第11話 不憫な5歳。怪我と護衛VS衛兵
「きゃぁぁああ!!」ドンッ。
馬上から無理矢理引っ張られ落馬したベリー。それを目の当たりにした護衛達一同はすぐさま行動に移した。
ユージ 「ベリー!?サイラスそいつを取り抑えろ!」
いち早く異変に気付いたユージーンだったが、一歩遅く、助けられなかった。息はあったのですぐさま治癒魔法を掛け、原因の女を捕縛するため指示を出した。
サイラス 「ベリー様!!承知!あ、くそ!エド捕縛魔法を!」
女の反対側にいたサイラスはすぐに捕縛出来ないと判断し、エドに捕縛を頼んだ。
エド 「ベリーちゃん!?了解!《バインド!》」
女 「ああ……エド様ぁ。きゃあ!なんで!!」
指示を受けたエドは、暴れながら自分に色目を使う勘違い女に捕縛魔法を掛けた。
ルカ 「ベリー様!!私は衛兵を連れて来ます!」
ルカリオは状況を重くみて、門兵に連絡するため急いで門まで走った。ただ、他の冒険者や、列に並んで状況を見てた民達も動いてくれててすぐさま衛兵が来てくれた。
アル 「あぁぁ…ベリちゃん……はっ!ダメダメしっかりしないと!ウルくん、屋敷まで飛ばして!連れて帰ろ!」
アルヴィンは大切な妹が傷つけられた事に動揺したが、すぐに気を持ち直し、ウルに屋敷までの転移をたのんだ。
《ボクのベリーちゃんになんて事を!OK!アル、ユージ捕まって飛ばすよ!》
ユージ 「いや、俺はここに残ってあの女の処遇とか話し合ってくる。サイラス、ベリーに付いててやって。
エド、ルカ、俺と一緒に詰所へ。帰りは俺が転移する」
「「「了解!!」」」
ベリーを心配して動く面々の対応は素早かった。ユージの指示のあと、ウルはアルとベリー、サイラスを連れ屋敷に転移した。
みんながベリーを大事にしているのを見せつけられ、大好きなエドワードが自分を全く見ていない状況に焦れた女は髪を振り乱し発狂した。
女 「なんでその子ばっかり!エド様、私は貴方をお慕いしています!エド様も私を好きだって言ってくれたじゃない!?なのになんで、そんな毛も生えてないようなガキばっかり構うのよ!!許せないわ!私からエド様を奪ったガキが!愛されてるのは私なのよ!!」
エドワードは「好き」なんて言った覚えもなければ、こんなヤツの名前も知らない。
ただ、ギルドに行く度に近寄ってきて撓垂れ掛かったり、依頼に行くと必ず後をつけてくる『気持ち悪い女』という印象しかなかった。
エド 「全くもって不快だわ。なんなのお前。依頼には付き纏うわ、宿に押し掛けるわ、ギルドではそのブヨブヨの、腹だか胸だか分からん肉を押し付けてくるわ。
マジで気持ち悪ぃ。挙句、俺らの大事な姫さん傷付けてよ。牢に入って一生出てくんな!」
女 「わぁぁあん!!酷いわ……酷い!こんなに愛してるのに!貴方の隣りで輝けるのは私なのに!」
愛してるなら何しても良いのかよ!と言いたい。しかも攻撃対象が小さな子供。許せない。
列に並んでた子を持つ親は、女の行動に憤ってた。他の人も、(子を守るべき立場の大人がなんて事を!)と、女に軽蔑の眼差しを向けていた。
しかも、「輝ける」とは…人をアクセサリーみたいにいう。そんなヤツが愛されるわけがない。
ルカ 「衛兵さん。さっさと連れてって下さい。虫唾が走る。本当に不快です。後ほどエドワード、ユージーンと共に詰所に伺います」
女 「いやぁぁああ!!エド様ぁぁあ!!」
衛兵 「「煩い黙れ!《サイレント》ふぅ。本当に酷い……では、詰所でお待ちしております。……行くぞ」」
衛兵達 「「「はっ!」」」
魔力縄でギチギチに縛られた女に、サイレントを掛け音を封じた。そして、女を引き摺りながら去って行く衛兵を見送り、ユージ達は協力してくれた人達や、列に並んで成り行きを見守っていた人達に感謝と謝罪をし、詰所へと向かった。
『憤り』と『後悔』
ユージ達、護衛の面々の心境は同じだった。まさかこんな事が起こるとは。誰も予想していなかった。
神の啓示を受け、『大聖堂』で儀式をするため、嫌がるベリーを説得し、連れて行った。
ブーブーと文句を言いながらも、「しょうがないなぁ」と苦笑して馬車に乗るベリーが可愛くて、みんな癒されてた。
ベリーは凄く優しい。悪態吐く時もあるけど、言い方が可愛いから怒りは湧かない。
今日だって「なんでついて来るの!!」と、口を尖らせながらルカやエドに言ってたけど、「約2時間の移動に、いつ終わるか分かんない儀式についてきても疲れるだけだよ?お給金出るの?」って心配してただけだし、
アルには、「アル、馬車乗ろう?馬だと休めないよ?てか、家に居なよぉ。まだ子供なのにぃ」と、自分も子供なのにそんな心配してるし、
馬にまで、「大変ねぇ。大人に振り回されてぇ」と回復魔法掛けて癒してたし、
待機部屋でだって、それぞれの好きなお菓子やらジュースやら出して労わってたし、
キャロルにあんな事されても、帰りの馬車の中で「あの子(頭)大丈夫かな……」って呟いて心配してたし……
ベリーはこっちが心配するくらい優しいのだ。
いや、キャロルに関しては、頭の中を心配していたんです。誤解しないでみんな!
