表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/29

閑話 第5話 間違っているのはあなたです

エルフ朝デュモンド 褐色エルフ独立自治区 イルミンスールの森

- 第6紀 364年8月70日(火曜日)6刻



「おかしいわねぇ?魔人が2匹いるわぁ.青い気持ち悪いのと,黒角の魔人よぉ.」と,戦況を見ていたマリアンヌは言った.

森長(もりおさ),どっちに参戦しますか?」

「163対8なのよぅ.そのうちの2匹が魔人と言っても,私が参戦する必要あるぅ?」

(こいつはこう言う女だった.) と,エリザベートは思い,エリザベートも副指揮官として一緒に戦況を見守ることにした.しかし,戦況はどんどん悪化する.魔人を数の力で全く押せていなかった.青いのはすでに16体に分裂していた.


しかし,青い魔人は増えれば増えるほど,どんどん変な形や変な行動をするやつが増える.右手右足,左手左足,と両方の手足が同時に出て歩くぐらいならまだ許せる.両足でぴょんぴょん跳ぶやつ,人型を保てず変な形や丸い液滴になったり,ひどい個体は横に倒れたまま手足を動かして歩こうとしている.もちろん,チャンスと思って近づいたりしてはならない.近づいた瞬間に触手を伸ばされて,殺されてしまう.


もう一方の黒角の魔人はエルフ兵士の首をポンポンと切り落としていた.


「魔人は両方ともタチが悪いわぁ.はぁ,やっぱり私が参戦しないとダメみたいだわぁ.面倒だけれども,気持ち悪い青い方から殺そうかしら.あれはたぶん元々はブルーウーズね,魂を獲得して魔人に進化したやつよぅ.しかも,本体じゃないわねぇ.本体はたぶん魔族領から出てないわよ,あれらは分体よねぇ.分かれる数が多くなるにつれて段々と体の制御ができなくなってきているわぁ.」

「分体を各個撃破しますか?」

「本体じゃないのなら,ここにいるのをまとめてもたいしたことないわよぅ.」と,魔法を発動しようとする.しかし,突然魔法がキャンセルされる.

「えっ?」


マリアンヌは笑顔のまま,目つきだけは恐ろしく厳しい視線をして,状況を見つめる.頭の中でさっき起こったことを【全感覚自己(スパイヒャー)記憶閲覧(ヴィーダーゲーベン)】魔法を使って何が起こったのか再確認する.

「黒角の魔人の仕業かぁ~.」と,マリアンヌは明後日の方向に走り出す.

「ど,何処に行かれる?」エリザベートも追いかける.


「森長,何処に行かれる?何を考えている?ひとりで逃げるのですか!」

「うるさいわねぇ,違うに決まっているでしょ~.もぉ,黙って見てなさいよぅ.」

マリアンヌは黒角の魔人の“魔法をキャンセルする魔法”の範囲の外にまで一旦移動した.


【魔力励起第三形態,左手三方法印で第26領域を展開 体内発動法印で家族魔法に接続 第26領域を最大圧展開-第32階梯魔法 集団魅了(テンタチオン) 対象“ウーズ類” 行動“私の所に集まれ!” 連続発動-105Kマナエルグ/周秒消費】

マリアンヌは魔法領域を全力で展開して,黒角の魔人の魔法領域を押しのけた.つまり,魔法がキャンセルされる領域を押しのけ,自分の魔法を発動した.


そして,マリアンヌの魔法にかかった青い魔人は,突然,気持ち悪い動きが止まる.そして,人型をキープすることも忘れて,丸い元来の形になって,マリアンヌ目指して,ぴょんぴょんと跳ねて近づいてくる.


「森長,やつらがこっちに近寄って来ている!」

「そうよ~,私がココに呼んだのだものぉ.」

【右手接触法印でオークの木に接続 右手接触法印からからオークの木を経由して“イルミンスール魔法ライブラリ”に接続 種族契約により発動マナをイルミンスールの森から貸与-第34階梯魔法 アルブル・ドゥ・ランシェヌマンの檻 発動-11.3Gマナエルグ消費】

マリアンヌが触っていたオークの木がメリメリと音を立てて,木の檻を形成していく.マリアンヌに魅了されて近づいてきたウーズたちは“アルブル・ドゥ・ランシェヌマンの檻”を見た瞬間に自ら入って行く.この檻には敵意を持つものがなぜか中に入りたいと思う効果が付与されているのである.そして,檻の中に集められたウーズたちは合体し,どんどん大きさを増していく,木の檻もどんどん大きくなる.最後の1匹が入ると,檻は閉まり,ウーズを封じ込める.もちろん,一度中に入ると二度と出てくることはできないエルフの高位封印呪文である.ウーズが魔族語で何か叫んでいる.


