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第1話 入学式で二人は出会い

新生アラグニア王国 ヴィッセンスブルク大学校 廊下

- 第6紀 363年2月1日(火曜日)5刻



「おまえ,ハーフトールマンだな.気持ち悪いんだよ.」

今日は大学校の入学式で,一通りの全体説明と履修過程ごとの専攻の説明が終わり,とても広い校内のうち,これからよく行く教室を案内されている最中だったが,ガブリエリナはいきなりエルフの男子生徒3人につかまり,皆が曲がった方向と逆の方向に連れていかれ,死角になる柱の裏で絡まれた.


“ハーフトールマン”とは,エルフに半分トールマンの血が混じっているエルフの混血のことである.エルフの3人から見れば,そういうことだ.逆に,トールマンの立場から見れば,一般的に言う“ハーフエルフ”のことである.


「あ,あの  わ,わたし…」

突然のことで,完全にパニックになっていたし,元々,こういうの目に合うのは苦手だった.どうしたらいいのかわからず,ちゃんと話すことすらできない.リエリは元々,知らない人と話すのも苦手だ.それに,元々単語単語でぶつぶつと一区切りする特徴的な話し方をしていた.


「ちゃんとしゃべることすらできないのか,半端者が.」

いかにもエルフらしい,金髪,アーモンド形の大きな目,金色の瞳,長い耳,きめの細かいしっとり美しい肌,そして,完璧なバランスの顔つき,非の打ち所がない美貌を持った男子生徒だった.


対するガブリエリナは魔法で髪の毛を明るい花紺に染め,長い髪の毛をおさげにして,三日月の髪留めで止めており,前髪で右目を隠している.左目はエルフと同じ金の瞳だが,髪の毛で隠している右目はトールマンにありがちな灰色の瞳なのだ.耳は完全にエルフ耳だし,パッと見はエルフにしか見えない.今は眉毛がハの字になっており,気が弱そうに見える.


しかし,トールマンから見れば,かなりの美少女に見えるのは間違いない.だが,エルフの男子生徒は気持ち悪いといった.エルフでありながら,エルフでないもの.ハーフエルフハーフトールマンをみて,まるで“不気味の谷”の谷底にあるものを見るような嫌悪感を抱いていたのだった.


(右目が 灰色 だから …ダメ なの?)

瞳変色アウゲアウゲンファーベ金色】魔法はガブリエリナの“魔法地位”では発動させることができないのである.瞳の色を赤色や青色などには変えられるのだが,金色だけはレベルが足りないのだ.金色は高貴なエルフにのみ許された特別な色ということなのだろうか.


「おい!なんとか,言えよ!」

ガブリエリナが何も言わないので,左にいた男子生徒が右手首を強く握り,腕を持ち上げた.

「ひいっ!」

ガブリエリナは怖くて,目に涙を浮かべていた.真ん中の男子生徒が右手で髪をかき上げて,静かな声で訪ねる.

「おまえ,ハーフトールマンなんだな?」

「…は,はい.」

「わかっているんだろうな? 半端者の分際で,エルフのふりをすることは許さない.いいか,ハーフトールマンはハーフトールマンらしく,エルフではないことをちゃんと皆にわからせて,決して高貴なエルフ族の名に泥を塗るようなことはするな.いいな?」

「…は,はい.」


「お前,おれたちの使いパシリにしてやってもいいんだぜ.」と,まだガブリエリナの手首を握っている男子生徒が下っ端感丸出しで言った.

(この人たち と,かかわりたく なんて ないよ.)

ガブリエリナは首を左右に振って,拒否する.


左にいた無口なエルフがひどく冷酷な目をして,ガブリエリナのおさげを強く引っ張る.そして,髪を止めていた三日月の髪留めがカラカラと音を立てて,廊下を転がる.

「いたい!」

エルフに嫌がらせをされたのは初めてではなかったが,こんなにも直接的な嫌がらせをされたのは初めてだったので,余りにもの怖さに涙がぽろぽろこぼれてきた.

「泣いてやがるぞ.」「ふっ.」


コツコツコツコツ.

誰かが廊下を歩いてくる足音が聞こえる.その人物は廊下に転がった三日月の髪留めを拾いあげる.そして,こちらに気づく.

「ちょっと!なにしているのかな?!」


ガブリエリナはその人物の青く澄んだきれいな瞳をとても印象強く感じた.それ以外はまるでどこにでもいるかのような普通の女の子だと,失礼ながらそう思った.

髪の毛は栗茶色,そして肌はとても色白である.だが,全体的に見れば,勝気な印象がある.


「ちっ,ハーフトールマンをしつけているところだ.他種族が邪魔をするな.」

「ふーん,あれだよね.エルフがハーフエルフハーフトールマンをいじめる,ってやつ.」

「だれなんだよ,お前!」

「わたし? わたしはエリザリーナ・エインズワース.賢者級第5位マギアス,ハーフエルダインハーフトールマンだよ. エルフが()()()()(),ハーフだよ.」

「エリザリーナ嬢,いじめているわけではない.教育的な躾だよ.」

「どう見ても,いじめているよね.泣いているよ.そうだよね?ハーフエルフハーフトールマンの女の子さん.」

「た,た,助けて くだ さい.」ガブリエリナは藁にもすがる気持ちでエリザリーナに助けを求めた.

「ほら.」

「ハーフエルダイン,だまれ!」と,下っ端エルフが握りこぶしを見せて威圧してくる.

