第15話 家族に!
良平達は信長の城を出て帰路へ向かおうとしていた。
「今日は遅いですし宿屋で一泊して帰りましょうか」
(ここなら人通りは無いな…
トロ、転移魔術って何人まで一緒に送れる?)
((そうだな、あの距離を帰るのは面倒だ。
オヌシに接触しておれば何人でも。))
(わかったありがとう。)
「みんな、俺の手を握ってくれないか?馬の手綱は握ったままでね?」
「?わかりました」にぎ
「リョーヘーこう?」にぎ
「よし、転移!」
シュゥゥゥ!!
足元に魔法陣が広がって光に包まれた。
~~~~~
「うぅ…眩しかったぞ…」
「う~ん良平さん何を…?って我が家じゃありませんか!!??」
「よし!成功だな!今のは転移魔法です。
ヴェルトロの魔術の一つですよ。」
「はぇ~…すっごいのだ…」
「何と!?これが転移魔術ですか…何とも便利な…」
「一度行った場所でないと使えないので朝の時には使えませんでした。
オーワリや魔王城は記憶しましたので次からはこれで移動しましょう。」
「おぉ!それは助かりますよ!
あ、良平さんエミリアのお土産は大丈夫ですか?」
「ええ、もちろん買ってあります。」
「それは良かった!では帰りましょう。」
~~~~~
「リョウにーさま!ニキねーさま!おかえり~~!!」がばっ!
「ちょ…私には?」
「エミリアちゃん起きててくれてたんだ…」
「おかえりなさい。エミリアってば良平さん達が返ってくるまで
絶対寝ないって言うもんですから。」
「そうだったのか…遅くなってごめんね。はいお土産だよ。」
アイテムボックスからつのつのベアー人形を渡した。
「わぁ~~~~!!かわいいくまさん…!
リョウにーさまありがと~~!!」ぎゅ~~~
「どうたしまして」////
「あら!良かったわねエミリア」
「ほほう、いいセンスですね良平さん!」
「喜んでくれてよかったね!リョーヘー!」
「皆様お帰りなさいませ。お風呂をご用意しておりますので
疲れを癒して下さいませ。」
「ありがとうガーラン。ニキさんからお先にどうぞ。」
「リョーヘーも一緒に入る?」
「いいから先に入ってて」////
「むぅ~、じゃエミリア一緒に入ろ!」
「うん!」
~~~~
「リョーヘー!おじさん!あがったぞ!」ほかほか
「うん、ハートランドさんお先にどうぞ。」
「良平さん、折角なので一緒に入りませんか?」
「え?いいですけど…?」
「良かった。本日はお疲れでしょう、お背中流しますよ」
「わかりました。俺も背中流しますよ」
「うふふ、私も一緒に入っちゃおうかしら?」
「~~~~っ」/////
「これルマリア!ささ、行きましょう良平さん」
~~~~
浴室
ザザー…
「今日は本当にお疲れ様でした。
…すみません良平さん、実は魔王様に良平さんの出店許可を
頂こうと相談に伺ったのですが、
まさか直接謁見する事になるとは…」ごしごし
「いえ、少し驚きましたけど、
そのおかげでこんなに早く店を持てるとは思わなかったので
良かったです。ありがとうございますハートランドさん。」
「本当に良かった…魔王様の気性はその…
ああいう所があるのでどうなってしまうか不安でしたが
流石の良平さんでしたね…しかし広い背中ですなぁ」ごしごし
「すみません、先に洗わせてしまって…そろそろ変わりますね」
ごしごし…
ハートランドさんの背中を洗う。
(思えば誰かの背中を洗うのって初めてだな…
ハートランドさんの背中…
もし俺に親父が居たらこんな感じなんだろうか…)
「…フフ、いいもんですなぁ」
「? どうかしましたか?」ごしごし
「…息子と思える人にこうして背中を洗って貰う…
夢が実現するとは思いませんでした。」
……
「…俺には父も母も居ません…けどこうして
ハートランドさんの背中を洗ってるとなんだか
不思議な気持ちになります…」ごし…
「良平さん、前にも言いましたが、私達はあなたとニキちゃんを
本当に家族だと思ってます。種族が違う、異世界人、私達にはそんな事
些細な事なんです。出会ったばかりでこんな事信じられないかもしれませんがね
一緒に暮らしてると嬉しくて毎日が楽しいんですよ。
ルマリアは息子も欲しかったと言ってましたが種族の特性で
女の子一人しか産めません。私が妾を取って産ませる訳にもいかない…
エミリアも兄弟を欲しがってた。
二人は今あなた達と一緒に暮らせて毎日嬉しいんです。
…思えばあそこで良平さん達に助けられた時、
運命のようなものを感じました。
私達の都合ばかり言って本当に申し訳ないと思ってます。
けど、良平さんとニキちゃんが本当に私達を家族と思ってくれるなら
それに勝る喜びは無いとだけ言っておきます…」
(…孤児院育ちの俺にとって家族は同じ孤児の仲間…
親は寮母さんだった…。
本当の家族って何かわからない。
ただ、ウィンチェスター家の皆と居ると
暖かくて不思議な気持ちになるのは本当だ。)
((どう生まれたか知らぬ我が言う事ではないが、
後は良平の心持ち一つだと思うぞ…?))
