第二話 魔術、やり過ぎ注意
俺はその後、姉と共に母の膝の上で読み聞かせされ始めた。
だが姉はつまらなかったのか直ぐに何処かへ行ってしまった。
まぁしょうがない。なんてったってこの本は紛れも無く教科書の類いだからだ。
俺が興味あるからまだ良いが…
母よ。まだ1歳前後の子供に教科書を読み聞かせする家は多分ほぼ無いぞ?
だが、さすが教科書。かなり分かりやすい。
だが、それと同時に単語がムズい。まぁそこはしょうがないな。
要約するとこんな感じだ。
・魔術には基本属性(火、水、風、土)がある。
・魔術にはそれぞれ3段階のレベルが存在する。
【例…水魔術下級、火魔術中級、風魔術上級】
・属性には当てはまらない魔術もある。
【例…治癒魔術】
・それぞれ適性属性があり、適合率が高いと、上位属性が使えるようになる。
・種族的な適性属性の相性も存在する。
【例…エルフの血を強く引くものは森に住んでいた歴史から、火事を起こさないために火魔術の適性率が低いことが多い。(勿論、例外もあり。)】
・属性には相性がある。中級魔術以上は相性による有利不利が大きく現れる。
(火<水、水<土、土<風、風<火)
【例…火魔術上級は水魔術中級に確定で負ける。】
・相性の悪さは上位属性で押し切ることも可能。
その場合、勝敗は魔術レベルにより決まる。
・上位属性同士だと相性問題は少し緩和される。
・魔術は混ぜることを可能。
(と言うか、それ前提で作られている。)
…これくらいだろう。
…なるほど、つまり最悪すべて使えない可能性があると。
…う〜む。参ったな…嫌だな、せっかくの異世界で魔術が使えないのは。
遺伝については書かれていないが、母親が水魔術を使っていたことを考えると、五割くらいの確率で俺も水魔術が使えたりするのではないか?
母が姉と積み木遊びをし始めただめ、俺は一人残って本を読んでいた。
…残りのページは、それぞれの魔術の詠唱か。
…是非やってみたいな。
…だが、この身体で言葉を喋っても良いのだろうか…
姉を見た感じ、流暢に喋り始めるには早すぎると思うんだよな。
実際、今はなるべく喋らずに単語だけで話すようにしてるし。
…と言うか、俺何歳なんだ?
姉がいるってことは、最低でも一年は年が離れてるはずなんだ。
姉が2歳だとして、俺が1歳…?それにしては少し成長が早くないか?
生まれた時点で数ヶ月経ってそうだったが…
…あっそっか。生まれた時の記憶がなかったってことは、俺の意識が目覚めたのが生まれてから数ヶ月後の可能性もあるのか。
…まぁでも、ちゃんと喋るのはもう数年経ってからにしよう。
姉という見本がいるんだ。成長ぐわいも真似させてもらおう。
とりあえず俺は可能性が一番高そうな水魔術下級の詠唱を言語習得のついでに覚え始めた。
約ニヶ月後。
…アレ。変だな。
最近になってやっとトイレに行けるようになった俺はトイレの底に向けてやっと覚えたウォータボールの詠唱をしてみたのだが…何だこのポタポタの弱そうな水は。
…アレ?おかしいな。適性率が低い可能性はあるとして、こんなことある?
だってアレよ?下級魔術よ?それでもこれ??
「…俺には水魔術の才能が無いというのか…」
…だが、諦めるにはまだ早い。
もしかしたら姿勢が悪かったのかもしれない。
そうさ。母は横に向けて撃ってた。俺は下に撃った。魔術は本来武器!横に撃つものなのだ!
俺は重力に負けてしまったと言うほぼあり得なさそうな可能性にかけ、部屋から外に向かってもう一度試してみた。
「水よ、球となりて敵を撃て『ウォーターボール』」
すると、手から出てきたのはさっきよりもちょっと大きいウォーターボールだった。
そして、何か身体中が少しチクチクする気がする。
「アレ?気のせいか?…ちょっと大きくなってね?」
…もしかしてもう一回撃ったら大きくなったりする?
俺はもう一度試してみることにした。
そしたら今度はもう少し大きくなった。
威力が弱すぎたから1回目以降は床に向けて撃ってるのだが、床に落ちてる粒の大きさが明らかに大きくなっている。
そしてやはり身体中がさっきよりもチクチクする。
はっは〜ん…アレだな?これ。赤ん坊が打つことが想定されてないから何らかのイレギュラーが起こったパターンか?
身体中がチクチクするのは良く分からんが、まぁこのくらいなら大丈夫だろ。
ハァ…ハァ…
…何かだんだん息が上がってきたな。これホントに大丈夫か?
たが、現状撃てば撃つほど量が増えてるのだからやったほうがいいだろ。
筋トレと一緒だ。限界は超えるためにあるって誰かが言ってた気がするしな!やろう!
だが、結構水の量が増えてきたからバレたらまずいし、続きは窓から外に向けて撃とう。
俺はもう一度撃つ。さらにもう一度。さらにもう一度!
「ハァ…ハァ…ッ…ハァ…ハァ…」
何か、前世で体調が悪かった日くらい息切れしてきたし、何か身体中痛いんだが……流石にもう止めとくか…?
いや…でも…ちょうど慣れてきたし……最後一回だけ…………
「水よ…球となりて…敵をッ…」
息が絶え絶えになってたせいで、最後の呪文が言い切れなかった!
しかし、何事もなかったかのようにウォーターボールは発射された。
…何でだ?何で発射された?
もしかして呪文は必要なかったりするのか?
だが、呪文の詠唱破棄はやり方が書かれてなかった。…でも、現に少しだが詠唱の省略はできる。
…慣れか…?
だが、慣れでそれができるならやる価値はある。
今回はもしかしたら詠唱のせいで余計に体力を使ってる可能性があるからな。
だとしたら詠唱さえなんとかなれば…
「ゥ゙…」
その時、急激な吐き気に襲われた。
ヤバいヤバい!完全にやりすぎた!
俺はトイレに駆け込みゲロる。
「ハァ…ハァ…明日は流石に自重しよぅ゙…オロロロロロロ………」
まぁあとから分かったが、アレが魔力が切れた時の症状なんだろう。
まぁやりすぎなければあんな症状は出ない。
気にせずに訓練は続けよう。
それとついでに詠唱の短縮を目指そう。
因みに、その日の夜は体調悪すぎてご飯も食べられず、くたばりかけた。
マジでマーガリア感謝。
次の日のまだ暗い時に起きたら手ぬぐいが頭のうえにあって、マーガリアが隣で椅子に座ったまま寝てた。
きっと夜ずっと看病しててくれたんだろう。
すみません。自分のせいで…ほんとにすみません。
因みに身体中の痛みだけは完治せず、緩和はしたが、残っている。