「エルフがそんなことするのかな? ここは平和的な勝負だよね?」

「なら,おれと勝負しろ.ティルールローゼだ.」


“ティルールローゼ”とは,元々,旧アラグニア魔導王朝のエルフ魔法軍団が魔法戦闘の練習のために考案した,殺傷力のない魔法の空弾を撃つ合い,相手チームを全滅させるか,相手陣地を攻略するかを競う,基本は6対6のチーム競技である.空弾は相手に当たると淡い赤色に染まり,当てられたプレイヤーは殺されたことになって,退場する.もちろん,魔法防御盾があり,攻撃と防御の両立が必要である.マギアスの間では非常に人気のある競技になっているのだ.


「うん,いいよ.わたし強いから.」

「「「!」」」ガブリエリナも驚いた.

「おまえ,エルフをなめているのか?」

他種族がエルフに向かって,“強い”発言とか,ありえない.エルフを束ねているハイエルフを除けば,エルフは個でも種族的にも人類族最強であるとみなされている.少なくとも,第6紀まではそれが常識であった.

「今日,授業で使うティルールローゼのワンド(小杖)もらったよね?当然,今持ってるよね?それでやろう!」

エリザリーナはすごく楽しそうだ.

「ふん!吠え面をかくなよ!」



二人は狭い廊下を5メルテ離れて立ち,ワンド(小杖)を構える.

真ん中にいたイケメンエルフが合図をだす.

「コインが落ちたら,開始だ.いいな.」と,銅貨を放り投げる.

チャリーン!

下っ端ぽい発言を繰り返す男子エルフは,ワンド(小杖)を横に薙ぎ払い,【多弾空弾(ルフトバレット)×28】【小盾(クライナーシールド)】と,いきなり数で勝負に来た.魔法地位が高くないとできない技である.エリザリーナは左手を三方法印(フレミングの左手の法則の形)にして,きれいな半円を描くように下からまっすぐ上を向ける.そして,【遠距離高速(ラングストレッケン)空弾(ルフトバレット)】と,一発だけ撃ってきた.


バシッ.

「うごっ!」

「…な,何が起こった?!」

審判をしていたイケメンエルフは斜に構えて見ていたからか,どうしてこの結果になったか,まったく理解ができなかった.


下っ端エルフは空弾を額に被弾して,額のど真ん中に淡い赤色の着弾痕をつけて廊下に仰向けに倒れて,痛がって頭を押さえて悶えていた.エリザリーナに向けて撃たれたはずの魔法の空弾はすべて廊下の壁に当たり,白い魔導レンガ造りの廊下が28か所,淡い赤色に染まっていた.


「あちゃ~,入学式初日から廊下を真っ赤にしちゃったよ.さて,先生たちに見つからないうちに,とんずらしよう.あなたたちも逃げた方がいいよ.さあ,青髪の子,行くよ!ついてきて.」

と,ガブリエリナの手を引っ張って,連れ出してくれた.壁に付着した赤色は放置していればだんだんと色が消えていくのだが,見つかると小言を言われるのは間違いない.

(かっこ いい!)

イケメンエルフは唖然として口を開けたまま,その場から動けなかった.


ガブリエリナは何が起こったのかはっきりと見ていた.彼女の固有魔法【動体視認加速(リュックブレンデ)】によって,エリザリーナの撃った魔弾がエルフの【小盾(クライナー シールド)】に向かって真っすぐ進んでいたのに,小盾の直前でありえない軌道で小盾を回避し,そしてまっすぐ額に直撃した.普通の人が見たら魔弾が【小盾(クライナー シールド)】を貫通したように見えただろう.

そして,エリザリーナに向けられた28発の魔弾はエリザリーナに当たる直前に軌道を変え,まるでエリザリーナが打ち上げ花火の中心にいるような錯覚を覚えるほど,空弾がきれいな軌跡で広がっていった.


ガブリエリナはこれがエリザリーナの固有魔法なんだろうと,勘違いして理解した.固有魔法は一般的にその人の最高の秘密であり,よほどの関係でないと打ち明けたりしない.

「あ,ありがとう ござい ます.」

と,ガブリエリナはエリザリーナに丁寧にお礼を言った.


そのまま,教室案内の列に戻り,最後に第2食堂で教室紹介は終わりとなり解散となった.エリザリーナはせっかくなので,ガブリエリナを誘って,お茶をする.

「そういえば,名前を聞いてなかったよ.なんていうの?」

「わたし は,ガブリエリナ・フォレ シガール, 術者級 第1位 マギアス, ハーフエルフ ハーフ トールマン です.」

「ん?わたしに緊張しているのかな?」

「違います.わたし しゃべるの 下手で いつも こうやって しゃべるの です. さっきは 助けて くれて,ありがとう ございます. エリザリーナ さんは とても 強くて かっこいい です ね.わたし とても 感激 しました.」

「あはは,かっこいいだなんて,なんか恥ずかしいよ.そうそう,わたしのことは“エリー”って,呼んでくれたらいいよ.“ガブリエリナ”は,なんて呼べばいいかな? “ギャビィ”?それとも,“ガブリィ”かな?」

「初等 教育の ときは, みんなから “リエリ”って,呼ばれて ました. ガブリエリナは よくある 名前 だから, よく かぶって しまうので.」

「リエリかぁ~.響きがかわいいよね.じゃあ,わたしもそう呼ぶよ.」

「エリー さん,あの,わ,わたしの お友達に なって ください.」

「うん,これも運命な気がするし,いいよ.それと,“さん”づけはなくていいからね.」

「ありがとう エリー.」

(エリー, とても すてきな 人だね. わたし すごい 人と お友達に なれたの かも.)




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