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時間の始まりと終わり

作者: 浅賀ソルト

 友達の栞莉しおりが部屋に来て、「あー疲れた」とベッドにつっぷした。

 私はもごもごした声で「どうしたの?」と聞いた。

 栞莉は今日の相手が気持ち悪かったという話をして、私は適当に聞いていた。この状態だと話をいくら聞いても楽しい。

 1時間くらい聞いたつもりだった。時計を見たらだいたいそのくらいだった。

 愚痴を言いながら栞莉は皿の上に薬を出していって山盛りにしていた。山盛りにしたロキソニンと処方された鎮痛剤を混ぜたコップを写真に撮っている。

 SNSに上げながら口はずっと愚痴を続けていた。

 私はずっと相槌を打っている。

 別に頼まれたからって生でやらせるわけではないが、頼まずになんとか生でやろうとする奴や、金を払わずになんとかしようとする奴はなんとかならんか。

 こういう話は本当に多い。

 タダでやらせてとか本当に付き合わない?とか。

 私はもう半分寝ているけど、栞莉の愚痴は本当に分かるので、激しく同意しながら一緒に「分かるー」と言っていた。

 栞莉も錠剤を飲み干したあとのコップをSNSに上げながら、「付き合うわけねーだろ」と言っている。

 愚痴が始まって終わって、栞莉が横になってまた起きて、時間が23時くらいになって、有紀ゆうきが手に入れてくる薬の話になった。

「あれはどうやれば手に入るの?」

「本人の薬じゃないらしいよ」栞莉が言った。「知り合いに貰ってるんだって」

「ふーん」

 腰痛だか抜歯だか手術だか、そういうときに貰う薬をこつこつ溜めてるという話だった。

「あー」栞莉がなにか声を出した。

 いつのまにかテレビが消えていた。テレビの声を聞きながらトリップするのが好きなタイプもいるけど、栞莉はそうじゃなくて気がつくと消している。いつのまに消したのか、私は気づかなかった。

「そういえばお金払うから寝てくれって女の人に頼まれたことがあるんだけどさー」栞莉がもごもごと言う。

「ふーん」私はそのときが初めて聞いた話だったので興味が出た。しばらくして珍しい話でもないと聞いたけど。

「なんか断った」

「ふーん」聞き方にコメントを求める感じがあったので私は答えた。「どうして?」

「なんか何されるか分からなくて怖くない?」

「あー、そうだね。怖いね」

「3Pもなー。女に裸見られる方が嫌だなー」

「あー、そうだねー」

「だよねー」

 私は栞莉に合わせたけど、とくになんとも思わなかった。そのときにならないと分からないなという感じ。ちなみにそのときというのはあとであったけど、トリップしてたのであまり覚えていない。どっちでもいいというか、どうでもいいというか、そこまでこだわりがないというか。

「女にあそこ舐められるのもなー、なんかなー、別の気持ち悪さがあるんだよなー」

「そうだねー」

 栞莉の愚痴に私は合わせていた。

 ぼーっと横になってよく分からない時間になっていると、有紀が部屋に入ってきた。

 有紀が愚痴を言って2人で聞いて、そのあいだに有紀も山盛りのコップをSNSに上げて、空いたコップをSNSに上げた。

 有紀は液体の風邪薬も何本か飲むのだけど、私は効果があまりあるとは思わない。錠剤を飲むか、そうでなければ酒と一緒の方がいい。うちらは全員酒の味が好きじゃないので本当に嫌なことがあったときじゃないと酒は飲まないけど。

 私はなんとなく自分の投稿と栞莉の投稿と有紀の投稿のいいねの数を比べていた。

 数字が頭に入ってこないが、私が一番多いというのはなんとなく感じた。

 栞莉が有紀の愚痴をさえぎった。「それよりもさー、男2人の3Pと女2人の3Pって、どっちが嫌?」

「あー、そういう話?」

「そういう話」

「うーん」

 自分の記憶では、有紀は質問に答えなかったと思う。なんか別れた彼氏の愚痴から親の悪口になってそのまま支離滅裂になった感じ。

 私と栞莉は、「あー、分かるー」と言いながら、スマホのいいねの数を見ていた。


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