そんなベリーが傷付けられないよう、皆んな必死に護ってた。それなのに……理不尽な攻撃を受け傷付けられてしまった。今日だけで2回も。
こんな事なら、大聖堂に連れて行かなきゃ良かったと、各々が後悔していた。
そして、それ以上にキャロルやあの女に憤ってもいた。
だから今、詰所で聴取を受けてるエド、ユージ、ルカは、皆が皆、同じような事を言っていた。それぞれ対応の仕方が違うが。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※聴取の際、鑑定水晶で名前と年齢、種族を開示する。
【ユージーンVS衛兵】
衛兵 「えー。ユージーン・スウィーティオ様……え!隣国の王子殿下でいらっしゃいましたか!大変失礼致しました!上の者を呼んできます!!」
ユージ 「いいから。座って。今は『王子』ではなく、ストロベリー様の護衛としてここにいる。普通に聴取受けるからそのまま君が続けて。不敬とかも気にしないで」
衛兵 「は、はい!畏まりました!それではそのように対応致します。
女の名前は『アイリーン』Cランク冒険者、18歳。
門前で、馬上にいる幼子を引き摺り下ろし、落馬した幼子がケガ。今は意識不明……」
ユージ 「はい。無・抵・抗の子供を、無理やり落馬させた。です。そこ間違えないで」
衛兵 「あ!はい!すすすみません!!ほ、本日はストロベリーさんの洗礼式。その道中の護衛をしていただけで、双方面識は無いと」
ユージ 「ストロベリー様!な。『様』を付けろ。あの子は正式には『ストロベリー・ディ・シュタイザー』シュタイザー家の令嬢だ。秘匿された令嬢だから、大っぴらに触れ回るなよ。」
衛兵 「ははははいぃ!侯爵令嬢にケガさせたのですね!冒険者ギルドにはその旨を伝え、処罰して頂きます!
侯爵様にはこちらから連絡を入れましょうか?」
ユージ 「だから!秘匿なわけ。ギルドには『侯爵令嬢』という事は伏せろ。」
衛兵 「あ、いえ……うっ……分かりました。(怖い!)でも、あの……調書に嘘は書けないですし、報告書はギルドと侯爵様に渡ってしまいますので……いずれバレます。それは回避出来ませんのでご了承下さいぃぃ!」
ユージ「(そりゃそうか)はぁ…了解だ。それで?あいつの処遇は?今回は無事だったが、一歩間違ってたら死んでたかもしれん。要は殺人未遂なわけだ」
衛兵 「ヒッ!(殺気やめて!)そ、そうですね。秘匿したとしても『侯爵令嬢』に害を加えたとなれば、相当重い刑になると思われます!最終判断は侯爵様が下さるでしょうぅぅ!」
ユージ 「そうか。理解した。もう良いか?早くベリーの傍に居てやりたいんだ」
もう話しは終わったと、席を立ちスタスタと部屋を出て行ったユージーンに、残された兵士は「怖ぇぇ…チビりそうになったぁぁ…」と机に突っ伏した。
怒れるユージーンは、デフォの表情で憤っていた。無表情、冷たい眼差し、漏れ出る殺気……最高に怖かった。
もろに食らった衛兵……不憫なり。完全な、とばっちりである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【エドワードVS衛兵】
衛兵 「エドワード・アズマ様。勇者リョウガの子孫、Sランク冒険者。ですね(ケッ。良いよな。名声も容姿もスキルも高ランク。人生勝ち組ってか?)」
エド 「……ああ。そうだ。続けて」
衛兵 「(くっ。偉そうに!)女の名前は『アイリーン』18歳でC級冒険者。「私の恋人」等と口走ってましたが、女の妄想で、エドワードさんは面識が無いと」
