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悪魔の生贄が救国の乙女になるまで  作者: らな


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第10話 ヨハン神父

クララが町で聞いた噂によると、神父ヨハンはかつて王都の大聖堂で高位の神官を務めていたこともある高名な聖職者だったらしい。


実際、博識で懐の広い人物だった。

ある日、ヨハンにレイアとクララが何故こんなところにいるのかと尋ねられたことがあった。

もちろん悪魔のことは言えるわけがない。

だが、クララのしどろもどろの説明にも何も触れてこなかった。

何か言えない事情があるのだと察してくれたのだろう。

後ろめたいところのあるクララとしては、それがありがたかった。


一方、ヨハンは真面目なクララと幼く可愛らしいレイアを好ましく思っていた。

それ故、クルム侯爵のレイアの扱いには疑問を持たざるを得なかった。


もともとクルム侯爵家の歴史は300年前にまで遡ることが出来る。

”建国の勇者”が興したこのベルナー王国に300年前滅亡の危機が訪れた。

当時の世継ぎの王子が悪魔に取りつかれ、国内外がめちゃくちゃになったのだ。

悪魔に取りつかれた王子は隣国と戦を起こし、たくさんの人民が死に国土が焦土と化した。


そこに立ち上がったのが、当時王宮の魔術師庁で祓魔の仕事を担当していた子爵令嬢クリスティーナ・クルムだった。

彼女は捨て身で悪魔と対峙し、王子に取りついた悪魔を追い払った。

王子は正気を取り戻し、ベルナー王国に再び平和が訪れた。


その後、功績を認められクリスティーナはクルム女侯爵の身分と”救国の乙女”の称号を賜った。

彼女の血を受け継ぐクルム侯爵家では、クリスティーナと同じ銀髪碧眼を持つ子供が時々生まれることがあった。

そして、その子供達は例外なく非常に高い神聖力を持っていた。

クリスティーナの再現したようなレイアも間違いなく高い神聖力を持っているはずだ。


なぜ侯爵は娘に教育をほどこさない?

こんな田舎に隠すように追いやったのは何のためか?


当然、そんな疑問を抱いた。


ヨハンは元々このレーゲンスブルク出身の平民だった。

非常に高い神聖力とたゆまぬ努力を認められ、王都の大聖堂の副大神官にまで昇りつめた。

国内の神殿において、頂点は大神官だ。

当時の大神官はヨハンと比べ神聖力においても人望においても何一つ勝るものがない人物だった。

結局は、貴族出身だったり政治力の強い者が勝つ世界だったのだ。


そんな環境に嫌気がさし、60歳を過ぎた頃に王都の神殿を去ることにしたのだ。

ヨハンを慕い引き留めてくれる者もたくさんいたが、数々の嫉妬や嫌がらせを受けるうちにヨハンの気持ちは固まってしまっていた。

そして、別れを惜しまれながらもレーゲンスブルクに戻ってきたのだ。


レーゲンスブルクでの穏やかな生活は心休まるものであったが、物足りないという思いもあった。

あれ程努力して身に付けた神聖力を操る技術や知識を使う機会もなく、モヤモヤした満たされない思いを心の底に抱えていた。


そんな時、クララが銀髪碧眼のクルム侯爵の娘を連れてこの田舎にやって来たのだ。

何か事情があるのだろうとは思ったが、クララは話したくなさそうだった。

神聖力で探っても、クララやレイアが邪悪な者でないことは明らかだった。


そして、ヨハンは有り余る時間と自分の知識をレイアの教育のために全力で注いだのだった。

教育を始め、さすがはクルム侯爵家の娘だと感心した。

大神官にもなれると言われた自分と同等以上の神聖力を持つ上に、ヨハンが教えることを素直に吸収して自分の物にしていったのだ。

ぐんぐんと成長するレイアを指導するのは楽しかった。


そしていつしかレイアの教育はヨハンの生きがいとなっていった。

愛弟子の成長を見て、自分はこの娘を育てるため神に導かれてこの地に来たのかもしれないと思うようになった。



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