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第八話 祖父

 俺たちは今、父方の祖父の家に向かっている。

 何でも、姉さんの誕生日があったから、家に帰ってくるようにとの連絡が姉の誕生日に会わせて来ていたようだ。

 だが、俺の誕生日を家でやるために少し遅らせていたようで、向かっているというわけだ。

 そして、現在そろそろ三ヶ月が経過しかけており、着くまであと少しだと言う。


 「ねぇお父さん。お祖父ちゃんってどんな人?」


 父は一瞬こっちを見た。


 「そうだな…お父さんはあんまり仲良くないけど、優しいんじゃないか?」

 「お父さんには怖いの…?」

 「まぁ多分大丈夫だと思うよ。」

 「じゃあ心配いらないね!」

 「ゴホッゴホッ…」

 「母さん大丈夫?」

 「平気よ。」


 母は2ヶ月ほど前から咳がずっと続いている。

 まぁ多分、旅の疲れと風邪だろうからあんまり心配はしていない。


 そんな事を言っていたら、目的の街の一つ前のまちに着いた。


 「さぁ、ここが最後の街、『クリス』だ!」


 この街で最後の荷物を整えるために母と姉とマーガリアは調達に行った。

 俺は父さんと馬車の点検や寝床の確保などが仕事だ。


 「…父さん、何だか心配そうな顔してますね。」

 「え?いや…そんな事は無いぞ?」

 「分かってます。手紙を三ヶ月ほっといたから着いて怒られるのが嫌なんでしょう?」

 「え?あぁ…よく分かったな。」

 「怒られるのは誰だって嫌です。」

 「ゴホッ…」

 「母さんのうつりました?」

 「あぁ。そうみたいだな。お前らはうつらないようにな?」


 俺たちはこの街で2日過ごし、3日後の夕方、祖父の家がある街『アガルタリア』に着いた。

 商店街で夜ご飯を済ませ、その後、その街の商店街から離れたところにある庭付きの一軒家の前に馬車を止停めた。


 ゴンゴンゴン


 父が大きな扉のドアノッカーを叩いた。

 すると中からご老婆が、一人出てきた。


 「まぁ、バリー様!」

 「久しぶりだな。」

 「お久しぶりでございます。

 それでは、広間でお待ちください。

 直ぐに旦那様を呼んで参ります。」


 俺たちは広間に通された。

 其処は大きなソファーや絨毯など、明らかに金持ちなオーラが出ている広間だった。


 「広いな…」

 「お父さん、私疲れた〜」

 「そうだな、お祖父ちゃんが来るまでそこのソファーにでも座ってなさい。」


 そして、暫くして、一人の老人が降りてきた。


 「久しいな。バリー。」

 「久しぶり。父さん。」

 「お久しぶりです。お義父さん。」

 「よく来た。それにしても、偉く遅れたな。」

 「まぁ、色々あって。」

 「まぁ良い。…それよりも、お前は子供に挨拶を教えなかったのか?」

 「あっ、いや…」

 「はじめまして。お祖父様。ジルです。」


 俺は父さんが言い訳する前に挨拶をした。

 まぁタイミングが分からなかっただけなので挨拶くらいできる。


 しかし、返ってきた言葉は衝撃的なものだった。


 「お前は黙っとれ。」


 は?挨拶をしろというからしたのに。

 喧嘩売ってんのか?この爺。


 俺は表情には出さずキレた。


 「は、はじめまして…アリナ…です…」

 「久しいなアリナ。今日はお前の5歳の誕生会を開くんだ。ゆっくりしていきなさい。」

 「…私の誕生会は、半年前だよ…?やるならジルのじゃないの…?」

 「ジル…?此奴か?