エド 「いや、ギルドや依頼先で、俺の前に現れては話し掛けてきたり、触れてきたりしていたから、存在は認識していた。付き纏われて迷惑していたから、ギルド長からも厳重注意してもらっていた。だが、こんな事態を招いた。俺に何かするなら良いが、大事な姫に手を出したんだ。相応な処罰を頼む」
衛兵 「Sランクともなればモテるのでしょうな。エドワードさんは良い男ですし。『大事な姫』と。ぷっ。
おっと失礼。巨乳より乳臭い幼女が好きですか。美女より子供とは…くくっ。一回くらい相手したのでは?……ヒッ!!」
エド 「滅多なこと言うもんじゃねぇぞ?あの子は『ストロベリー・ディ・シュタイザー侯爵令嬢』だ。訳ありで平民に扮しているがな。そして『愛し子』だ。
俺のことを貶すのは構わねぇが、姫をバカにすんのはやめとけ。な、兄さん?」
衛兵 「ヒィ!?あばばばば……」バタン……
この衛兵は、見目が良くて、勇者の子孫で、Sランクな、全てを持ってるエドが羨ましかった。
だから、聴取の場でエドに嫌味を言っていた。巨乳美女より幼女を姫扱いするエドをバカにしていた。
だが、言い過ぎた。普段温厚なエドだが、流石にキレた。そして、もろに殺気を当てられた衛兵は、椅子から転げ落ち失神した。
そんな男を一瞥し、「弱いヤツほど良く吠える。調書は俺が書いといてやるよ。
『Sランクに嫉妬して、被害者の子供をバカにして、まともに聴取出来ませんでした』と。
ふん。女の処遇決めるのはヴェルディだろ。俺から報告しとくか。いや、アルヴィンが伝えてるかな?」
そう言って部屋から出て行った。床には股間を濡らした衛兵が白目剥いて倒れていた。
それを発見した別の衛兵は、男と調書を見てため息を吐き蹴飛ばした。「全く……自業自得だ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ルカリオVS衛兵】
ルカ 「私は『ルカリオスエルフィン』エルフ族長の第3子。女の名前が『アイリーン』18歳、Cランク冒険者。
被害に遭った幼女は、『ストロベリー・ディ・シュタイザー』シュタイザー侯爵令嬢。これは秘匿事項。触れ回るのを禁ずる。『神々の寵愛を受けし者』『神の愛し子』なので、これを破れば神罰が下るでしょう。
『神は常に我々を見ている』あの女が神罰を受けるか分かりませんが、受ければそれは神からの罰です。犯罪者としての処遇は侯爵様に委ねます。女の情報は魔眼で鑑定しましたので正確です」
衛兵 「え!あ、はい。『神の愛し子様』に危害を加えたと……しかも侯爵令嬢……それは……知らなかったとはいえ、大変な方に手を出したのですね……ご愁傷さまとしか言えませんね」
ルカ 「全くです。神に喧嘩売ったんですよあの女は。
エドワードも変な女に目を付けられて不憫ですよね。
あれは、『エドワードが好き』じゃなくて、『Sランクのエドワードが好き』なんですよ。肩書き目当ての醜女。
Aランクの時も変なのばっかり寄ってきてましたけど、Sランクになってから酷くなったと愚痴ってましたよ」
衛兵 「その話しは知ってます。実は私エドワードさんが依頼受けて外に出る時、よく門番に当たってたので、少し話した事があるんですよ。私の自慢の一つです!
私の憧れの人なのです!それで、いつも付かず離れず変な女がエドワードさんの後を追っていたのを見てたので、心配してたんです」
ルカ 「ふふ。自慢ですか。確かに、Sランクを鼻にかけない気さくな良い男ですよね。私も「自慢の友です」と、言っておきましょうか。ふふふ。
それにしても、付かず離れず後を追うとは……気持ち悪いですね。身震いします」
衛兵 「おお!それは羨ましいですね!私も『友』と言ってみたいものです。ははは!
