第9話 新しい家族?
「えへへ、リョウにーさまたちといっしょにおうちかえれる~」ぎゅ~
「む~…エミリアだけリョーヘーの膝に乗ってズルいのだ!
あたしものりたいぞ!」
「ニキねーさまもいっしょにのろうよっ!」
「ちょ…ニキちゃんまで…」////
「あらあら、エミリアってば良平さんにこんなに懐いちゃって
うふっ、私も乗っちゃおうかしら?♡」
「~~~~~っ」/////
((ククッ!モテる男は大変よのぉ~?))
(うっさいわ!!)
「こ、これっ!…良平さん、お騒がせして申し訳ない…」
馬車を操ってくれてるハートランドさんが頬を掻いた。
俺達は今ウィンチェスターさん一家の馬車に揺られ
帝国ではなく、魔王領へ向かっていた。
少し遡る
――――――――――――――――――――
アイテムボックスからキャンプテーブルを取り出す。
(さて、小さい子も居るしどんな料理にしようか…
生成魔法のできたてを出すわけにも…)
「リョーヘー!おにくが食べたいぞ!」
(肉…食べやすさも考えるとやっぱアレか。
それにやってみたい事もあったし…)
「ニキちゃん、どこかに大きめの石があったら教えてくれないかな?」
「わかったぞ!」
(よし、じゃあアイテムボックスの中にアレを生成して取り出すふりをしよう)
「リョーヘー!みつけてきたぞ!」
「おぉ、早いね…って!ええ!?」
ニキちゃんは1メートル近い巨石を軽々と持って現れた。
ドスン!!
「これでいい?」
「あ、あぁ…すごい力だね…?」
「オーガのパワーならこれくらいの石なんてらくしょーなのだ!」
鬼のパワー…凄まじい…!
「おや、お嬢さんは鬼族の方でしたか。」
「そうだぞっ!」
ハートランドさんの反応は明らかに魔族と面識がある様子だった。
(…後で聞いてみるか。さて今は調理を)
俺は指先のヴェルトロの毛(魔糸と名付けた)で
巨石を3cm厚のプレート状に切断し、
プレートを置ける窯になるよう石を加工した。
「先程助けて頂いた時も拝見しましたが、良平様
今のは魔術なのでしょうか?素晴らしい技です」
「えぇ、そんなところです」
魔糸の事は誰にも話さないつもりだ。
「リョーヘー、これってテーブル?」
「テーブルというより…鉄板?みたいなものかな?
まぁ見ててくれ。ファイア」
プレートの下で魔法の火が上がり
石のプレートが熱せられていく。
(油をひいて…そして生成しておいた人数分の肉、
カット人参、いんげん、じゃがいもを置く)
じゅわっ~
「むむっ変わったおにくなのだ…」
「くんくん…いいにおい…」
「あら?本当。香ばしくていい香り…」
エミリアちゃんとルマリアさんも香りに釣られて
俺の調理を見に来た。
肉を返して両面にしっかり火を通す。
ファイアを解除…後は石の余熱で十分だ。
ついでに目玉焼きも作っておこう…
温めておいた石皿に移し替え、
最後に特性オニオンソースをかける!
ジュワーーーーーーッ!!
「よし!これが石焼ハンバーグだ」
テーブルに料理が運ばれた。
「こ、これは…!」
「まぁ!」
「すごーい!!」
「うまそうなのだ~~~~!」
「熱いから気を付けて食べてね」
「「「「いただきます!」」」」
「ごくっ…こんな料理は見たことがない!では…」
ハートランドさんがナイフを入れフォークを口に運んだ。
(~~~~~~っっ!!こ、これは…っ!!?
細かく練りこまれた柔らかく上質な牛肉っ!そして透明な肉汁の旨味と香りが
オニオンのソースと交わり口いっぱいに広がっていく!
噛む度にあふれ出す肉汁!旨味!通常のステーキでは味わえない感覚っ!)
「う…美味すぎる…」もぐもぐ
「まぁっ!なんて美味しいお肉!
表面がしっかり焼けているから肉汁もしっかり閉じ込められてるわ!
それにこの焼けたソースの香りも肉と合わさって
なんて香ばしいんでしょう…」もぐもぐ
「エミリアちゃん、熱いから気を付けて食べるんだよ?」
「はふはふ…このおにく…やわらかくておいしいっ!
わたしこのおにくだいすき!」ぱぁぁぁ…!
(良かった…ハンバーグにして正解だったな)
「すごいのだ!すごいのだ…リョーヘー…
今まで食べてきたお肉料理の中で…
一番おいしいぞっ!!!」バクバク!
ニキちゃんは涙を浮かべながら夢中で食べていた。
「フ、喜んでもらえて嬉しいよ」ニコリ
~~~~~~~~~~~~~
食後
「助けて頂いた上にこれほどの料理をご用意して頂けるとは…
良平様!このご恩は決して忘れませぬぞ!!」うるうる
「そ…そこまでしたつもりは!
