第2話 悪魔との出会い
神聖歴1789年。
ルイスは大雨の中、数人の男たちに追いかけられていた。
「はあ・・はあ・・。全くしつこい奴らだ。」
ルイスは 祓魔を生業とする歴史あるクルム侯爵家の次男だった。
祓魔師としての潜在能力は高かったが、努力が嫌いでその才能を充分に伸ばすことが出来なかった。
そして、いつも出来のいい兄と比べられ少しひねくれた青年へと成長していった。
そんな彼だったが、貴族の子弟が通う王立学院で一人の女性と出会った。
彼女の名はエマといい、当時学院一の美女と言われていた。
その後彼女と結婚することができ、1年半前には可愛い娘レイアも生まれた。
ルイスは心を入れ替え、妻子のため以前より真面目に働くようになっていた。
しかし、仕事でうっかり犯したミスで生じた損害を誤魔化すため、借金取りに金を借りてしまった。
それが始まりで、借金取りの男たちに追い回されるようになったのだ。
ルイスのことを出来が悪いと侮っている父や兄には、自分のミスや借金のことは知られたくなかった。
金は融通してくれるかもしれないが、ルイスの中のプライドが許さなかった。
そうこうしているうちに借金は利息が積み上がり、どうしようもない額まで吊り上がっていったのだ。
今回、業を煮やした借金取りが5人の部下を差し向けてきた。
袋小路に追いつめられ、ルイスは塀に背中を向け借金取りたちを見た。
5人とも剣を持ち、逆らおうものなら一瞬で殺されそうな雰囲気が漂っていた。
まずい・・・どうすればいいんだ?
ルイスが顔を青くしていると、先頭にいた男が口を開いた。
「金なんか、あんたの父親や兄さんに言ったら工面できるだろう?なんなら美人の奥さんに身体を売ってもらってもいいぞ。あれだけ美人だったら客もわんさかつくだろう。すぐに返せるんじゃないか?」
男の言葉にルイスは怒りで顔を真っ赤にした。
「なにを。勝手なこと言いやがって!」
「おいおい。あんた自分の立場がわかってるのか?俺たちは借金を返してもらえれば何でもいいんだよ。奥さんを差し出すのが嫌だったら、あんたも綺麗な顔をしてるし自分で稼いだっていい。なんなら俺が買ってやろうか?」
下卑た表情でニタニタ笑いながら男は剣を振り下ろした。
ルイスのシャツが縦に裂かれ、前がはだけた。
布だけ裂くというような剣の腕はなく、ルイスの胸にも縦に赤く血が滲んだ。
「ああ、すまねえなあ。傷が出来ちまった。」
ルイスは自分の胸を見て、傷からしたたり落ちる血を見つめた。
四方を壁と剣を持つ男たちに囲まれ逃げ場はない。
一か八かだ・・・。
ルイスは目をつむり、胸の傷に手をやった。
手についた自分の血をなめ舌に乗せ、その状態で悪魔召喚の呪文を唱えた。




