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第十一話 褐色のエルフ

 「慌てるな!取り囲んめ!」


 直ぐ様俺を囲うように陣形が組まれた。


 …あの男、俺の魔法で殆どが消されるのを防ぐためにあえて広げたな。

 冷静な判断、ちょっと良い格好…恐らく、あいつがボスだな。

 なら、彼奴から消す!


 俺はアイツに向けてウォーターボールを撃った。


 しかし、彼奴は腰の剣を抜き、ウォーターボールを斬った。


 「?!」

 「残念だったな?いくら自信があろうと、お前の魔術程度なら、俺でも斬れる。」


 …まさか、魔術が斬られるとは予想してなかった…だが、よくよく考えれば、剣士も魔術師への対抗手段を持っているのが普通か。

 じゃなきゃ皆魔術師になるはずだもんな。

 魔術の速度は皆同じ。切られるより先に殺すのは現実的じゃない。

 …となると、重要なのは周りを減らし、逃げ、死角から撃つことだな。


 俺は両手を広げ、周りの奴らに向けてウォーターボールを乱射する。

 だが、当たらない。

 体勢は崩せても、全員殺せるまでに魔力が消える可能性がある。これじゃ駄目だ!

 …けど、これだけじゃない!

 俺は両手を地面につける。


 「土よ、槍となりて敵を穿て!ロックスピア!」

 

 土魔術中級・ロックスピア。

 広範囲攻撃魔術。

 土が存在しないところでもできるが、土を使えば魔力消費を格段に抑えられる。

 そして、俺は詠唱をする事により、基礎出力が高い俺の魔術は普通より範囲が広がり、距離を取っていた盗賊達全員が射程圏内になった。

 ウォーターボールに気を取られていると死角の地面から土の槍が襲う。


 雑に殺してもいいけど、何が起こるか分からないんだ。確実に頭を潰す。


 「良いのか小僧!そんな大きな展開すると頼みの綱の魔力がなくなっちまうぜ?!」


 あぁ。これで良い。

 俺の魔術数発程度で魔力は絶対切れない。

 普段、俺が練習でどんだけ魔術を撃ってると思ってるんだ。

 幸いなことに、あいつほど対応力がある奴が居なかったようで、他の奴らは呆気なく倒れた。


 「…化物め…」

 「さぁ、後はお前だけだ。」

 「ッ…ふざけんな!」


 そいつは掛かってくるどころか、敗走した。


 「…まぁ、別に良いか。」


 俺は殺す事が目的じゃない。

 あくまであの洞穴を奪う事が目的なんだ。


 「…ついでに貰ってくか。」


 俺は死体から短剣や金を取り、その後ゆっくりと洞穴に近づいた。

 その時、中から何かが飛んできて俺の肩に刺さった。


 「グアッ!」

 「ヘヘッ!流石にガキの反射神経じゃ矢は無理だよな!」


 逃げたはずの彼奴は洞穴に戻り、俺に奇襲を仕掛けた。


 「チッ…!」


 俺は直ぐにロックウォールで射線を切り、身を隠した。


 「この矢どうしよう…」


 こんな物が刺さった時の対処法を俺は知らない。

 痛いからさっさと抜きたいが、やり方を間違えたらもしかしたら感染症のリスクもある。


 「どうしよう…」


 だが、迷ってる暇は無かった。

 彼奴は直ぐにロックウォールを超えて俺を追いかけた。

 射線が通るたびに俺はそれを切り、そうすれば彼奴は接近戦に持ち込んだ。

 そして、痛みにより直ぐに俺の速度は落ちた。


 このままじゃじんひりだ…


 俺は再びロックウォールを展開する。


 「フー…男だろ?覚悟を決めろ…」


 幸い、鏃の根元は見えてる。

 返しが付いていないことを願って俺は左腕を思いっきり噛みながら鏃を引っこ抜いた。


 「ッ……………!」


 幸い、鏃は抜けた。だが、猛烈な痛みが襲い掛かったせいで俺は戦闘態勢が崩れた。


 その時、再び近距離戦に持ち込まれた。


 「終わりだ!じゃあな小僧!」


 俺はとっさに腕で受けようとした。

 腕で受けても意味が無いことは分かってた。けど、本能的に逆らえなかった。

 興奮状態が落ち着いて恐怖が現れるその直前、目の前の敵の胸から血が流れた。


 「…え?」

 「…ぁ゙?」


 その胸はまるで植物の様な物が貫通していた。

 だが、間違いなく其処に植物は無かった。

 それに、あったとしてもおかしかった。


 だが、結果的に俺はそれに助けられた。


 その時、ロックウォールの向こうから声が聞こえた。


 「そこに居るの!今すぐ出てきなさい!」

 「…」


 声…?誰だ…?


 「聞こえないのか!居るのは分かってる!出てこなければ敵対と見なすぞ!」


 俺は両手をあげて姿を現した。

 目の前には褐色の肌で銀髪の耳の尖った女が居た。

 こっちに手を向けてるから敵対は解いてないみたいだな。

 明らかに魔術を撃つ気満々だ。


 「…子供?…まぁいいわ。

 貴方は誰?こいつらの仲間?」

 「いや。むしろこいつらとは敵対してますね。

 助けてくれたのは貴方ですか?どうも。」

 「質問に答えろ。お前は誰だ。」


 おー怖っ。

 何時手を出されるか分かったもんじゃない。

 さっさと答えたほうが良いな。


 「名前を名乗るなら、時分から名乗るべきだと思いますけどね。

 因みに、僕の名前はジルです。」

 「子供がこんな所で何をしている。」

 「その言葉、そっくりそのまま返しますよ。」

 「私は子供じゃない!

 …まぁ良い。私はこいつらに背後から奇襲され誘拐された。

 …で、君は何故ここにいる。」

 「ここから行ったところの道で襲撃されましてね。崖から落ちて家族とはぐれてます。」

 「そんな奴が何故こいつらと戦う?」

 「最初は逃げようとしましたけどね。

 貴方が運ばれてくるのに気がついて聞き耳を立ててたら逃げるのに失敗しただけですよ。」

 「つまり自業自得か。」

 「まぁそうですね。」

 「…肩は治さないのか?」

 「治せませんよ。」

 「…じゃあ、こっちに来なさい。

 来なくても問題は無かっただろうけど、助けてもらったのは事実だからね。」


 そう言って彼女はしゃがんだ。


 「その怪我は治してあげる。」


 『大地よ、我らに恵みを与えたまえ。

 大地のエネルギーを我らに与えたまえ。

 …芽吹け!治癒の葉!』


 そう言うと、地面から新たに植物が生え、その先に葉が一枚現れた。

 彼女はそれを毟り取り、俺の肩に貼り付けた。

 すると、葉は身体に吸い込まれ、傷が癒えた。


 「…?!」


 この魔術を俺は知らない。

 少なくとも基本魔術ではない。

 エルフの固有魔術。

 植物の魔術。


 「それから、君。さっき私に名乗れって言ったね。」

 「そうですね。」

 「じゃあ教えて上げる。私の名前はメノ。」


 その女は無い胸を張ってそう言った。

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