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第2-5話 急襲された12歳。

ゴブリンの大集落を発見した、ベリー、サイラス、エドの3人は、それぞれの役割を全うする為に動いていた。


エドは先行して集落へと辿り着き、うじゃうじゃと広場を埋め尽くす大量の緑を、愛刀と魔法を駆使して、次々と葬り去っていった。


エド「っだあーりゃぁあ!はぁ、くっそ多過ぎんだよ!」


広場のうじゃうじゃは、とりあえず目視出来る範囲は終わった。次に向かうは左手前にある建物。


エド「生命反応……こりゃゴブだな…と、待て、あ!」


コブの他に、もう1つ反応が弱い魔力を感知したが、一歩遅かった。部屋に到着した時には既に事切れていた。


やるせない気持ちを払拭するように、「クソやろーが!」と吠えながら、その場に居た産まれたばかりの赤子共々ぶった斬った。


まだ温もり残る幼い少女を抱え、次の小屋へ移った。ゴブリンの反応が無かったから入ったが、そこには事切れて放置されている、2体の被害者が居た。


まるで「用済みだ」と言わんばかりに、隅に積み重なって遺棄してあった。所持品や衣服等と共に。


その数、ざっと数えて衣服が5枚。今まで被害に遭った子達の物だろう。いつから置いてあるのか、持ち上げたら脆く崩れ去った。


こういう現場に居合わせる事は稀にある。だからと言って、慣れてるか?と聞かれても、答えは「いいえ」だ。慣れるわけが無いだろう。


冒険者の中にはイカれた奴もいて、人の死体を見て股間を膨らまし興奮する奴もいるが、あれは異常だと思う。


まぁ、そういうヤツは、そのうち欲求に抗えなくなり、犯罪を犯して消えて逝くんだがな。



剥き出しの土の上に、ボロボロだけど布を敷き、被害女性を並べて置いてから胸に手を当て、下を向いて冥福を祈った。


俺は聖人ではないので、祈った所で何にもならないが、祈ることで少しでも被害女性の心に寄り添えるのならば、それだけでも十分だ。


彼女たちが過ごした苦難や過酷な状況を思うと胸が痛んだ。怖かったろ。


被害女性たちの姿は、地に根付いた花のようだった。彼女たちへの尊敬と哀悼の気持ちが胸を満たし、俺は静かに立ち去った。


その場に残されたのは、祈りと哀悼の気持ちだけが静かに宿った空間だった。


小屋を出てから反時計回りに進み、ゴブリン(クソ)を見付けては殺して行き、集落の中で一番魔力反応が強い場所に辿り着いた。


集落の中で異彩を放つ風体をした、石造りの巨大な洞窟のような場所だ。

中には大体3000程が犇めき合っていて、(一人で殺るには少し不安だな)と、サイラスが到着してから乗り込もうと決めた。


その場から離れ、また反時計回りに歩き出した。ゴブリンの中に知能を持つ者が居るのか、炊事場や武器庫があり、その辺りはゴブリンの反応は無かった。


また歩き、奥の小さい集落の中に魔力反応があった。「あそこで洞窟以外のゴブリン(クソ)は終わりだな」


その場に向かうべく歩いていたら、茂みからメスゴブリンが3匹襲いかかって来た。めちゃくそ魔法を使ってくる。《魅了》だろうな。俺を種馬として使いたいんだろう。


《オスキタオスキタ》《タネクレタネクレ》《ギギギギ》


エド「俺にも抱きたい女の好みはあるんで……ね!!」


「まずテメーな!」ザシュ!《ゲギャ…》


「次はお前っだ!」ズシャ!《ギャ…》


「最後、一文字!」ザシュ!《グギャ…》


シャッ!と刀を振り、紫の体液を落とし、《クリーン》を掛けて鞘にしまった。


その後も歩く度にメスゴブリンが襲って来ては斬って、襲って来ては斬り……終わった頃には「もう女の裸体見たくない」と独り言ちていた。


ゴブリンは、オスもメスも腰付近以外は丸出しなのです。なんせ魔物ですからぁぁあ!!