それよりその…様づけはちょっと…
慣れない呼ばれ方なので普通に呼んで下さると助かります…」
「そ、そうですか… では、良平殿…さん…
良平さん。
お尋ねしたいのですが、これからどちらへ向かわれるのですか?」
「実は俺、遥か遠くからこの地へやって来たのですが、
この地の情勢や仕組みなんかが全く判らない状況でして、
それで帝国の街へ向かって情報を探ろうかと…」
「遥か遠くの地…?なんと…そういう事でしたか…
良平さんは情報を知った後、何をなされるおつもりで?」
「俺の料理の店…人種や種族関係なく
気軽に来てくれるような…そんな飯屋を作るつもりです」
「通りであの料理は…
…そして素晴らしいお考えです。
良平さん、どうか私にその夢を叶える手助けをさせて下さい。」
「ハートランドさん…」
「もしよろしければ、これから帝国ではなく
私共が住む魔王領へ行ってみませんか?
情報を知るだけなら私がご説明致しますし、良平さんのご希望に添える
環境もご用意出来るかと思います。」
((魔王領だと…!?此度の魔王は人間界に侵攻しておったか…!))
「ま、魔王領…?それって」
「ふふ、魔王と聞いて不安になられているご様子ですが
そこまで物騒な所では御座いませんよ?
魔王と言ってもそう自称している人間の王が治めてる国なのですから。」
「あぁ…自称魔王なんですね…」
((なんだ…しかし魔王を自称するとはなんとも大層な人間だな))
「まぁ…人間と言って500歳を超えており、転生者だと言う噂も…」
「転生者だって!?」
((転生者だと!?))
驚きを隠せなかった。
自分以外の転生者が居ること…
いや、こうして自分もこの地に居るんだから
居たとしてもおかしくはない。
だが、500歳を超える…
不老不死のようなスキルを与えられた人物なのか…
((良平よ、これは行くしかないようだな魔王領へ))
(あぁ…!)
「…わかりました。魔王領へ行ってみます」
「えぇ!向かいましょう!詳しい話は馬車に乗りながらでも」
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こうして俺達は魔王領へと向かった。
馬車の中でハートランドさんが情報を語ってくれた。
まず現在の世界情勢はこうだ。
この大陸は3分され、1つが
人間至上主義国家の帝国領。
帝国に住む魔族は追放され、街等の立ち入りは禁止されている。
国民は魔王領へ戦争を仕掛けるのでは?と不安がっているらしい。
2つ目が魔族や人間が助け合って暮らす魔王領。
500歳を超える自称魔王の人間が統治する国家で
人間と魔族間との争いが少ない比較的平和な国らしい。
ちなみに魔王を名乗る人物が居ても魔界に居るであろう本物の魔王が
ちょっかいをかけるという事は今まで無いそうだ。
残りが魔獣やドラゴン等の危険生物が生息する死の大地だ。
魔獣が解き放たれないよう帝国領と魔王領で結界を張っている。
噂では魔界に続く門があるらしい。
ハートランドさん自身は
帝国在中の魔王領大使館の大使だったが
帝国の一方的な理由で魔王領へ還されてしまい
その道中で護衛の裏切りにあったようだ。
護衛は帝国側から派遣された傭兵ではなく傭兵ギルドで
契約した連中だった。しかしハートランドさんは
裏で手を回していたとしてもおかしくはないと言う。
確証は無いが帝国への不信感があるようだった。
~~~~~~~~~~~~~~
(話してくれた内容の通りだと、これから向かう魔王領は
俺が店を出す場所に最適だな)
((ウム!しかし人間の魔王!
魔族や人間を纏めるとは中々の人物のようだ!会うのが楽しみだな))
(あぁ、会えるといいな)
「あっあの…リョウ…ヘイおに…さん」もじもじ
「ん?どうしたのエミリアちゃん」
「わたしたちのくにについたら…その…
そのあとどうするの…?」
「んー、とりあえず住む所を探すかな?
俺達今お金ないから住み込みで働ける場所を探すつもりだよ」
「! な、なら…うぅ…なら…いっしょに…」もじもじ
「えっ!?ちょ、良平さん!私はてっきり我が家に来て下さるものかと…」
「そうよ?恩人をそのまま放り出す訳ないじゃないの?
いい?二人とも、お店と暮らす場所が出来るまで
私達が責任をもってお世話させて頂きますからね!?」
「ほ、本当にいいんでしょうか…?」
「「当然です!」」
「わわっ!?どうしたの?」ビクッ
寝ていたニキちゃんが大声に驚いて起きた。
(暖かくていい人達だな…俺はこの好意に甘えてもいいんだろうか…)
((悩む必要はないだろう?
この者達の言うことは本心だ。素直に甘えるべきだろう))
「…ニキちゃん俺達、お店が出来るまでウィンチェスターさんのお家で
お世話になることにしたよ」
「ふえ…住む所できるの…?」
「そうよニキちゃん!私の事はお母さんだと思って頂戴ね!」
「ふふ、それなら私はお父さんだな!喜べエミリア!
お兄ちゃんとお姉ちゃんができるぞ!」
「ニキさんがおねえちゃん…
リョウヘイさんが…おにいちゃん!?」
「ハハ…どうやらそうらしいよ?」///
「や…」
「やったぁ!これからいっしょにくらせるんだねっ!」
エミリアちゃんは俺とニキちゃんの間に飛び込んで抱き着いた。
「うれしい!わたしひとりっこで
ずっときょうだいがほしかったの!!
げんきであかるいおねえさま!
すてきでカッコイイおにいさま!なんだかゆめみたい!」
「ふにゃ…なんだか恥ずかしいゾ…」////
「ははっ、これからよろしくね。エミリアちゃん」///
こうして俺とニキちゃんは
ウィンチェスターさんの家でお世話になることになった。