「うふふ,ウーズちゃん,いい子ねぇ.このまま散り散りになっちゃいなさいよぉ.」

【左手三方法印で第21領域を檻内部に密接展開 右手接触法印からからオークの木を経由して“イルミンスール魔法ライブラリ”に接続 種族契約により発動マナをイルミンスールの森から貸与-第33階梯魔法 生命分解(アナリジィ)弱点解析(フィビレス) 発動-11.3Gマナエルグ消費,励起解除】

檻の内部に強い光が発し,ウーズは光を浴びてバラバラに分解されて消滅していく.その分解過程でこの魔人の弱点が解析されてイルミンスールに情報が蓄積される.ウーズが消えた後で,ウーズの焼け焦げたゴムの焼けたような嫌なにおいと,変な刺激臭がする.

「けほっ,けほっ.とっても臭いわぁ.」マリアンヌは手でパタパタする.

エリザベートはすでに鼻をつまんで,黙っている.それを見た,マリアンヌは嫌な顔をする.

「エリザベート,鼻を塞ぐ時間があるなら,【(ヴィント)】魔法で匂いを追いやってよぅ.」

「黙って見ておけとのことでしたので.」マリアンヌはさらに嫌な顔をして,その後,ふくれっ面をした.ふくれた顔はとてもかわいい.

「もういいわぁ.さて,もう一人の魔人もやっつけないといけないわぁ.行きましょう.あっちがどうなっているか心配よぉ.」



「あら!思ったよりも善戦しているのねぇ.」

こちらの戦場は首が切り離されたエルフの死体がたくさん転がっていた.もう一人の魔人,グシオニブブの方もエルフたちは相当苦戦していたものの,ようやく対策できつつあり,均衡状態になっていた.エルフの兵士9人が魔人とヅォークソーサラーを取り囲んでいる.もう,魔法が使えないことは全員が理解しており,武器と全力魔法領域展開で戦っていた.ヅォークソーサラーはすでに血だらけで,もう少しで討伐できそうだった.


「ははは,これを見て善戦しているとは,随分な勘違いですな,マダム.」

「まあ!魔人がエルフ語をしゃべったわぁ.でも,エルフ語の使い方が間違っているわ.私は未亡人だから,マダムでなくてマドモアゼルなのよぅ.」

【魔力励起,体内発動法印で家族魔法に接続―第30階梯魔法 思念波(アンドュクシオン)感情誘導(エモショネル) 対象“グシオニブブ“ 感情“私への興味“ 発動―14.4Mマナエルグ消費】

「森長,間違っているのはあなたです.」エリザベートは半目でツッコむ.マリアンヌはふざけているのではない.魔人が魔法にかかりやすくなるように,会話や動作などで巧みに誘導しているのだ.

「ははは,面白い方ですな.気に入りました.私は魔族軍 四魔殺の一人,中断の(インキターア)グシオニブブ.以後,お見知り置きを.あなたのお名前を聞いても?」

「なんか,気に入られちゃったわぁ.悠久の歴史の中で憎み合っているエルフと魔人なのに.うふふぅ,私はイルミンスールの森長(もりおさ),ハイエルフのマリアンヌ・ラ・ロシュよぅ.せっかくだからぁ,ちょっとお話しましょ〜.」

【再発動 思念波(アンドュクシオン)感情誘導(エモショネル) 対象“グシオニブブ“ 感情“私への好感“ 発動-14.4Mマナエルグ消費】

「なっ!」「森長様!」「お戯れがすぎます.」エルフ兵士たちが口々にマリアンヌを非難する.


「グシオニブブ,あなたって神様にすごく好かれているのねぇ.魔人の神様のことはよく知らないのだけれども.」

【再発動 思念波(アンドュクシオン)感情誘導(エモショネル) 対象“グシオニブブ” 感情“私への好意” 発動-14.4Mマナエルグ消費】

「この私が神に好かれていると? 魔神マシュトゥーラ様は民を愛さない神なのだが?」

「だってぇ,グシオニブブ.あなたは2つも固有魔法を使えるのでしょう?固有魔法を使えるものさえ少ないのに,一人で2つも持っているなんて,神様にすごく好かれているとしか思えないものぉ.」

【再発動 思念波(アンドュクシオン)感情誘導(エモショネル) 対象“グシオニブブ” 感情“私への信頼” 発動-21.6Mマナエルグ消費】

「何をおっしゃる.意味がわからないのだが?」

(あれ? 2つ持っていること,自慢しないのかしら?)

「だってぇ,魔法をキャンセルする魔法と,首ちょんぱする魔法,両方とも固有魔法よねぇ?」

【再発動 思念波(アンドュクシオン)感情誘導(エモショネル) 対象“グシオニブブ” 感情“話したい気持ち” 発動-14.4Mマナエルグ消費】

「あ,ああ,そうだな.見たらわかるのか.さすがはハイエルフだな.私は2つの固有魔法を持っているぞ.私の二つ名になっている【魔法中断(インキターア)】と,もう一つは【弱点(バラール)切断(マカート アサハラ)】だな.」

【再発動 思念波(アンドュクシオン)感情誘導(エモショネル) 対象“グシオニブブ” 感情“戦意喪失” 発動-21.6Mマナエルグ発動】


「あなたは災厄級つまり賢者級の第4位の地位なのねぇ.魔法をキャンセルする魔法は第32階梯魔法で,自力だけで最大125メルテまで効果範囲にできるのねぇ.

