第七話 5歳に
今日はジルの誕生日だ。
捨て子のジルの誕生日がなぜ分かるのかって?
そらぁ、『冒険者カード』のおかげさ。
冒険者カードには特殊魔法陣が挟まれている。
これは魔術師ギルドが作成した特殊魔法陣で、血液を摂取ことにより、一定期間、種族・年齢等の情報が表示されるのだ。
俺達は、アリナの誕生日会から数日後、夜中にこっそりジルの指に針を刺して、血液を採取。
俺の昔なくしたと思ってたけど、再発行後に見つかった使用期限切れの冒険者カードを使ってジルの年齢を毎日確認していた。
そして今日、ジルの年齢が4歳から5歳に変わった。
俺は家族皆を集め、作戦会議をする。
因みに、『バスターズ』の皆も、ジルが捨て子だと言うことは知っているので、朝イチに連絡し協力してもらった。
「皆、本日がジルの誕生日だ。」
「なる程な。(アリナの誕生日とは)三ヶ月ぐらいしか違わなかったのか」
「本日、ジルとアリナを連れ回すのは、セスト、ガードン。頼んだ。」
「あぁ。ついでに贈り物買ってくる。」
「家には、セルシア、エリア、マーガリア、俺で。」
「了解。」
「じゃあ皆、アリナの時とは違って緊急の用意だけど、頼んだ。」
「おう!」
そうして、バースデー作戦は始まった。
〜ジル視点〜
…分かっちゃいけないんだろう。だが、分かってしまったものは仕方が無い。
たぶん、今日が俺の誕生日だ。
理由は主に三つ。
一つ、殆ど家に来ないバスターズのメンバーが全員揃って朝からいること。
二つ、金を持たされて皆と外に行って来いと言われたこと。
三つ、姉が挙動不審なこと。
…うん。分かりやすいくらいだな。
まぁ、今日は主役なんだ。臨時のお小遣いで豪遊しよ。
最近、屋台の物も火さえ通っていれば全く問題なさそうな事に気が付いたので、日が通っているものだけ食べる。
まぁ、火が通らない物なんて少ないけどね。
「姉さん、今度はあっちの屋台のやつ食べようよ。」
「え?え、あ…私は良いや…」
…うん。まぁちょっとは予想してた。お小遣いの全てを食べ物に回してる可能性はあった。
やっぱりそうか。貯金もない感じか。
「ハハハ、遠慮すんな!これくらい奢ってやるさ!…ガードンが。」
「え?…ハァ、まぁ良い。子供なんだし遠慮すんな、これくらい。」
「良いの?!やった〜!」
「よっしゃ〜!ゴチになりまーす!」
「お前は自分で買え。」
「え?」
そうして、俺達は(主に姉が)色々奢って貰った。
「ここの串焼魚美味しいです!」
「ね!こんなの初めて食べた!」
「だろう?俺の一押しなんだ!魚だが、塩がかなり強めだから酒にも合う!」
「お前はすぐ酒だな。」
「次あれ食べよ〜!」
そんな事をしている内に時間が過ぎ、ひょんな事から別行動をする事になった。
俺はガードンと回っている。
「…なぁジル。」
「何ですか?」
「ぶっちゃけ気づいてるよな?」
「…何のことでしょう。」
「ハハハ!とぼける必要はないさ。…気がついたのは、朝に俺達と会った時か?」
「…そうですね。まぁ後は姉がソワソワしてたし、臨時のお小遣い貰って外行ってこいっていうのは、一年前と全く一緒ですから。」
「なる程な、いい記憶力してるよ。」
「…逆に何処で気が付きましたか?」
「そうだな…アリナが屋台に行くの渋った時に、お前、奢ろうとしてただろ。」
「…まぁ結局はガードンさんが奢ってくれましたけどね。」
「たがな、アリナも同じ金額を貰っているのに、お金が残ってないはずが無いんだ。計算ができるならそれくらい分かるだろう?
なのに、お前は咄嗟に自分のポケットに手を伸ばした。決定打はそこだな。」
「…流石にプレゼントは分からないですけど、この辺の物たちは高いですからね。
プレゼントを買うってなったら、屋台の物も精々一種類食べるのが限界ですよ。下手したら一種類も食べられない。」
「まぁ、アイツは何でもかんでも凄え美味そうに食べるからな。食べさせたくなる気持ちも分からなくもない。」
「…他に誰が気がついてます?」
「セストは確実に気がついてるな。じゃなきゃ、あんな直ぐに話題を変えられん。」
確かに、あの時に咄嗟に口を開いたのはセストだった。
「…姉さんにバレてないなら僕も知らないふりをしておきます。」
「そうだな。それが良い。」
姉さんは頑張ってサプライズしてくれてるんだ。
知らないふりをするのが、礼儀だろう。
その後、俺達は合流し家に帰った。
「「「誕生日おめでとう!」」」
そして、帰ると同時に去年と同じ誕生日会が始まった。
「ジル、これは父さんからだ。」
そして、俺も木剣をもらった。
「魔術でもいいが、やっぱり男と言えば剣だ。
将来、大切な物を手放さない為にも明日から剣をやろう!」
「はい。」
正直、剣はあんまり好きではないのだが…まぁやってたらその内好きになる事もあるだろう。
「これは母さんからね。」
母さんは俺に少し大きめのローブをくれた。
「貴方は寒がりだし、寒い日に外に出る時は羽織りなさい。それに、ローブと言えば魔術師!貴女にぴったりでしょ?剣だけじゃなくて魔術も頑張ってね。」
「うん。」
正直、俺が親の立場なら子供が一度狼に殺されかけているなら、姉含めて家から一歩も出したくないものだが…まぁこの世界だと違うのだろう。
「では、次は私から」
マーガリアはハンカチをくれた。
「アリナ様とお揃いにさせていただきました。」
「ありがとうございます。」
「いえーぃ!おそろーい!」
「おそろーい!」
お揃いというのは結構嬉しいものだな。
「次は俺らから…だが、今回俺たちは出資という形でプレゼントするから、現物は無いぜ。」
出資…?
姉さんは何を買ったんだ…?
最後は姉さんからだった。
「じゃあ私からはこれ!」
「これは…!」
そこにあったのはハーモニカの様な物。
それはやはり楽器だった。
「これね、露店に売ってたの。
鍛冶屋のおじさんが、趣味で作ったんだって。」
「…吹いてみて良い?」
「良いよ!」
昔、幼稚園の頃、ハーモニカをやった事があり、病院でも時々吹いていた。
…少し形は違うが、概ね同じか。
「…スゥ…」
部屋の中にはハーモニカの音が響いた。
…懐かしい。綺麗な音だ。
「綺麗な音〜」
「…初めて吹いたんだろ?上手くね?」
「あぁ。初めて聴くが、いい音だ。」
「…姉さん。どうですか?」
「うん!凄く上手。」
「ありがとうございます。」
嬉しかった。
こうして俺の誕生日会は終了した。
俺はこの日を境に、このハーモニカを毎日持ち、毎日どこかしらで吹いた。
その音色は村中に広まり、やがて俺のハーモニカの音を知らない村人は居なくなった。




