第7話 鬼娘ニキ
「あたし、ニキ!おにーさんは?」
「俺は堺良平だ」
「サカイリョーヘー?」
「良平でいい」
(トロの事はどうしようか…?)
((混乱を招きそうだから説明しなくて良いぞ))
「リョーヘー!いい人!」ぎゅ~
「ちょっ、急に抱き着かないでくれ…」////
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「そういうえばニキちゃんはどうしてこの森に?」
「うん、あたしは冒険者でおなか空いてたから帝国の街まで来たんだけど
魔族は街に入れてもらえなくなってて仕方なく森で食べ物を探してたんだけど
おなか空きすぎてて…」
良平は冷静に彼女の身体を観察する。
(冒険者…見た感じ服はボロボロだけど怪我をしてきた様子もないし
かなりの実力者かもしれないな…ってイカン!かなり際どい恰好だから目のやり場が)
彼女の服装はタイトなホットパンツジーンズに破れたシャツを胸元で締めるへそ出し
露出度高めの格好であり、幼げだが久々に見たそんな異性にドキっとしてしまった。
「?」
ニキちゃんは不思議そうに良平を見た。
「い、いや…///そっか…それに帝国の街か…なんだか良い感じの所ではなさそうだな…」
((帝国か…まだ滅んでなかったか。
良平、昔のままの帝国であれば人間界でかなりの勢力の国家だ。
我を滅ぼそうと軍や勇者を送り込んだのも帝国の連中だ。
1000年経っても魔族への差別は消えてないという事かもしれぬな))
(なるほど…別の場所を目指した方が良さそうだな…面倒事になりそうな予感がする)
「…それでね、帝国の領地を抜けてどこかの村か街へ行こうと思ってたの。
リョーヘーも冒険者だよね?ポイズンサーペント倒しちゃったし強いもんね!」
「ああ…うん、そう!俺は迷っちゃってて
街とか探してたんだけどよかったら同行してもいいかな?
帝国の街はあんまりいい所じゃなさそうだし…」
「…リョーヘーは人間?魔族じゃないんだよね…?
でもここから近いのは帝国だよ?本当にいいの?」
「うん。実は俺、冒険者になってから日が浅くてさ、方向音痴だし
一緒ならもう迷わないかもって…それに食料もあるからさ」
実力のある冒険者である彼女ならここで別れて帝国を目指しても良かったのだが、
彼女のどこか放っておけない不思議な感じと
久々な人との交流が嬉しく良平は同行を申し出た。
「うん!リョーヘーいい人だからうれしいよ!」
「良かった。これからよろしくねニキちゃん」
「こちらこそ!リョーヘー!」
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暫く森を歩くと湖の見える開けた場所を見つけた。
幸いにもさっきの大蛇や魔物にも出くわさずある程度安全も確保出来そうな場所だ。
ドサリ…っとニキちゃんのリュックが地面に置かれた。
「リョーヘー、日も暮れてきたしここで野宿しよう!」
「うん、そうしよう」
俺はアイテムボックスからキャンプ道具一式を取り出した。
「わわ!すごい!アイテムボックスだ!これは何?もしかしてテント?」
「そうだよ。そういえばポイズンサーペントだっけ?
この辺りに結構出る感じなのかな?」
「この辺りだとあまり見かけないよ?
あ、さっきの死体無くなってたけどどこ行っちゃったんだろ?
結構おいしいからお肉取っておきたかったなぁ…」
(あれ食べられたんだ…
蛇肉か…サバイバル訓練で食ったことあったけど
意外とイケるんだよな…この世界の食べ物も知っておかなきゃだし
この機会に食べてみるのも良いかもしれないな…)
「あぁそれなら」ヌルっ…
アイテムボックスの空間からサーペントがヌルリと出てきた。
ニキちゃんが夢中で中華粥を食べてる間にこっそり仕舞っておいたのだった。
「わっ!びっくりした!ねね、晩御飯にこれ食べてもいい?」
「うん。料理するからニキちゃんは向こうの湖からお水汲んできてくれるかな?」
「わかったまかせて!」
(さて、この分厚い肉は包丁だと…あれの出番だな)
人差し指に魔力を込めると一本の糸が真っすぐに伸び、固定された。
(長さはこれくらいか…そして刃物だと意識して…)
大蛇の首に対し
ピンッ
っと指をなぞった。
大蛇の首は落ちて転がった。
((良平よ、かなり使いこなせるようになったではないか!))
