろし、タオルを持ってルイスの方に近づいてきた。
妻に優しく頭を拭かれ、ルイスはやっと現実の世界に戻ってきた気がした。
「ああ、エマ。私はなんてことを・・・。」
妻に悪魔のことを打ち明け、エマがレイアの方を見て目に涙を浮かべた瞬間。
バンッという音と共に部屋の扉が開いた。
「旦那様、大変です!侯爵様と兄上様ご夫婦が、この大雨で馬車の事故に会い、亡くなられたと警備隊から連絡が・・・。」
執事の無礼を注意しようとしたルイスは、その言葉を聞いて言葉を失った。
「父上と兄上が・・・?」




