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避けては通れない「構造の劣化」

―なぜ組織は変化できず、持続可能性を失うのか―


企業や社会制度が長期にわたって存続する過程で、必ず直面する問題がある。それが「構造の劣化」である。構造とは、単なる制度やシステムのことではなく、「役割分担」「評価基準」「文化」「意思決定の回路」など、人と組織の関係性を支える枠組みすべてを含む。


構造の劣化とは、時代や環境の変化に対して、内部の仕組みが適応できなくなる現象だ。見た目は従来のままだが、機能としてはすでに破綻し始めている。この章では、そのメカニズムを紐解き、論理的に問題の核心に迫る。


1. 成功体験の呪縛 ―「昔はうまくいった」思考の危険性


構造は、一度成功体験を得ると、それ自体が正しいものと信じ込まれやすい。特に、経済成長期や右肩上がりの時代に設計された制度は、当時の最適解であり、効率的かつ合理的に機能していた。


しかし、その成功が「普遍的な正解」であるかのように扱われることで、構造そのものが絶対化される。変化への柔軟性を失い、状況の変化に対応できない“化石化”が進行する。「変えることはリスク」と思考停止に陥ることで、構造は徐々に内側から腐食を始める。


2. 時代の変化が構造疲労を引き起こす


現代は、技術革新・人口動態・価値観・働き方・社会規範など、あらゆる側面で急速に変化している。これは、構造にとって「負荷の増大」と同義である。制度が本来想定していた人材像、人数規模、仕事のスピードが根本的に変化しているにもかかわらず、構造が更新されなければ「過去の器に未来の水を注ぐ」ような矛盾が生まれる。


このような状態は、いずれ破綻することが分かっていても、関係者が自分の任期や利益を優先して放置されがちである。やがては組織の慢性的疲労、若年層の離脱、リーダー不在、採用難といった、深刻な機能不全が顕在化する。


3. 負荷集中構造 ― 中間層・現場にしわ寄せが集まる設計ミス


構造の劣化が進むと、最も負荷がかかるのは、現場と中間管理職層である。設計時は機能していた指揮命令系統が、複雑化・形骸化することで意思伝達の速度が鈍り、責任の所在が不明確になる。リーダーはプレイヤーも兼任しながら部下のメンタルケアまで担い、現場は“やることが増えただけ”の改善なき改革に疲弊する。


構造が疲弊する中で、誰も責任を取らず、誰も改革に本気になれない。悪循環のなか、変革の旗を振る人材は孤立し、やがて組織は「現状維持」という名の緩慢な死を選ぶ。


4. 数値目標偏重がもたらす“仮想の健全性”


構造の劣化が進んでも、多くの組織では“数字上の健全性”が保たれているように見える。KPI、売上、業績などの数値目標が機能している限り、外部的には「問題がない」と判断される。


だがその実態は、現場の過剰労働、精神的消耗、品質の低下、離職率の増加といった“非数値的な損失”が進行しており、構造全体の持続可能性は深く侵食されている。つまり、数字で見えない部分にこそ、構造の腐食が蓄積していく。


5. “変化への恐怖”こそが最大の敵


構造を再設計することは、必ずしも破壊的な改革を意味しない。しかし、多くの組織において、“変えること”そのものへの恐怖が存在する。新しいアイデアは「リスク」とみなされ、従来のやり方を否定する行為として受け止められる。


そのため、合理的な構造改革が“異端”とされ、問題意識を持つ人材が組織から離れていくという逆転現象が生じる。最も守るべき人材が失われ、残されたのは「変化を拒否することに慣れた構造」だけになる。


結論:構造劣化は「自然現象」である


ここで重要なのは、構造の劣化を誰かの責任や怠慢と捉えるのではなく、それを“自然な現象”として捉える視点である。物理的な機械と同様、組織構造も「時間」「負荷」「変化」によって摩耗し、メンテナンスや再設計が必要になるのは当然の帰結である。


よって、問題は“構造が劣化すること”ではなく、“それを放置し、更新しないこと”にある。人間が歳を取るように、組織の構造も変化を前提に、成長と再設計を繰り返すことが求められている。無限螺旋構造的に見るならば、構造とは静的な「完成品」ではなく、常に変化し続ける“成長過程”そのものである。



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