――――――――――――――――――――
ゴーレムとのレベリング後の話だ
((良平よ、戦闘でナイフを使うよりいい方法がある。
その手に我の髪を植毛してみないか?))
「ヴェルトロの毛を?」
((一本一本が自在に動く我の髪の毛だ。そこのゴーレムを見よ。))
ゴーレムに目を向けると シャンッ… っと小さく風切り音がし、
かなりの強度を誇るゴーレムが両断された。
「何が起きて…もしかして髪の毛で斬ったのか?」
((うむ!この毛は伸縮自在!
斬ることを意識すればこのような芸当が可能だ。
蜘蛛の糸のように獲物を縛ることもぶら下がることも出来るぞ))
(手から蜘蛛の糸…何ともアメイジングでホームカミングな響き…!)
「それは便利だ…!けど植毛って、もしかして痛かったり拒否反応とかあったりする?」
((昔部下にも試したが問題無く使いこなしておったな?))
「…ならお願いしようかな?じゃ指先に」
((…のう良平、おぬしが見せた漫画の中に鼻毛で戦う男がおってだな…
その~…良平にも鼻毛を使って――))「指先で」
――――――――――――――――――――
大蛇は一本の糸で
見る見る内に解体されていく。
「すごい便利だこれ」
((そであろう!何ならもう一本おぬしの鼻に――))
「さて、肉の準備が整ったからあとは調理法だな」
((無視))
「リョーヘー汲んできた…ってもうバラバラになってる!!」
「おかえりニキちゃん。これから焼くから
出来るまでもう少し待っててね。」
「わかったぞ!じゃああたしは湖で服を洗濯してくる!」
「暗いから気を付けてね?あ、このライトも持って行って」
カンテラ型のLEDライトを取り出し渡した。
「わぁ変わった魔道具だね?ありがとリョーヘー!」タッタッタ…
「さて、味が分からないからシンプルに塩胡椒で試してみるか…」
ジュゥゥゥ…
炭火を敷いたバーベキュー台で肉が焼けていく。
淡泊な蛇肉と思えないほど油と肉汁があふれ出してくる。
ゴクリ…
「臭みが少ないな…?むしろ香ばしい香りだ…ちょっとつまみ食い」パク
(~~~~~~~~っ!!
なんだこの肉は!?
通常の蛇肉を想像していたが全く違う!
他に例えるなら上等な牛肉と鳥肉の中間?
噛めば噛むほどサラサラな肉汁が溢れてくる!!
これは美味い!
炭火と塩胡椒で調理して正解だが少し香草をまぶして調理しよう)
「う、美味い…」
((感覚で伝わってくるがポイズンサーペントってこんなに美味かったのか…))
「そうだ、ニキちゃんを呼んでこなきゃ」
「おーい!ニキちゃ…」
俺の目に映ったのは湖で沐浴をするニキちゃんの姿だった。
カンテラの明りと湖に反射する月明りが彼女の身体を優しく照らし
水滴の一つ一つが宝石の様に輝いて見えた。
(…いかん思わず見とれてしまった)
「あっ!リョーヘー!」
ビクッ
「あっ…!ごごごごめん!!覗くつもりじゃ…」////
「いいにおいがする!もしかしてごはんできたの?」
「は…はい…」
小声で俯いてしまった
「あっ、もしかしてあたしのハダカ?
お母さんが好きな人以外に見せちゃダメって言ってたっけ?
んー、リョーヘーなら平気だよ?」
(~~~~~//// 何つー無防備だよ鬼娘…!)
「と、とりあえずこれで体拭いてね!俺先に行ってるから!」
俺はヴェルトロのマントを取り出し
ニキちゃんに投げ渡した。
「ありがとー!すぐ行くからまってて!」ふきふき
(ったく、こんなに取り乱して…!ドキドキしてんじゃねーよ…)
((我のマント…まさかタオル替わりにされるとは夢にも思わんかった…))