物凄く気持ち悪かったですよ。ネバーっとした視線で見詰めてるんです。ヘドロスライムみたいですよね」
ルカ 「ふふふ。ヘドロスライムのほうが可愛いと思いますよ。ドロッとしてるけど汚物を食べてくれるので。
あ、こんな時間ですね。では、調書も書きましたし、姫が心配なのでお暇しますね。他に何かありましたら騎士塔まで連絡下さい。では」
そう告げて部屋を出て行ったルカリオ。「御協力ありがとうございました」と、衛兵は礼をしながら思った。「あれ?俺、何もしてなくね?」と。
そう。ルカリオは自分で調書を書きあげたので、2人は世間話をしていただけだった。
衛兵は「ま、良いか」と、「麗しの騎士ルカリオさんと喋ったよ!至近距離で!自慢しよ」と、新たな自慢を手に入れ、ご機嫌にルンルン気分で上司に報告しに行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
三者三葉の聴取が終わり、詰所前で合流した3人は、ユージーンの転移魔法で屋敷へ帰り、出迎えた神族達にベリーの状況を聞きながら部屋へと向かった。
ユージ 「あ!ハク!ベリーがまだ目を覚まさないって!?なんでだ!?」
ハク 「皆様、お帰りなさいませ。ベリー様は無事なのですが、目を覚まさないのは精神的なダメージで昏睡しているのだと思いますが…」
(魔力に妙な違和感を感じますね)
エド 「精神的ダメージ…すまん俺のせいだな…あんなのを放っといたから…クソっ」
ルカ 「いや、エドのせいじゃないよ。悪いのは、あの妄想女2人だよ。それに産まれてから今まで色々あったし、ちょっと疲れたんだと思うよ」
(ステータスが一部文字化けしてるのはなんだろ)
《うんうん。自称ヒロインと、自称エドの彼女ね。あと、神様も原因だと思うから、エドは気に病まないでぇ。
寧ろ君も被害者なんだからぁ。ね?》
(ベリーちゃんの魔力がなんか変だな?なんだろ?)
ユージ 「そうだぞ、お前はストーカー勘違い女の被害者だ。ベリーを傷付けたのは、悪いのは、あの女2人だ」
(なんか普通の昏睡じゃないような…魔力がグルグルとベリーを守ってるような感じがするな)
エドは罵られるのを覚悟していたので、みんなの言葉に拍子抜けした。そして嬉しかった。
だから、「ありがとうな」と、素直に感謝した。
そして思った。(仲間って良いな)と。
『勇者の子孫』『Sランク』という肩書きに群がり、媚びへつらう打算的なヤツ等とは違う、本当の仲間。
『エドワード』という一人の人間を受け入れてくれる彼等を、そんな彼等が大切にしている『ストロベリー』を、自分なりに大事にしていこうと誓った。
《ハクぅ。サイラスと、アルヴィンちゃんは?あと、小狐のコノハと、小熊のミツがいないような?》
ハク 「サイラスは侯爵家へ報告に行きました。件の女性を、知らなかったとはいえ雇ったのは侯爵様ですから…
アルヴィン坊ちゃんはベリー様の布団の中ですね。一緒に寝ております。チビ達は食事の用意をしております」
ユージ 「あ、あの過剰な護衛は侯爵が雇ったのか。娘のためにした事なのにな。変な女を雇ってしまったか。
んで、俺のベリーと同衾だと!!くっ……仕方ない。アルは《《妹》》としてベリーが好きだからな」
ルカ 「とりあえず無事という事で、ゆっくり寝かしてあげよう。ほらほら、みんな部屋から出て。……ユージ、行きますよ……ユージ!」
部屋から出たあと、サロンに集まり、聴取時の報告をそれぞれしていた。
そこにサイラスが帰宅し、侯爵様に一部始終を報告したことと、処罰に関しては『最高刑での極刑』が決まったとの事だ。
これに関しては、全員一致で「「「妥当だな」」」と頷いた。
『極刑』といっても、神星キュリオスでは『処刑』は滅多にしない。最高刑は、牢に繋がれ、『魔力供給器』として生涯を過ごすのだが……
これは『鉱山労働』や『犯罪奴隷』『娼館送り』より過酷な刑なのだ。
魔力が減ると、ポーションで魔力を回復させ、死ぬまで永遠と魔力を抜かれる。
一級犯罪を犯した者が行き着く先である。
一級犯罪とは、
※1【王族、貴族の殺人未遂、及び殺人】但し伯爵以上の階級のみ。
