第14話 クルム侯爵邸
そんな退屈な旅が1週間続き、ようやく王都に到着した。
クルム侯爵邸に着いた時には、辺りは既に真っ暗になっていた。
壮大な正門をくぐると、目の前に城のような大きな建物が見えレイアは目を見開いた。
レーゲンスブルクでは見たことの無いような立派な建物だった。
すごい大きさ・・・。
あれが侯爵邸なのね。
感心してその建物を見ていると、馬車は途中から左の側道に入り正面の建物からそれて行った。
不思議に思う間もなく、すぐにこじんまりとした離れの方に到着した。
「お嬢様は、この館に滞在していただきます。しばらくしたら、旦那様たちがこちらにおいでになりますので、この玄関ホールでお待ちいただいてもよろしいですか?」
トーマスが無表情に告げてきた。
丁寧にお願いしているようだが、実のところいつ来るかわからない侯爵が来るまでこの殺風景な場所でずっと待っていろ、という命令である。
この1週間の旅の途中、今と同じように命じられていると感じることが何度もあった。
トーマスはレイアが外部と接触することを極端に嫌がった。
せっかくの旅なので、レイアは途中の町で散策したり、町の人と話したりということがやりたかったのに、いつもトーマスに阻止されたのだ。
「旦那様からお嬢様を無事に王都にお連れするよう厳しく申し付けられています。お嬢様が襲われでもしたら大変ですので町の散策は許可できません。」
「お嬢様はお綺麗ですので、誘拐などにあってはいけませんので外を歩く際はこちらをお使いください。」
そう言ってトーマスは大きなつばのついた帽子と顔を隠すためのベールを渡してきた。
このように何だかんだ理由をつけ、レイアの自由を奪っていったのだ。
常に監視されているようで、息苦しく精神的に疲れる旅だった。
侯爵たちはあちらの本館にいるようなのに、娘の自分がどうしてこの離れの方に通されたのか?
トーマスと出会ってから感じた数々の違和感と疑問について思いを巡らせていたその時。
バタン
扉が開く音がして、数人の男女が離れの中に入って来た。
先頭にいる背の高い40代くらいの男性がクルム侯爵なのだろう。
冷たそうな表情だが、整った容姿で体形もスラっとしている。
銀の髪に深青の瞳で、顔立ちはレイアに似ていた。
2歳半ばでレーゲンスブルクに行ったため、レイアに父の記憶はない。
私って父親似だったのね。
今さらながら、そんな感想が浮かんだ。
「えっと・・・、あの・・・。」
戸惑いながらレイアは先頭の男性を見上げた。
「レイア、よく来た。私がお前の父親のルイスだ。こちらが妻のエマ、妹のソフィアと弟のノアだ。」
ルイスはニコリともせず、淡々と家族の紹介をした。
金髪に緑の目の華やかで美しいエマと、ソフィアはその纏う色も容姿もよく似ていた。艶やかな金髪はくるくると巻かれ、濃い深紅のドレスを着たソフィアは全身から圧倒的な存在感を放っていた。
一方、ノアは金髪に青い目で顔立ちはルイスに似ており、ソフィアに比べ大人しそうな雰囲気の少年だった。




