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第十話 家族に会うために

 落ちた!落ちちゃった!

 どうする?!どうすれば良い?!


 時間は無い。一か八か、魔法で!

 衝撃を緩和するなら…風と水!

 こいつらを混ぜる!


 風魔術初級・ウィンドボム!

 水魔術初級・ウォーターウォール!


 ウィンドボムは前方に風を飛ばす魔術。これを下向きに打つことで落下速度を抑える!

 そして、ウォーターウォールは広範囲に水の防壁を作る魔術。これなら多少展開場所をミスっても何とかなる!

 後は運だ!


 俺は目をつむり、背中の下に両手を持ってきて、魔術を使う。

 幸い魔術は成功。

 少し押し出されたがウィンドボムで落下速度は抑えられた。

 そして、落下。

 幸い、ウォーターウォールの範囲内だったので背中周辺が強く打ち付けられはしたが、頭はウィンドボムの力で上がってた。

 多少クラクラするものの、頭には重大なダメージは入ってない!

 足は…多分大丈夫!多少衝撃で痺れてるけど、動けない程じゃない!

 俺は生きていることに安堵した。


 しかし、問題はこの崖をどうやって登るかだ。

 俺は試しに叫んでみることにした。


 「とうさーん!かあさーん!ねえさーん!マーガリア!」


 だが、返事は無かった。

 聴こえなかったのも無理はない。馬車があった所は崖から意外と離れている。

 それに、ジルが落ちて直ぐにバリーは馬車に戻った。

 ウォーターウォールに着地した時の水の音すら聞こえなかったのだ。

 子供の声如きが聞こえるはずもない。


 「…何で返事がないんだ…?」


 だが、諦めは直ぐ着いた。

 自分がテンパりながらも思考する時間があるくらいにはこの崖は深かった。

 声が聴こえない可能性だって十分あるのだ。


 「…とりあえず、登るか。」


 登れば、何とかなる。そう信じるしかなかった。

 だが、現実的ではなかった。

 垂直に登れないのだから迂回するしかない。

 迂回すればその分時間がかかる。

 まだ朝だったのに、森を出る前に暗くなり始めた。


 「…寒い…」


 木々のせいで殆ど明かりがない。

 地面の小石や木の根が見えずに躓くことなどいくらでもあった。

 だが、肉体的にも精神的にも、暗く終わりが見えない山道を歩くのは限界だった。

 昼も夜も食べられてない。そんな時、視界の先に何かが見えた。


 「…洞穴…?」


 いや…違うな。あれは天然物じゃない。誰かが手を加えた拠点だ。よく見たら人もいる…。

 彼処を使ってる可能性が一番高いのは…山賊!

 関わったら厄介事になりかねない。俺はそっと逃げ出すことにした。

 だがその時、物音がした。

 慌てて俺は身を潜め、息を殺した。

 見張りの彼奴等が反応したのは別の男達だった。


 「遅かったな。」

 「あぁ。取引のついでにいいのを見つけてな。ほらこれ見ろよ!」


 男が布でぐるぐる巻になっていたものを解いた。


 「こりゃエルフの子供じゃねえか!」

 「あぁ。しかも見てみろ!」

 「うほっ!此奴、耳の先が丸まってない!初めてみた!これが純正のエルフか!」

 「あぁ!俺も見るのは初めてだ!しかも此奴、言葉が通じない時があった!もしかしたらハイの血かもしれない!」

 「いい時に手に入れたな!これなら失態もパーじゃねえか!」

 「失態?何かあったのか?」

 「あぁ。魔法が使える子供を見つけたらしいんだが、取り逃したみてぇだ。死人も出てる。」

 「しょうがねぇな。まぁ、良い奴取れたし、奴隷じゃなくて性奴隷として売ろうぜ!」

 「あぁ。ブーケルマ子爵に良い値で買ってもらおう!」


 そう言って中に仲間は入っていった。


 …ハイノチ? 何だそれ…? ブーケルマ子爵…人身売買に関与してるのか…今度誰かに聞くか…。


 俺は子供には悪いが、その場を離れることにした。


 俺一人が助けに行ったところで、できる事なんて限られてる。

 俺には家族の元に帰るというミッションがあるんだ。悪いね。


 そう言って歩き出した時、ポキッという音が静寂の中に響いた。

 …もしかして、やったか…?


 「…何の音だ…?」


 見張りの男が此方に近づいてきた。

 俺は慌てて身を隠す。


 「…ボスから言われてんだよ…音がした時、5秒以内に別の音がしなければ、それは知能を持った生き物だとね。」


 …は?!なんつー教えだ!そんな適当な教え信じるなよ?!


 「そんな時は、試しに魔法を撃てと言われてんだよ!水よ!球となりて敵を撃て!ウォーターボール!」


 俺はとっさに姿を現し避けた。

 それと同時に俺がいたところの地面に跡ができた。


 「斬り込んでこないから前衛ではないと思ったが、ガキだったのか。」

 「チッ!」


 最悪だ!関わりたくなかったのに!


 「俺たちの情報は重要機密だ。知った奴が生きて帰れると思うなよ?」

 「俺はやる事があるんだ。見逃してくれないか?」

 「ガキのくせして肝が座ってやがる。」

 「そりゃどうもっ!」


 そう言って俺はウォーターボールを発射した。


 「うぉっ!」

 「ちっ!何で当たんねぇんだよ!」


 俺は直ぐに逃走を始めた。


 「お前か!彼奴等の言ってた魔法が使える子供ってのは!」


 そう言ってやつは胸から何かを出し吹いた。

 ピーッ…と高い音が森に響く。

 多分集合の合図だ!

 急がなきゃ!


 俺はひたすらに走った。だが、たかが5歳児の体力。直ぐに追いつかれた。

 だが、予想外だったのは、何故か俺が走った先がさっきの場所に近しい所に戻ってきていたことだ。


 「え?!なんで?!」


 月の方向とかが確認できなかったから知らぬ間に戻ってきたのかもしれない。

 俺は挟まれた。


 「ハハハ!追い詰めたぜ!小僧!」


 俺が逃げる道はない。体力の限界も近い。

 最も現実的なのはとりあえず休むこと。

 休むのに一番手っ取り早いのは有り余ってる魔力の全てを使って彼奴等の拠点を奪うこと。


 「つ〜か〜ま〜ぇ゙!」


 俺を捕まえようとした奴はウォーターボールで顔を吹き飛ばされた。


 「何だ今の?!」

 「詠唱破棄?!」


 生きる為にはこれしかない。

 今人を殺したけど、罪悪感がない。

 相手が犯罪者だとわかってるからだろうか。

 …でも、ちょうどいい。

 俺だってこいつらのせいで皆と離れちゃったんだ。

 だから、ここで全員殺す。

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