トラウマになりそうな戦闘を終え、ちょっと広めの長屋があったので、入ろうと足を踏み出したら、石の洞窟の方で、大量の魔力が動き出したのを感じた。


長屋の中にも、3つ生命反応があったが、洞窟の方がマズイと判断して駆け出した。


その後サイラスと合流して、グッチャぐちゃの、ドロッドロになりながら、戦い続けた。


残りがクイーンとキングだけになり、サイラスが《サークルオブサンダー》をクイーンに放ち、一瞬でチリにした。


それに怒ったキングが《ウオッホオオオ!》と雄叫びを上げ、石の洞窟を吹っ飛ばした。



ベリーは、この時の振動と音に吃驚して、尻もちをついていた。


そんなベリーは、3人の男性に《ヒール》を掛け、鎖はガントレットで殴って破壊。《クリーン》を掛け、HPポーションを飲ませてあげた。


まだ目が虚ろで、身体がフラフラと揺れていたので、《鑑定》をして、現在の状態を調べた。



「オスロンさん、16歳ね。出身がスウィーティオ王国か。ふむ……で、ブルボンさん、16歳。あら懐かしい。私はルマンドが好きだったわ」


いや、そっちのブルボンじゃねぇよ!って、1人ノリツッコミ。


「こっちの方は、ビリーブさん、28歳ね。あらこの方、近衛の隊長さんだったのね……ビリー隊長か……スキンヘッドのビリー隊長……なんか居たわねそんな外国人」



3人で国から逃げて来て、色欲のゲス共に捕まったのかしらね。


<状態異常:魅了。媚薬で興奮状態(危険度A)>


3人共、同じ症状ね。これは何の危険度かしらね。とりあえず無力化しましょうか。


《ヴォイド!》。うん、魅了は解けたわ。媚薬は……


私が……と思ったが、それじゃ痴女になっちゃうわ。抵抗は無いけど、流石に知らない人のは犯罪になっちゃう。


(ん!?なんかめっちゃ覗いてるヤツが居る。背中にビシビシ視線が突き刺さってるわね)



《カエセ、オスカエセ、カエセ、オスカエセ》


「うっさい!メスブタ!」《ウィンドブレイド!》


《キッ!クキャキャ!》


うっわぁ。雑魚のクセに避けやがった。しかも鼻で笑った気がする!


攻撃を避けられ、憤怒していたら、若者2人がメスゴブリンを見て怯えだした。

その中でも28歳ビリー隊長は、元近衛だけあって堂々としている。


立ち上がって、私の前に立ち塞がり「お嬢さん、助けて頂き感謝する。ここは任せて早く逃げなさい!」



「って、カッコイイですビリー隊長!全裸でなければ!

