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第4話 大学校 魔法の授業 その2

ヴィッセンスブルク大学校 24号館 202号教室

- 第6紀 363年3月12日(土曜日)2刻



「やはり,杖ですね!三方法印はとても難しいので,魔法補助具である杖は魔法使いの必須アイテムです.今更ですが,杖の使い方を一から説明します.

杖は重心の部分に表に4〜7箇所,裏に3箇所の凹みがあります.この凹みは魔力を流す場所になります.どの窪みから魔力を流すかで,杖の機能が変わります.要は,笛と同じです.穴の押さえ方で音色が変わるようなものです.組み合わせで複数の機能を杖に仕込めますが,ただ,杖はそれなりに重たいので,親指と小指の位置だけとかは,とても使いにくいです.欲張って,全種類を仕込んでもいいのですが,まあ,使えないです.」


「杖を使うときは,普通,左手掌握法印で杖に“接続“します.空いている右手は杖の上部にある複数の“輪“を回したり,上下に動かしたりするのに使います.この輪を使って,方向,距離,範囲などを三方法印と同じ原理で制御します.しかも,難しい調整は杖がやってくれるので,簡単に実現できます.簡単と言っても,楽器の笛を上手に吹けるようになるくらいは難しいです.使いこなすには毎日の練習が必要です.」


「残念なことに,杖の製法も“アラグニア大消失”で多くが失われ,現在では教科書に載っているような初歩的な5種類の製法しか残っていません.よって,旧アラグニア魔導王朝時代に作られた高性能な杖は持っているだけで,マギアスのステータスとなります.購入しようにも家よりも高い価格になっています.特に,有名なマギアスが作ったものは,大豪邸よりも高いです.」

リエリとアンジェはエリーの持っている“マギウス・ウル・マギアス”が作った“アール君“を見つめる.

「あげないよっ!」



ヴィッセンスブルク大学校 24号館 202号教室

- 第6紀 363年3月47日(土曜日)2刻



「魔法を自分から離れた目標に発動させるためには,“魔法領域(マナレギオン)”を使います.また,範囲魔法を使うためにも魔法領域を使います.魔法を上手に使うという意味でも,魔法領域の制御は大切です.

魔法領域は自分の宿魂晶を中心に球を形作ります.例えば,賢者級6位の魔法使いなら30種類,つまり,第1領域から第30領域が使えます.魔法領域の大きさは変形していなければ,大きさが決まっています.第1領域は一番小さく半径225ナノメルテで,第30領域が半径3150メルテです.覚えやすい第20領域が半径1メルテです.と言うか,20領域の大きさが半径1メルテと定義されています.ドワーフたちは神話時代のドワーフ王,ゲオルク王の最愛の夫人,メルテ夫人の身長として定義されているというでしょうけども.」


「さて,大きさが決まっているので,よく使う魔法領域は21の2.2メルテ,22の5メルテ,23の11メルテ,24の25メルテ,25の56メルテ,26の125メルテ,27の280メルテくらいでしょうか.後,0.2メルテの18領域は皆さん【頭部安全(ズィヒャーハイツ)領域(ベライヒ)】魔法を展開していますよね.これも必須クラスの魔法です.距離が遠くなると必要マナと消費マナが増えるので,あまり使われていません.距離が短い魔法領域は頭の中が範囲になります.これも使えない領域と言うわけではなく,3種類の方法で,有効利用できます.」


「1つ目が領域内で領域を移動させる方法です.例えば,第15領域は18ミリメルテですが,これを第22領域に乗せると半径5メルテ範囲内で好きな位置に移動させることができます.手に持っている魔道具に魔力を与えたり,小さな範囲で範囲魔法を発動できたりします.魔道具職人たちがこのような精密な魔法を使って魔道具を作成しています.」


