第22話 レーゲンスブルクにて
エルフリードは休暇が始まった翌日には王都を発った。
まずは自分の家の領地であるオイレンベルクの館に荷を降ろすと、レイアへのプレゼントを携えレーゲンスブルクに向かった。
雑木林を抜け、レイアの館が見えてきた。
館を見ただけで胸が高鳴るなんて、僕も重症だな・・・。
そんなことを思いながらエルフリードが足を速めようとした時、後ろから声をかけられた。
「エルか?」
振り返るとヨハン神父が後ろから歩いてくるのが見えた。
「ヨハン先生。」
「久しぶりじゃな。そんな急いで、レイアと約束をしているのか?」
慌てている姿をヨハンに見られ、エルフリードは顔を赤らめた。
「いえ・・・。学院の予定が急に変更になったので、予定より早くこっちに来たんです。今は早くレイアを驚かせたいなと思って急いでました。」
「そうか・・・」
ヨハンは少しがっかりした表情になった。
「どうかされたんですか?」
エルフリードは不思議に思い尋ねた。
「ああ。今朝、神殿で会う約束をしていたんじゃがレイアが来なくてな。クララからの連絡もないし、今までこんなことは無かったから心配で様子を見に来たんじゃ。エルと約束があるのなら大丈夫かと思ったんじゃが・・・。」
きっちりしたレイアのことだから、都合が悪くなり行けなくなったならちゃんと連絡をいれるはずだ。
「確かにレイアらしくないですね。どうしたんだろう?」
不安を感じエルフリードは歩みを速めヨハンと一緒にレイアの館へと向かった。
館に着くと、1階の玄関ホールの明かりがついているのを窓から確認できた。
2人は顔を見合わせ、安心したように頷いた。
レイアにしては珍しいが、うっかり約束を忘れていたのだろうと思ったのだ。
しかし、エルフリードが玄関のドアをノックしても反応が無かった。
電気はついているのに、おかしいな・・・。
いつもと違う様子に違和感をおぼえ、ドアノブを回してみた。
するとドアにカギはかかっておらず、扉が開いた。
キイッ
中に入るとクララが玄関ホールの床に倒れていた。
「クララ!大丈夫か?」
エルフリードは慌ててクララに駆け寄り抱き起した。
クララは真っ青な顔をしており、閉じられた目からは涙があふれていた。
長い時間泣いていたのか、瞼もパンパンに腫れていた。
「クララ!レイアはどうした?どこにいるんだ?」
体調の悪そうなクララのためにレイアが医者を呼びに行ってるとしても、こんな状態のクララをロビーの床に放置して出るわけがない。
レイアがこの場にいないことやクララの異様な様子にエルフリードは嫌な胸騒ぎがした。
「エルフリードさま・・・」
うすく目を開け、エルフリードを見たクララは小さな声で彼の名前を呼んだ。
「ああ、エルフリード様。お嬢様を助けて・・・。神よ・・・。」
目は焦点が合っておらず、朦朧とした表情でクララがつぶやいた。
「レイアがどうかしたのか?」
エルフリードが大きな声を出すと、ヨハンが横から彼の肩をつかんだ。
「エル。クララをベッドに運んであげなさい。今、彼女は落ち着いて話が出来る状態じゃない。」
早く状況を聞き出したいという焦る気持ちはあるが、ヨハンの言う通りである。
エルフリードはクララを抱え、2階にある彼女の部屋へ連れて行きベッドに寝かせた。
ヨハンが水を持って来てクララに飲ませ、自身の神聖力をクララに注いだ。
クララの様子が落ち着いてきたところで、ヨハンが尋ねた。
「クララ。何があった?」
その言葉にクララの目から再び涙があふれ、嗚咽を漏らしながらうつむいた。
焦るエルフリードを制しながら、ヨハンは根気強く待った。