この魔法にも欠点があるわぁ.術者の体内で完結する魔法はキャンセルできないのよぉ.【加速(ベシュロイニグング)】とかの魔法ね.

ということは空間を介さず接触して発動させる魔法もキャンセルできないわねぇ.そこまで近づく前にあなたに殺されちゃうものねぇ.」


マナの流れによる”魔導現象”はすべてキャンセルされるが,もちろん,物理,光や音など,そして,思念波などの“魔導現象”でないものはキャンセルされない.

「ほほう.」


「そうそう,首ちょんぱの魔法は私間近で見てないのよ.私見たいわぁ.ほら,このヅォークソーサラーにかけてみてよぅ.」

【再発動 思念波(アンドュクシオン)感情誘導(エモショネル) 対象“グシオニブブ” 感情“意見同意” 発動-21.6Mマナエルグ発動】

「「「「!」」」」エルフ兵士たちはこの段階になって,マリアンヌが何をしているのかを理解した.

「そうか,見たいのか.おお,いいぞ.」バチンと,指を鳴らす.

「ブヒッ!」

ヅォークソーサラーの首が飛び,血を吹き出しながら,後ろに倒れる.

「わぁ!すごいわぁ.その魔法は単純な物理切断魔法なのねぇ.その生物の最も細く致命的な部分を切断するように,勝手に照準するようになっているのねぇ.とても便利な魔法ねぇ.

だから,今,生き残っているエルフの兵士が全員,首にゴルゲット*をしているのねぇ.その魔法,ゴルゲットで防御されちゃうんだぁ.」


【再発動 思念波(アンドュクシオン)感情誘導(エモショネル) 対象“グシオニブブ” 感情“意気消沈” 発動-14.4Mマナエルグ発動】

エルフ兵士たちがゾッとして,首のゴルゲットがちゃんとあるか確認したり,正しい位置に直したりしていた.

「そうだな.そうらしい.今日初めて知ったんだ.どうしようかと思っていたんだ.」


「その魔法って,グシオニブブあなたの首も落とせるのぉ?」

【再発動 思念波(アンドュクシオン)感情誘導(エモショネル) 対象“グシオニブブ” 感情“思考放棄” 発動-14.4Mマナエルグ発動】

「そんなこと,やったことないぞ.」

「私どうなるか知りたいわぁ.やってみてよぉ.」

「ああ.じゃあ,やってみるぞ.」パチン,指を鳴らすと,バキンと魔法がキャンセルされる.

「やっぱり,できないのねぇ.その魔法をカウンタされたら困るものねぇ.」と,これまでの会話をしながらゆっくりとグシオニブブのそばに近づいていたマリアンヌはおっとりさを殴り捨てて,すばやく両手の親指の付け根をグシオニブブのこめかみに当て,


【体内発動法印で家族魔法に接続 両手接触法印からグシオニブブの魂に接続―第31階梯魔法 絶対精神干渉“私への(エータルネル)恋慕(エメ モア)“ 発動―7.2Mマナエルグ消費】と,空間を介さず,直接魔法を行使する.

「何!」それと同時に感情誘導が解けたグシオニブブが指を鳴らす.パチン.

「あっ!」

マリアンヌの首が飛ぶ.マリアンヌの魔法は1周秒間に合わなかった.しかし,

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」と,グシオニブブは絶叫する.


エリザベートは驚愕した.グシオニブブが号泣しているのである.

「わ,私はなぜ,愛しいマリアンヌを殺してしまったのだ.私はバカなのか.世界で一番素敵な女性何だぞ.青い太陽シーリスにように絢爛で,輝く月エリスのように妖艶で.ユーモアと知性を兼ねたやさしい母のようでいて,乙女のような清純さを兼ね備えた女性だったのに,なんで,なんでこんなことをしてしまったのだ.あああーっ.…そうだ.ガミジナガルだ.あいつなら,なんとかできるはずだ.ビフロザルドっ!転移だ!」と,そう言い残し,マリアンヌの遺体,首と胴体両方を持って,影の中に吸い込まれるように消えて行った.


この時点で,イルミンスールの森で唯一グシオニブブを一人で討伐できる実力があったマリアンヌは惜しくも敗れさった.

残されたエリザベートとエルフの兵士たちは呆然と立ち尽くしていた.


「…なあ,森長はそういう人物だったのか?」と,エリザベートはグシオニブブが言ったマリアンヌへの評価について,不謹慎にも隣にいたエルフ兵士に尋ねてしまった.エルフ兵士はいろいろ重たすぎて答えることができなかった.





*)ゴルゲット : 首を守る輪っかの形の防具.



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