第6話 地上へ
((そろそろ休憩しようか?))
「…そうだな、慣れてきたけどさすがに疲れた…何体倒したかもう覚えてないぞ…」
ヴェルトロ弾丸はゴーレムを易々と破壊できた。
複数相手の動きにも慣れ、攻撃を躱すのも簡単に感じ始めていた。
((どれ、我にも見せてくれ。鑑定))
ステータス画面
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堺良平 LV86
HP:74190/78390
MP:15030/15450
力:84
素早さ:150
運:-
能力:----(画面がバクって見える) /アイテムボックス(エピックスキル)/
射撃技術LV10(完成)/対人戦闘LV8(コモンスキル)/調理師LV5(レアスキル)/
魅了LV2(エピックスキル)/精神耐性LV4(レアスキル)/スペクトラの加護(???)
ステータス異常:疲労
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「この短時間で86になってる!
ゴーレムの経験値、凄かったんだろうな…」
((ほほう、我に挑んできた勇者でもここまで強くは無かったぞ))
(ほう、女神の加護か そして…良平は記憶生成と言っていたが…やはりこのスキルは…)
「片目での戦闘も慣れてきたな。髪がちょっと邪魔だけど…」
((切ってやろうか?どれくらいの長さがいい?))
「それは助かるよ。こんな感じにしてもらえるか?」
スマホに撮ってた自撮り写真を見せた。
((ほう、変わった魔法具だな。…ところで髪は黒にした方がいいのか?))
「え?」
((いや、今のお主の髪…真っ白だぞ?))
「真っ白??…いや白髪がちらちら見えてるのには気づいていたケド全部?」
((我と会った頃から真っ白だったぞ?))
「…」
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ヴェルトロと過ごし暫く経った。
あと髪は折角なので魔法でヴェルトロとお揃いの銀髪にしてもらった
((ロン!マンガンだ!!))
「おい!なんだよその待ち!もしかして
俺の手牌透かしてないよな?」
((すす透かしとらんけどー?(汗)
お主だって偶に我の鎧に反射した牌見とったではないか!))
「」
ゴーレム1,2(…)
「…ッぷ」
((ぷっ))
2人「「ハハハハっ!」」
「…なぁトロ。そろそろ外に出ようと思うんだけど一緒に来ないか?」
((良平よ…折角だが、やはり我は外が怖い。
一緒に居ることでいずれお主にも迷惑が掛かるだろう…
それだけは嫌なのだ。))
「…なぁ、思ったんだがトロって大半の魔法は使えるんだろ?」
((…まぁ考えられる範囲で大体はな))
「姿を出さず一緒に行動できるような魔法ってないものかな?」
((まあ色々とあるにはあるが……そうだ、お主片目が無いのだったな?))
「あぁ、眼帯の下は義眼だ」
俺は義眼を取り出した。
――――ブチっ
唐突にヴェルトロは自身の右目をくり抜いた。
「お、おい…!? な、何やってんだよ!!」
((フフ、そんな飾りの眼より我の眼をやろう))
そう言うとヴェルトロの眼は義眼と同じ大きさに変化した。
「ヴェルトロ…」
((気にするな。この眼なら視覚も共有できるし、
我の魔法だって使える。これでお主と共に過ごせるのだ。
片目で済むなら喜んで差し出そう。それに目は3つあるしその気になればまた再生も出来る))
差し出された目を受け取る。
白目は黒く、光を帯びた赤い瞳。
まさしく魔眼である。
「ありがとうヴェルトロ。これでずっと一緒に居られるな…!」
((うむ!良平と共に外の世界を見られるとは!これから楽しみだ!))
俺はヴェルトロの眼を右目に嵌め込んだ。
目の奥でピリッっと何かが繋がった感触があった。
不思議と抵抗や痛みは無く元からそうであったかのように感覚が繋がった
((おぉ、我が良平を見、良平が我を見る…!
変な感覚だ。良平、平気か?))
「両目で見えてる…平気だ!特に気持ち悪い感じとかも無いぞ!ありがとう!」
((それは何よりだ!どれ、外へ出る前に我のマントも持っていくがいい。
色々と助けになるだろう))ビリビリ…
「ありがとう。しかし初めての地上か…。
ここにはいつでも戻ってこれるのか?」
((うむ。転移魔法があるから好きな時に来れるぞ。早速地上へ行こうか!))