※2【5人以上の※無差別殺人(盗賊、儀式の生贄等の大量殺人】戦争はこれにあたらない。
※3【特殊称号持ちへの理不尽な暴力や殺人】勇者、聖女、賢者、剣聖、愛し子がこれにあたる。
件の女『アイリーン』は、※3に該当する。
高位貴族子女への暴行。神々の寵愛児への暴行。悪行ダブルスコアで第一級犯罪者になった。
サイラス 「以上が報告です。侯爵様は、だいぶ参ってましたね。奥方の素行も『キャロル』が居なくなった事で酷くなってるみたいで」
ユージ 「そうか。まぁ、アルの護衛に扮してベリーに会いに来るくらい『娘大好き』だもんな。
たまに剣の打ち合いをしてるのも、嬉しそうだしな。
そんな子が怪我したんだ、自分のせいだと思ってそうだな。
それにしても、奥方の素行ってなんだ?サイラスわかるか?」
サイラス 「そうですね。見ていて痛ましかったです。「侯爵様のせいでは無い」と言ってきましたが…力無く笑って、「いいや、私のせいだ。娘には、もう会えないだろうか…」と、もう……見ていられませんでした。
奥方の素行については、どのような事なのかは分かりかねますね」
エド 「それについては俺から良いか?その、夫人の素行というか、悪行な。キャロル嬢の代わりになる女の子を探してるっぽいぞ。
どうしても、王太子妃になる子がほしいみたいでな。ヴェルディが影から聞いたらしい」
ルカ 「はぁ。懲りませんねぇ。侯爵様もさっさと離縁して国に送り返せば良いのに。
しかもジュノン殿下の妃ですか……無謀ですよね。殿下は婚約者様を溺愛しているって有名なのに」
ユージ 「ああ。幼馴染の伯爵令嬢だったか?深窓の令嬢って感じの綺麗な方だとか」
《第一王子がダメなら、第二王子ぃ~って思ってるんだよぉ。あのキングベアーは~。それか、他国の王子ぃ。
旦那に小遣い減らされて、贅沢出来ないのが耐えられなくて、必死で金の成る木を探してるぅって感じ?》
「「「ああ。なるほど」」」
未だ起きないベリーを心配しながら、『ベリー護衛隊』一同は、神族達が作った《《有り難い》》食事を頂き、風呂に入り、様子を見に行き、サロンで語り合い、また様子を見に行き……と、眠れぬ夜を過ごした。
翌日は、目覚めたアルヴィンがエドワードと共に侯爵家に嫌々ながら帰って行き、ルカは騎士団の仕事へ戻り、屋敷の中には、サイラスとユージーン、ウルとハク、チビ達だけになった。
次の日も、その次の日も、懇々と眠り続けるベリー。いつ起きるか分からないから、ろくに眠れなくて、徐々に窶れていく護衛達。
そんな日々が過ぎ、あの日から5日経ち、「このまま起きないのか!?」と、サロンに集まった面々が悲痛な表情で項垂れてるところに来客が。
オズワルド 「……お久しぶりです……はて?なんだが皆さん窶れてますね。目の下が真っ黒ですよ?どうしました?」
5日後に第一魔法師団長の息子を連れてくると言っていたオズワルドが、約束通り男の子を連れて屋敷を訪れた。
足にしがみつき、涙目の少年。人見知りが酷い。
オズワルド 「う~ん。返事が無い。どうしたものか。あれ?そういえばベリー嬢は?いませんね。神霊様もいらっしゃらない……ん~反応は部屋に有り」
(……ふむ…ん?んん?……ん~なんでしょうこの違和感)
ユージ 「……ああ。悪いなオズワルド。実は5日前からベリーが寝たまま起きなくてな……」
オズワルド 「5日前……洗礼式の時ですね。洗礼式に不届き者が出たとか、冒険者の女が暴行で捕らえられたとか、そんな噂を聞きましたが、もしや当事者ですか?」
エド 「そう、それ。まさに当事者」
オズワルド 「ふむ。エドワード、デイビッドを頼みます。ユージ、ベリーお嬢のところへ案内してくれますか?なんだがイヤな魔力反応がするんですよ」
今にも泣き出しそうなデイビッドをひと撫でし、ベリーの元へ向かったオズワルド。
魔国出身の天才魔術師は、ベリーの昏睡の原因を突き止める事が出来るのか。
「お嬢、失礼しますよ…《スキャン》おや……ふむふむ……」
なるほど……厄介ですね。さてどうしましょうか……
読んでくれてありがとうございます!
アルファポリスでも掲載しています(*^^*)