第16話 クルム家の秘密
ソフィアは由緒あるクルム侯爵家の次女である。
次女と言っても、長女は身体が弱く幼い頃から田舎で療養しているとかで、一度も顔を合わせたことが無かった。
父と母から姉の話を聞いたことは一度もなく、もしかしたらもう亡くなっている可能性すらあるのではないかと思っていた。
そんなソフィアが姉が生きていると知ったのは、つい先日のことだった。
父のルイスがソフィアとノアを自分の書斎に呼んだのだ。
部屋に入ると母もいた。
「ソフィア。長い話になるから、そこに座りなさい。」
父に促され、ソフィアはすでにソファに座っていたノアの横に腰かけた。
「全員そろったし、話を始めるぞ。1週間後にレイアをこの屋敷に呼び寄せることになった。」
「レイア・・・?」
ソフィアは聞きなれない名前に反応した。
「クルム侯爵家の長女、お前たちの姉だ。赤ん坊のころからレーゲンスブルクで生活している。」
「お姉さまは生きておられたんですの?」
ソフィアの質問にルイスは気まずそうな表情になった。
「生きている。」
「身体が弱いとお聞きしたことはありますが・・・。王都に戻ってこれるようになったんですの?」
ルイスは悩ましそうに眉間にしわを寄せた。
「何から話すべきか・・・。」
ソフィアもノアも父の言葉を待った。
「15,6年前のことだ。私は仕事でミスを犯してしまい、出した損失を補填するために借金を負ってしまったんだ。運が悪く借りたところが質の悪い所で、ある日剣を持った借金取りに追い回され殺されそうになったんだ。」
ソフィアはその内容に驚いて父を見た。
ルイスは苦々しい表情をしていた。
「殺されそうになった瞬間、私はとっさに悪魔を召喚してしまったんだ。」
その言葉にノアが息を飲んだ。
「私は悪魔に借金取りの始末と借金を帳消しにするよう頼み、悪魔はそれを引き受けた。そして、その代償にレイアを欲求されたのだ。」
ノアが叫んだ。
「お姉さまを悪魔に売ったのですか?悪魔との取り引きは異端審問の対象です。なぜ、そんなことを・・・。」
そんなことが神殿にばれれば、クルム侯爵家はおしまいである。
息子になじられ、ルイスも不機嫌そうに言い返した。
「そんなことは分かっている。殺されそうになり、気が動転していたのだ。とっさに召喚の呪文を唱えたら、本当に悪魔が現れた。そして、その悪魔は非常に高位のようだった。断るなんて選択肢は無かった。」
自分のやったことを必死に肯定する父をノアは浅ましく感じた。