「2つ目が“自己(マイン)領域(レギオン)融合(フジオン)”です.魔法領域は宿魂晶を中心に形成されますが,自分の体,正確には,血液が循環している範囲を“宿魂晶”と等価になるように,マナを血液に循環させて“血流(ブルート)昇華(ズプリマチオン)”して,自分の体の表面から人の形に魔法領域を展開できます.これによって距離の短い魔法領域を体外に出すことができます.ただ,髪の毛は血が流れていませんから,この方法で第17領域の9ミリメルテ範囲の【(フォイァー)(シュティン)】魔法を使って炎の中に入ると,髪の毛の長さが9ミリメルテになりますね.残念です.」


「3つ目が“混成(ヒブリト)魔法(マナ)領域(レギオン)”です.魔法領域は(プラーナ)価を帯びています.つまり,プラーナ極,ノイトルーナ極,ネグリーナ極のどれかの極にチャージされています.例えば,小さい領域をネグリーナ極にチャージさせて,大きい領域をプラーナ極にチャージさせて,2つの魔法領域を混成します.すると,大きさが平均された水滴型の領域が前後に2つできます.変な形ですし方向性が出てきて,しかも前後で違う極になり使いにくいところもありますが,こうして,複数の領域の大きさを平均化できるのです.

これを積極的に使っているのが,飛行箒です.箒が飛ぶ原理はこの極の違う前後の領域を利用しているのです.混成魔法領域を使って,箒なしで空を飛べますがやってはいけません.失敗すると落ちて星になりますよ.」

その時にはすでに,エリーは完璧な領域制御で宙に浮いていた.

「…エインズワースさん.あなたでも,3メルテ以上高く飛んだらいけませんよ.万が一のことがあると,私の首が飛びますからね.」

「先生,箒の代わりに,杖で安全に空飛べそうです.」

「…後で私の研究室に来なさい.杖に仕込む魔法陣をみてあげましょう.」

「いいなぁ. わたしも 箒 なしで, 自由に 空を 飛びたい.」

「フォレシガールさん,あなたは一番やってはいけない人ですよ!」

「「「ハハハ.」」」

リエリは教室の皆に笑われ,真っ赤になっていた.先生の言いようはひどいが,どんくさいリエリがやってはいけないのは確かである.



ヴィッセンスブルク大学校 24号館 202号教室

- 第6紀 363年3月62日(土曜日)2刻



「魔法領域は排他(アウスシュルス)(ゲゼッツ)が働いており,特殊な方法を用いなければ,他人の魔法領域内に自分の魔法領域を作ることができません.そのため,マギアス同士が近い距離にいると魔法領域は弾きあって,変形します.ただし,魔法領域は数字の小さい,つまり,半径の小さい領域の方が強いので,第30領域で第24領域に勝つことはできません.この場合,第30領域の方が大きく変形させられてしまいます.このように…」


「さて,魔法領域は丸いままでは使いにくいです.そこで変形します.球以外に,いろいろな形に変形できます.楕円球,円柱,円錐,平面などです.これも三方法印でもできますが,杖でやります.これも皆さんやってみてください.領域に領域(ベロイヒツング)発光(ベライヒ)】や【領域内(ファービゲ)空気(ルフト)着色(イム ゲビート)】魔法を使うとわかりやすいです.」

エリーは球と大きな楕円球,細くて長い楕円球を4つ作って,それを人型に組み上げ,その魔法領域人形を器用に動かしていた.上手に歩いて見せて,その後くるくる回ってダンスをさせていた.リエリも真似をして,人形を作るところまでは簡単だったのだが,歩かせるのは難しい.かろうじて,右手を振る動きができたぐらいであった.


「エインズワースさん,面白いことをしていますね.残り時間もわずかですので,他の皆さんも人形を作って動かしてみましょう.」

「おままごとじゃないんだし.」と,男子生徒が言った.

