リーダー=損な役回り?若者の本音
かつて「リーダー」とは、組織やチームを率いる栄誉ある役職とされていた。だが現代の若者は、リーダー職に対してそうした魅力を感じにくくなっている。むしろ、「損な役回り」「責任だけが重いポジション」として避ける傾向すら強まっている。これは単なる甘えや責任回避ではなく、現代社会の構造的な変化と、若者世代の価値観の進化を反映した結果である。
まず、情報社会の進展により、若者は従来以上に「上の立場の現実」を冷静かつ客観的に観察できるようになった。SNSや匿名掲示板、企業評価サイトなどを通じて、管理職やリーダー層が過重な責任とストレスに晒されている実情は、日常的に共有されている。それに加えて、「責任だけが重く、権限が不十分」「評価されにくい割に叩かれやすい」といった職場環境が可視化され、リーダー職の実態が“割に合わない仕事”として認識されている。
また、成果主義とコスト削減が進む中で、リーダー層には「成果責任」は課せられる一方、「裁量」は減り続けている。現場ではプレイングマネージャーとして自ら業務をこなすことが求められ、部下の育成や戦略構築といった「本来のマネジメント業務」に時間を割く余裕すらない。このような役割の分裂は、若手社員に「管理職=心身をすり減らす消耗戦」という印象を植え付ける。
さらに、令和世代と呼ばれる若者たちは、「プライベートの充実」や「精神的な安定」を重視する傾向が強く、長時間労働や理不尽な上下関係を当たり前とする文化には強い違和感を持っている。そうした世代にとって、自己犠牲を前提とする旧来型のリーダー像は、魅力的に映らないのは当然ともいえる。
結論として、若者がリーダー職を避ける傾向は、彼らの意欲や能力が劣っているからではない。むしろ、社会構造のひずみや職場環境の歪みを敏感に察知し、それに合理的に対応している結果である。これは、若者の問題ではなく、時代に取り残された組織の構造的な課題なのだ。リーダー職を魅力あるものに再設計することこそが、企業がこれから取り組むべき喫緊の課題である。
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