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悪魔の生贄が救国の乙女になるまで  作者: らな


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第12話 王都からの招集

レイアが自室のある2階へ上がるのを見届けると、トーマスが声をひそめクララにささやいた。

「お嬢様には何も言うなよ。お嬢様に何かあれば、両親と弟たちがどうなるか分かっているだろう?どこに逃げても、もはやあの方は悪魔の手からは逃がれられやしない。優先順位を間違えるな。」

クララは青ざめ、茫然とトーマスを見た。

無表情にそう告げるトーマスこそが悪魔のようだった。


                ※


レイアも年頃の女の子だ。

華やかな王都への憧れはあったし一度は訪れてみたいという思いもあった。

しかし、エルフリードとすれ違いになってしまうこのタイミングでの訪問は全く喜べなかった。

それに先ほど会ったばかりの執事の様子も気になった。

言葉は丁寧だが、仮にも主人の娘にあのような慇懃な態度や冷たい表情を取るものなのだろうか。

何となく浮かない気分で旅の準備を進めたのだった。


                ※


夕食はレイアとクララ、そしてトーマスの3人でとることになった。

暗い表情のクララと無表情で無口なトーマスとの食事は、何とも言えない気まずい雰囲気がただよった。

レイアは一人、空気をほぐそうと頑張った。


「トーマス、お父様はどんな方なの?」

「侯爵家の当主としてしっかり仕事をされている立派な方です。」

「私には妹がいるのよね?」

「はい。」

「・・・名前は?」

「ソフィア様です。」


レイアの質問には答えてくれるが、余分なことは一言も言わないのですぐに会話が途絶えてしまうのだ。

レイアが一方的に尋ね、トーマスが一言答える。

この繰り返しで、夕食は終了してしまった。

レイアが新しく知りえたことは、妹の他に弟が誕生していたことと彼の名前がノアということくらいだった。


夕食の片づけはトーマスの申し出を断り、いつものようにクララとレイアの2人で行った。

しかし、何をしゃべるわけでもないのに、トーマスが常に少し離れた所からまるで見張るかのようにこちらを見つめていた。

そのため会話もし辛く、黙々と作業を行うこととなってしまった。


片づけが終わると、トーマスは即座にレイアに近づいてきた。

「お嬢様。明日は出発ですし、長旅になりますから今日は早めにお休みください。」

そして追い立てるように浴室に誘導され、風呂から上がるとどこからともなく現れレイアを部屋へと連れて行った。

「おやすみなさいませ。」

そう言うとレイアの部屋の扉をパタンと閉め、去っていった。


部屋の中でレイアは一人ため息をついた。

王都への旅は御者がいるとはいえ、馬車の中はトーマスと2人きりだ。

「1週間もあの人と2人きりなんて、大丈夫かな?」

ベッドに入ってからも不安がむくむくと湧いてきた。

しかし、今日は町に買い物に行ったり、夕食時はトーマスのせいで気疲れしたこともあってかレイアは早々に眠ることが出来たのだった。



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