4人は練習の成果として,踊るエリーをリエリとアンジェ,クロエで手拍子する人形劇をできるようになっていた.授業時間が終わると,

「オレ,なめてたよ.何であんなことができるんだ.人形を作るのがやっとだぞ.動かそうとすると分解する.」

「私,脳が焼き切れそう.もうダメ.」

皆,頭を使いすぎており,次の昼からの枠の授業ではエリーを除く全員が,魂が半分くらい口から出ているような顔で先生の話を聞いていた.いや,聞こえているだけで,脳が情報を受け付けなかった.



ヴィッセンスブルク大学校 24号館 202号教室

- 第6紀 363年4月40日(土曜日)2刻



「“五星魔法”にはいろいろな魔法があります.旧アラグニア魔導王朝時代には累計2億種類の魔法が発明もしくは発見されたと言われています.アラグニア大消失によって,多くの魔法が失われただけでなく,魔法がなぜ発動するかと言う基本理論さえ失われました.現在ではなぜ魔法が発動するかわからないまま,正しい手順を踏めば,確実に魔法が使えるので,しぶしぶそれに甘んじている状態にあります.」


「魔法の発動手順はまず魔法陣を用意します.魔法陣の用意の仕方は別の機会にお話しします.用意した魔法陣と自分のマナ伝達系を接続します.法印や魔法領域を使用して,どこで,どれくらいの範囲で魔法を発動するかを指定します.それから,魔法陣にマナを充てんすると,目標に魔法が発動します.」


「この時,魔法を発動させるために必要なマナと消費されるマナは大きく違います.例えば,【純水(ヴァサー)生成(エルツォイゲン)】魔法なら,発動させるために必要なマナは1.3Gマナエルグ*ですが,水を生成した後に消費されているマナはわずか93Kマナエルグです.このように必要なマナは多いですが,実際に減るマナはわずかです.

例えるなら,とても高い山の向こうに恋人がいたとします.普通なら歩いて山を超えることはとても大変ですが,高い山を越えるための脚力を持ってさえいれば,魔法を使えば山をすり抜けて,恋人の元まで歩いていけるようなものです.実際に山越えするだけの力が必要ですけど,楽をして行ける.それが魔法です.

魔法理論の学者たちは“エネルギー”とかなんとかいう謎の概念を持ってきて説明しますが,壁守育成課程ではそんな難しい概念は必要ないです.必要マナと消費マナがあることを理解しておくことが必要です.」


「当たり前ですが,魔法を使いすぎると自分の保有マナが減ります.すると,自分の保有マナが必要マナより少なくなるとその魔法が発動しなくなります.これを“レベルブレイク”と言います.

魔法を発動させるための必要マナは段階があって,これをレベルの低い方から第1階梯,第2階梯,第3階梯と順に必要マナが増え,階梯が上がるにつれて急激に増えて行きます.歴史的に見て,人類種は第35階梯を使用できる魔法使いが最高位になります.つまり,賢者級1位の魔法使いになります.

神話時代後期から第2紀に実在していたと考えられている東方エルフの始祖ハイエルフ姫ブランネージュや,旧アラグニア魔導王朝,最後の女帝“白のアリエル”など有史上,片手で数えられるほどしかいません.そして,現在の第6紀に至っては,最高位が現エルフ朝の女王陛下で,賢者級3位が一人だけです.

主席占星術師は過去の記録と比較しても,近年着々と生まれてくるマギアス魔法使いが減ってきていると主張しています.それが真実なのか知りませんが,だとすると壁守の責任はだんだんと重たくなってくると思います.まだ,その兆候を私は感じていません.」


「話がそれましたが,レベルブレイクの中でも注意しないといけないレベルブレイクがあります.それは賢者級から術者級,術者級から一般級,一般級から市民級にレベルブレイクは非常に危険です.これを起こすと気を失うなどして,強い精神的なダメージを受け,しばらく精神的に不安定になり行動に支障が起こることが多いです.このレベルブレイクのことを特別に“クラスブレイク”と呼ぶことがあります.問題は賢者級6位や術者級6位など,6位のマギアスはクラスブレイクまでマナの余力が少ないので,注意が必要なことです.この制約により,6位の人はマナ消費量の自己管理がとても大切になります.」


