エステヴァンの手紙
新学期が始まり、雪が積もった日。
オットーが学院に来た。
レポートを提出すると共に、学力テストを受けるのだそうだ。
授業は受けなかったけれど、教室に顔を出してくれた。
「ハナ!お昼を一緒に食べよう!」
食堂で奥の席に座り、二人で話し込んだ。
ヴァレンスのこと、アドリアンの近況。オットーの勉強の進捗具合。
話は尽きなかった。
「ちゃんと食べてるかい?ハナ。痩せたよ」
と心配そうにするオットーには精一杯の笑顔を向けた。
「大丈夫、週末はマーサと美味しいもの食べてるし。ウイレムが迎えに来てくれるまでの辛抱だから」
と答えると、ますます痛ましそうな表情が向けられた。
「何かあったら僕に言って。相談に乗るから。ハナのためなら、いくらでも時間を作る」
「ありがとう。でも、私ずいぶん強くなったと思う。心配しないで」
2月の声を聞く。
エステヴァンから久しぶりの手紙が届いた。
「領地の仕事にやっと慣れてきた。色々とあったけれど、なんとかやっている。王都の生活や学院がとても遠く感じられる。ハナと友人たちと過ごした頃の、無責任で能天気で、輝いていた日々を時々思い出す。今は、領民の生活を自分が背負っていると実感している。そしてこの度、領地の有力貴族の娘と婚約が整った。彼女の手前、以前のように気安く手紙のやり取りをすることができなくなった。いつでも、ハナの幸せを祈っている」
一人一人自分の道を歩み始めている。その道が、私とは離れてゆく。
寂しかったけれど、心を込めて「おめでとう」のカードを送った。
学院の生活は相変わらずだった。
寮の部屋に閉じ込められたり、インク壺をひっくり返されるいじめ。
事あるごとに突っかかってくるフレデリカも、説教を繰り返すアメリアも。
友達を作るのは諦めた。
辛さや寂しさは怒りに変わりつつあった。
神様だかなんだか知らないが、勝手にこんな世界に送り込んで、攻略は終わったのに帰してくれない。
そればかりか、よってたかって追い詰める。
この国で信仰されている女神がそいつなら、教会なんか2度と行くものかと誓った。
許せない。
絶対負けない。
屈しない。
どんなにいじめられようと、無視されようと、いつか絶対帰ってやる。
きっと、ウイレムが周りを説得してくれる。正式に婚約者として迎えてくれて、結婚。
きっと、それこそが真のハッピーエンドだ。
あとは外野に過ぎない。どうでもいい人たち。
そんな人たち、私には必要ない。
腹立ちが強くなるにつれ、食欲が戻ってきた。
一人でいることも、以前ほど辛くなくなった。
毅然としてやる。
何も応えてないって見せつけてやる。
朝起きられないことが減って、遅れがちだった勉強も少しずつ挽回していった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
少しずつ立ち直り始めたハナです。
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