「あぁ!じゃあ転移よろしく頼む!」
((転移))
足元に魔法陣が浮かんだ。
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眩しい。
太陽の光だ。
ぼんやりと緑が見える。草木の臭いもする。
地下と違う空気。深呼吸をする。
「…外だ。地上だ…!」
地上に出るとそこは森だった。
((おぉ…!日の光を浴びる感覚…!いつ以来か!!
もう見ることは無いと思っておったのに…!良平よ!))
「あぁ…!トロ!」
「「地上だ!!!!」」
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神界 女神の部屋
「ついに地上ね!やったわね良平くん!」ガッツポ
「しっかし、ヴェルトロも魔眼なんて与えて…
変な連中に目を付けられないといいけど…」
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((良平よ、これからどうするのだ?))
「そうだな、とりあえず街を目指してみようと思う。
店を出すにしても許可とか要るだろうし。」
((そうか。一応眼帯はしておくのだぞ?
人間とは1000年前魔族と争っておったのだ。
眼を見られては事だ。用心しておくと良い。))
「あぁわかった。ちなみに眼帯してても見えるのか?」
((問題ないぞ。…付近に人の気配があるからそっちへ向かってみるか?))
「そうしよう。あ、本当だ視界が遮られない。人か…悪人じゃなければいいけど…」
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おなかすいた…
もう何日もたべてない…
もううごけない…
ガサッ…!
「シャァァァ…!!」
(ポイズンサーペント…!戦わないと…!)
ぐらっ 視界もぼやける
(あっ…体うごかないや…)
死んじゃうんだ…あたし…
パァン!!パァン!!!
「グ…ェ」ドサッ
「なんてでかい蛇だよ…
おい!大丈夫か!?ケガしてるのか!?」
(誰…?銀色のきれいな髪…あたしを助けてくれたの…?)
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「しっかりしろ!回復魔法をかけたのにどうして…」
キュルルルル…
((良平、その娘どうやら空腹のようだぞ?))
「おなかすいた…なんにちもたべてない…」
(何日も食べてない…?飢餓状態で消化の悪い物だとマズイな…と、なれば…)
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よく洗った米を水に付け置く。
水、鶏がらでダシを取ったスープを土鍋に…
消化を良くするため水分は多めに中火で煮立てる。
米を入れて弱火で30分炊く。
火を止め、溶いた卵、塩を入れ10分蒸らす。
刻んだネギ、クコの実、ごま油を数滴垂らして…
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(レシピ生成完了。中華粥だ)
レンゲで粥をすくい少女の口元に運んだ。
「ほら!ごはんだ!ゆっくり食べるんだぞ!」
((食べやすいよう少し冷ましておくぞ))ヒヤ…
右目の魔眼からヴェルトロのサポートだ。
「いいにおい…ごはん…?ごはん!」
女の子は起き上がると夢中でお粥を頬張った。
「いいか?ゆっくり食べるんだ。ゆっくりだ」
もぐ…もぐ…
「うま…うま…うま!」ガツガツ…!
「ああもうゆっくりだって…」
((この娘どうやら鬼のようだ。
内臓も肉体も頑丈だから心配は要らぬだろう。))
飢えた人に飯食わせて死んだ話を耳にした事は無いだろうか?
良平が危惧していたのは”リフィーディング症候群”
飢餓状態での急激な栄養摂取が原因で電解質異常などの重い合併症を引き起こす症状だ。
しかしみるみる内に元気になる少女を見て良平は安堵した。
(重篤な飢餓状態じゃなくてよかった…
角を見てもしかしてと思ったけどやっぱり鬼だったのか)
「おいしい!おかわりください!」
((うーん良平、我もどんな味か気になる。お主も食べてみてくれ))
「わかった。沢山あるから好きなだけ食べてね。
一緒に食べよう。」
「うん!」ニコッ
ボロボロ服に金髪ツインテールの鬼娘
"ニキ"ちゃんとの出会いだった。