「魔晶石を使って自分の保有マナを一時的に上げることができます.必要マナの足りない分を魔晶石で代替できるわけです.この場合,地位が1位の人は上のクラスの魔法を使えます.例えば,術者級1位の人は規格1号魔晶石を使って賢者級6位の魔法を使えるわけです.この場合も,魔晶石を自分から分離する際に,注意しないとクラスブレイクを起こします.これは練習が必要です.壁守の必須魔法で賢者級の魔法が多くありますので,注意してください.」




ヴィッセンスブルク大学校 24号館 202号教室

- 第6紀 363年5月38日(土曜日)2刻



「魔法陣の準備の方法はいろいろありますが,魔導書,杖,そして,魔道具のいずれかで準備するのが,一般的です.一つずつ確認してみましょう.」


「やはり,メインは魔導書です.魔導書は魔法陣が記載された魔導具で,使うときは受掌法印で使うように作られています.左手で持つように作られていることが一般的で,使いたい魔法陣が描かれている左のページを開いて親指で本の下の部分を押さえて,親指から球状にマナを出し,魔法陣を仮励起します.

魔導書の紙は,表側はマナに馴染んで,裏側はマナを弾くような特殊な紙で作られていますので,ページを開けて励起するとそのページの魔法陣だけが励起されるようになっています.その後,人差し指,中指,薬指で,ハードカバーに仕込まれている【魔法陣転記(ウムシュライベン)】魔法を発動させて,地面もしくは空中に魔導書の魔法陣を転記します.その後は,魔導書の底部に仕込まれている本励起用の魔導回路か杖を使って魔法陣を発動させます.

プロセスが多いので遅いですし,【魔法陣転記(ウムシュライベン)】に余分にマナが必要と言うデメリットがありますが,小さい本にたくさんの魔法を持っていけるので臨機応変に対応ができるメリットがあります.右側のページに解説が書けるので,それも大変便利です.

なお,【魔法陣転記(ウムシュライベン)】を使わずに魔法を発動すると,魔法は発動しますが,魔導書は燃えます.これを利用したのが“スクロール”です.つまり,一回利用の魔導書です.」


「杖は重心部分に親指用窪み3つと,他の指用の窪みが4〜7で,5つのものが多いです.組み合わせで登録すると100種類弱登録できるのですが,そんなにも覚えられないので,30くらいの魔法を登録していますよね?皆さんはどうしていますか?」

「わたしも使いにくいから51種類しか登録してないよ.」

「わたくしは無難に33種類ですの.」

「わたし,まだ 【目覚まし(アウフヴァヘン)】 魔法 しか 登録して ないよ.」

「「えっ?」…杖が目覚まし時計だよ.」

「それはどうなんですの?!」

「ふふふ,もうリエリったら!」


「魔導具は数種類,ほとんどは,1種類の魔法を発動させる専用の道具です.簡単ですし,発動が速いですが,たくさん数を持って運べないのがデメリットです.魔道具を購入するために,多額のお金が必要なのもデメリットです.魔法使いローブや三角帽も魔道具です.これらにはそれぞれ【物理絶対防御(アンキリア)】と【魔法障壁(ナマバリーレ)】,【頭部安全(ズィヒャーハイツ)領域(ベライヒ)】が付与されているのが当たり前ですね.」





*)マナエルグ : マナのエネルギー単位.ゲームで言うMPマジックポイントのこと.魔法発動に必要なマナエルグと実際に消費されるマナエルグは桁数が大きく異なる.1000グランのものを1メルテ持ち上げると744マナエルグ消費される.1マナエルグより細かい単位でマナを取り出すことができない.


*) 合谷(ごうこく):親指のつけにある経穴.



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