腰に毛布巻いて、ほら、あ、パンツあったわ!これ履いて、で、ウルちゃんプリントTシャツ、これ着て。

下はえ~と、あ!ツナギがある!これ着て。良し完璧!あ!待って、コレコレ、剣使って!」



と、メスゴブの攻撃を避けながら、ここまで一気に捲し立て、服と装備を出していった。


『全裸』の部分で頬が「ポッ」となってたけど、強面フェイスの「ポッ」はギャップ萌え……しない。スマン隊長。



隊長「あ、ああ、すまん感謝する」



「良いって事よ!そのメスゴブリンはビリー隊長に任せます!私はこっちの2人を見てますから!」



隊長「……(なぜ名前を知ってる)了解した」



隊長の返事を聞いて2人の方に辿り着く前に、「ザシュ」と聞こえ、《ギャッ!》と聞こえ、「ここを頼む」と聞こえ、振り返ったらヤツは居なかった。


「ですよねぇ」


その後、復活した若者2人も「我々も行きます」とヤル気になってたので、ユージ用に作ってあった芋ジャーを渡した。


着心地を大変お気に召してたので、プレゼントフォーユーしておいた。


あ、武器はね、ハルバードとメイスって言われたよ。「流石にねぇわ!」と、銀の斧とサーベルをあげた。


なんか気に入ってたから、それもあげた。私使わないし。金の斧は流石に無かった。残念。


そして、芋ジャーにブーツで駆け出して行った。ジャージに武器。凄いシュールだよね。



「さぁ、向こうにあった2つの遺体を回収して、緑の残骸を燃やしに行きますか」



やって来ました大穴へ。上から覗いて後悔……積み重なる夥しい数の緑に、吐き気が込み上げてきた。


出さないように堪えて、収納に入れた緑の残骸をドバドバと放り込み、火球を数発放ち、上から蓋をして、完了。


「良し」と大穴を後にし向かった先は、エドとサイラスの元。


「さぁ、うちの勇者と英雄は無事かな」



やって来ました。少し前、大きな魔力を放出したと思われる集落の中央付近です。


「何も無い……」


近付いて驚愕した。辺りがまっさらな更地になってます。放出された魔力のせいで吹き飛んだ模様。


「エドとサイラス…《サーチ》…あ、居たわね。ん?」


エドとサイラスは、魔力をインプットさせてるから直ぐに見付けた。その場にもう3つの生命反応。


「ビリー隊長達合流したんだ。良かった」


あとは集落の焼き払いと、亡くなった方の埋葬ね。


この後みんなと合流し、全員で後始末をして回った。あらかた片付いた所で遺体の埋葬をした。


最後に全員で膝を立て手を組み、冥府を祈った。私はそのままの体勢で『乙女の祈り』をし、辺り一帯を浄化した。


金の粒子が大量に空へと昇っていく様は圧巻で、初めて見るだろう3人は、その光景を見て涙を流してた。


「助かったんだ」 「解放されたんだ」 「……うぅッ」


落ち着いたところで、行き先を聞いてみた。シュガーズ王国。だった。他にも別の国に向かった連中が居るらしい。みんな一様に『聖女』を探しているみたい。


「貴女様が聖女では?」と、ビリー隊長に言われたが、全力で「NO!」と答えた。だって、本当に違うし。


悲惨な目に遭った後に言うのは酷だけど、「シュガーズ王国に『聖女』はいないのよ」と教えてあげた。


そうしたら「ははっ。分かってます。現れたら世界中に伝わりますから……」とオスロンさん。


「国や教会から御触れがあったわけでもないですし。いないのは分かってるんです」とブルボンさん。


2人が力なく笑い項垂れてるのを見て、エド、サイラス、私は、困った顔を見合わせた。目線で(どうする?)と語り合った。


そしたら突然、ビリー隊長がガバッと頭を下げ「お嬢さん。不躾で申し訳ないが、聞いてくれ」と言ってきた。


「どわっ!あ、え、はい、分かりました!」


ビリー「貴女の先程の『聖女』に匹敵する程の力を、我が国の為に使って頂けないだろうか……

実は、空想だと思っていた『悪魔』という存在が、我が国を滅ぼそうと、王や王太子、王妃に貴族、凡ゆる人々を洗脳し、やりたい放題しているのです」



うん。知ってる。


私の知る『悪魔』は、『人間に「神はいない」』と信じ込ませることが目的だったはず。

ウェブか何かで見たのよね。『悪魔は人に近づき、そっと耳元でささやくのです「神なんていない!」と』って書いてあるのを。


『神の否定』『他者の否定』『世界の否定』を言葉巧みに人に吹き込み、罪へと誘惑する。


それが『悪魔』って存在だった気がする。そして、『悪心』が人々から消えない限り悪魔は存在し続ける。


じゃなかったかな?だから、『聖女』が本当に浄化出来るのか疑問なのよ。


まぁ、ここは異世界だし?私の知る定義とは違うのかもしれないけどね。



ビリー「その『悪魔』を討ち滅ぼせるのは、聖属性の遣い手『聖女』『聖人』しかいないと文献に記載されてるのを、宰相殿が発見したのです」


オスロン「それで、目星い国に赴き、探して廻ってるのです。命令されてね」


ブルボン「居ないってのは宰相も分かってるんですよ。でも、何処かに居るかもしれない。と、躍起になってるんです」


ビリー「諦めてた所で貴女の存在です。『乙女の祈り』あの光の粒が舞う光景は神々しく…光り輝く貴女は『女神』のようだと思いました」


で、3人揃って「「「助けてください」」」と、頭を下げられたわよ。


元々、国の依頼でスウィーティオ王国へ行くつもりだった事を伝え、「我々もベリー様の護衛に加わります!」と言った3人を連れ、集落を離れた。


移動は馬と徒歩。私はブルボンと一緒の馬に。ビリー隊長がオスロンと馬に。

サイラスとエドは体力があるので馬と並走。馬並みに走れる人間って凄いよね。オリンピック出たら優勝だよ。


休憩を挟みながら走り続け、偶に魔物や盗賊に遭遇しながらも難なく切り抜け、馬車で1ヶ月掛かる距離を、僅か20日程という驚異の早さでスウィーティオ王国へと辿り着いた。


馬を降り、門から見た悲惨な光景に私は言葉を失った。

アルファポリスでも掲載しています

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