 何故わしが此奴の誕生会を開かなくてはいけないんだ?」

 「え…?私は祝うのにジルは祝わないの…?」

 「当たり前だ。」

 「じゃあ、私も要らない。」

 「…アリナ、マーガリアとジルと一緒に別の部屋に行っていなさい。お父さんはお祖父ちゃんと話すことがあるから。」


 マーガリアとアリナは俺と一緒に別の部屋に消え、この部屋には両親と爺が残った。


 「…マーガリア、トイレって何処ですか?」

 「え〜と…」

 「あぁ。それなら、此方に。」


 俺は出迎えてくれたお婆さんに道を教えられトイレに行った…フリをして元の部屋のドアに耳を当てた。


 「バリー。お前に確認することがある。

 お前は使用人との子供をまるで正当な子供のように扱うのか?

 そもそも、エリアの腹が膨れていたとき、使用人にはその兆候は無かった気がするんだが?」

 「でしょうね。

 あの子はマーガリアとの子供ではないですから。」


 …それは変じゃないか?

 俺も姉との誕生会が近すぎて違和感は感じていた。まぁ問題が無かったので今までは深く考えなかった。

 だが、仮にマーガリアも母親候補として違うなら、俺は一体誰の子なんだ…?

 だってそうだろ?

 子供は産まれるのに1年は必要なんだ。

 三ヶ月違いなんて有り得ないんだよ。


 「ならば、あのガキの母は誰だ?」

 「わかりません。」

 「分からないだと…?お前は自分とした相手すら思い出せないのか?」

 「あの子は拾い児です。」


 …全てのパーツがはまった。

 俺が拾われた児ならあの違和感にも説明が付く。


 …あぁ。また、拾い児なのか。



 俺は前世でも実は施設の子だった。

 そっから2歳くらいの時に引き取られて、5歳くらいで本格的に体が弱って、病院にはいるようになったんだ。


 …ある意味、俺で良かったかもな。こんな歳の子供がこの事実を知るのは間違いなく苦だ。

 俺なら、涙なくして受け入れられ…


 俺の脳裏には5年間の思い出が蘇った。


 「涙は無くとも、悲しさはあるさ…」


 このどうしょうもない孤独感はいつまで経っても慣れない。




 「…拾い児だと?お前は何を考えているんだ?」

 「あの子が拾い児だとしても、もう立派な家族だ。」

 「血がつながっていない子ども、しかも男児だと?お前はあの子供に家を継がせる気か?」

 「継ぐもんなんてないだろ!」

 「家は代々騎士の家系だ。お前は言いつけを破り家を飛び出したものだと忘れたのか!」

 「騎士なんてどうでもいいだろ!俺は決められた人生が大っきらいだたんだ!」

 「才能はあったお前が騎士にならなかったことで家だけが騎士を輩出しなかった分家となった。

 家が裕福な理由はアストレア家の分家だからだ。騎士が生まれなければ価値が無い!」

 「権力の為だけに子供を差し出せってのか!」

 「アリナは剣に興味がありそうだがな。そこの剣に興味を示していたぞ?」

 「だとしても、剣のためだけに騎士になる必要はないだろ!」

 「ならばお前はアリナをお前と同じ冒険者にするつもりか?

 お前はアリナを第一に考えているつもりかもしれないが、わしだって同じだ。

 現に、冒険者に比べ、騎士は給料も安定しているし、安全だ。」

 「ッ…」

 「だいたい、騎士を継がせたくないのは()()()()()だろう?」

 「ッ…やはり帰ってくるべきじゃなかった。孫くらい見せてやってもいいかと思って帰ってきたが、やっぱりアンタはクソだ!」

 「また逃げるのか?

 やはりもっと厳しく育てるべきだったな。」



 俺はこちらに近づく足音がしたので咄嗟に逃げた。


 「…ジル?」


 しかし、バリーの瞳には角を曲がる小さい体が映り込んでいた。


 その夜、二人は寝室で話し合った。


 「やっぱり彼奴はクソだ。」

 「ゴホッゴホッ…バリー、明日にでもここを発ちましょう?」

 「大丈夫か?

 やっぱり変だよ。疲れも溜まってそうだし、態々明日にしなくても…」

 「このままだと、ジルもアリナも可哀想よ。

 あの人とは二人を離すべきだわ。」

 「そうだな。分かった明日の早朝、家を出よう。」

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