11 ソフィア皇妃の話
※ブレイドが、ソフィアの生い立ちについてアイリスに話しています。
それを簡潔にまとめている感じで読んでいただけるとありがたいです。
ゼイン陛下の妻――ソフィア皇妃は、ラドリス帝国より南西にあるペリア公国で生まれ育った。
ペリア公国は小国の一つであるが、その国の領地に魔法石や水晶などの宝石の採掘できる洞窟を所有していたことにより、資源採掘国として貿易で栄えていた。
魔法石などが採掘できる場所は、"魔素"といわれる空気中に漂う魔力のようなものの濃度が高いため、それに耐性のある種族しか居住することができない。
そのため、ぺリア公国は貿易で栄えていても、大国のように民を抱えることが出来ず、小国でありながら大国と変わらぬ財力を持っている、異例の国だった。
また、この国にはもう一つ、異例があった。
天界で女神に使役していた蛇の末裔とされている一族――ヘスス族。
ペリア公国の領地に古くから住んでいるこの民族。
その一族のみが持つとされている特殊な魔法があった。
"創造"
魔法石に魔力を流し込み、自在に加工、変形させ、さらに特殊な能力を付与することのできる魔法。
その昔、このヘスス族のみが使える"創造"は、この世界の者たちに重宝されていた。
そのため、彼らを支配しようと考える者たちも多く存在したという。
ヘスス族は、魔素への耐性は持っていたが、"創造魔法以外の魔法は一切使えない"、という欠点を持っていた。
唯一できたのは、人の姿になることだけ。しかもそれも限られた者だけしかできなかった。
そのため、彼らを保護する目的でペリア公国は彼らの土地を統治していた、・・・筈だった。
それが、長い年月をかけて形が変わっていき、ペリア公国は、ヘスス族を他国へ派遣し滞在させることで利益を生む"道具"として扱い始めた。
そうやって他国に派遣ばかりしていれば、自ずとヘスス族の人口は減っていく。
それに反比例するように世界の加工技術が上昇していき、自国に滞在させていたヘスス族をペリア公国に返還する国が増えていった。
その頃には、ヘスス族の高齢化が進んでしまっていたが、そんな中、数十年ぶりにヘスス族で子供が生まれた。
それが、ソフィアだった。
ヘスス族の族長は、自分たちの血が途絶えることを恐れ、ペリア公国にソフィアを娶るように頼み込んだが、国王はそれを拒否した。
「私の周りには使えるものしか置かない主義だ。
領地の一部としてお前たちを守っているだけ有難いと思え。」
国王は、そう言い放った・・・。
しかし、ヘスス族の血が途絶えてしまうことを恐れていたのは、ヘスス族だけではなかった。
多種族国家――ラドリス帝国。
ラドリス帝国を統治する竜族に、稀に生まれる黒竜。
黒竜は、この世界の中で一番魔力を持つとされている竜族の中でも、さらに多くの魔力を持って生まれてくる。
帝国に黒竜が生まれる度、竜族はヘスス族の元へ赴き、彼らの持つ"創造"の魔法で黒竜の魔力を抑えるための"腕輪"を作ってもらっていた。
この世界に、魔力を抑えるための拘束具などは存在するが、黒竜の強大な魔力を抑えられるほどの物はない。拘束具が黒竜の魔力を耐えきれず、すぐに壊れてしまう。
そのため、黒竜の強大な魔力を抑えるのに、ヘスス族の能力は欠かせなかった。
「お前たちが不要だと切り捨てるのなら、我が国がその娘を貰い受ける。」
先皇帝は、ペリア公国とヘスス族の族長にそう進言し、ラドリス帝国にソフィアを招き入れた。
最初は、下級貴族の者と婚約させられていたソフィア。
ヘスス族は、貴族の階級も持たない、小国の中のさらに小さな弱い民族出身。
それは、当然の流れだった。
しかし、当時皇太子だったゼインは、
ソフィアと出会い、恋に落ちてしまった・・・。
ゼインは、ソフィアに何度も求婚し続けた。
それはもう、とにかく凄かったらしい、ということだけしか知らない。
(※ブレイドはそれ以上の話を聞かされなかった。)
しかし、ラドリス帝国皇太子であるゼインと、ヘスス族のソフィアでは身分が違いすぎたため、周りは二人の婚約に猛反対したが、それでもゼインは諦めなかった。
彼の熱意に、とうとう先皇帝が折れた。
天界で女神に使役していた蛇の末裔とされている一族の娘。血統としては悪くない。
それに、ソフィアが成人をする頃になると、ヘスス族のほとんどの者が天寿を全うしていたことにより、一族断絶が目前に迫っていたため、"ゼインとソフィアの子供に創造魔法が遺伝するのではないか"、という期待を込めて、先皇帝は婚約を承諾した。
そして、ソフィアが成人を迎えると同時に婚姻し、皇太子妃となった。
丁度その頃、ヘスス族の断絶が目前に迫り始め、焦り始めた者たちがいた。
小国と人族たちだ。
この世界にある物は、
機械や道具に魔法石を入れて機能させる物と、
機械や道具に魔力を流し込んで使う物がある。
魔力を持たない人族や、魔力量の少ない種族の者たちは、魔法石を入れて機能させる物しか使えず、彼らが生活していくには魔法石が必要不可欠。
しかし、魔法石は高価な物であるため、小国や人族にとって高値で仕入れ購入しなければならない魔法石の出費は痛手だった。
そのため、ヘスス族の"創造"で作り出す道具は、小国や人族たちから重宝されていた。
しかし、小国に滞在させていたヘスス族の寿命が尽きた後、ペリア公国に次の派遣を尋ねると、ペリア公国からヘスス族の断絶の話をされる。
それで焦った小国は、ラドリス帝国にいるソフィアに目を付けた。
"ラドリス帝国と協定を結び財政援助してほしい"、という国なら双方に利益のある形で協定を結んだ。
しかし、小国の中には、"ソフィアを派遣してほしい"、"婚姻したい"という国もあったが、ソフィアはラドリス帝国の皇太子妃。それは無理な話だった。
和解できずに経済摩擦から戦争へと発展し、強制的にラドリス帝国領となる国も出てきた。
それは、先皇帝の時代からゼイン皇帝の時代に入ってもなお、続いた。
その光景に、ソフィアは嘆き悲しむ日々を送っていた。
―――そんな最中、ソフィアが懐妊した。
帝国中が、彼女の懐妊を祝福した。
そして世界中が注目した。
ヘスス族の生き残りの子供。
彼女の能力を受け継ぐならば、この争いは終焉へと向かうことができる。
その期待の眼差しを一身に受けて生まれた子供。
それが、黒竜――ブレイドだった・・・。
いつもより短めです。すみません!キリの良いところで区切らせていただきました。
ゼインの猛アタックのところ、本当はもっと掘り下げたいところですが、ブレイドが話している、という設定で11話を書いていますので、ブレイドが詳しく知ってたら怖いかも、と思って諦めました。
いつか親世代の話、書きたいな・・・。
この連載が終わったら、気が向いたら書くかも。親世代編。
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今回も私の拙い小説をお読みいただきありがとうございました。