……
「… 親父…と呼んでもいいですか…それに敬語も必要無い…です」
「! 良平さ…!良平君!!もちろんだ!!」
「うふふ、なら私は良ちゃんって呼んじゃおうかしら?」ガラっ
「うおっ!?ルマリアさん!?」/////
「おぉ!聞いてたか!!」
「良ちゃん?私の事はなんて呼んでくれるの?
まさか私だけルマリアさんだったら承知しないわよ~?」
「あっ…えっ…その…」/////
「じゃあお母さんって呼びなさい?はい!言ってみて!」
「あー…えーと…か…母さん…」/////
「は~いっ!うふふっ私に大きな男の子ができちゃった!
嬉しいっ!よろしくね良ちゃん♡」ぎゅっ
(…あったかい)
俺はルマリアさん…母さんの胸の中に抱かれた。
ハートランドさんは黙ってうんうんと頷く。
いつもの女性への気恥ずかしさが消えている。
今はこの暖かさだけが俺の心を支配して、何故か涙が零れた。
その後の就寝時は右に親父、左に母さんの
手が俺の腕を掴んでいた。
~~~~~~~
翌朝
「うにゃ~…あたしにはまだ本当のお父さんとお母さんが居るから難しい…
でもみんなの事は大好きだぞっ!」
「あら、そうなのね?でも私達は娘だと思ってるから
いつでもお父さんお母さんって呼んで頂戴ね?」
「む~~~~~っ」ぷく~
エミリアちゃんはかんかんで
抱かれたつのつのベアーのおなかが潰れてる。
「どうしたエミリア?」
「パパもママもずるい!!わたしもいっしょにねたかった!!」
「すまんすまん、ニキちゃんと一緒に熟睡してたから起こせなくて…」
「きょうはわたしもいっしょにねる!」ぎゅ~~
子供と思えない力で脚に抱き着かれた。
((ンフフ…かわいいのう))ほっこり
「良平様、いずれ私も一緒に寝させて頂きますので
一人で寝る日はおっしゃって下さい。」ジト…
「」
((このリサコというメイドはちとこわいのう…))
~~~~~~~~~~~~~~
数日後
(信長公からの連絡はまだ来ないか…)
((良平、そろそろギルドに顔を出さないといかんのではないか?))
(あ!そうだった。あれ?ニキちゃんてもしかして
1か月以上依頼こなしてないんじゃ…)
「ニキちゃんニキちゃん、ギルドの依頼そろそろ受けなくていいの?」
「あっ!そうだった!どうしようリョーヘー…
もしかしたら3か月すぎちゃったかも…」
「? 1か月じゃないの?」
「え?3か月だぞ?」
「??? とりあえず今日は何か依頼受けに行こうか」
「うん!転移まほーよろしくなのだ!」
~~~~~
冒険者ギルド
「こんにちはコルトさん」
「こんにちは!」
「あっ///良平さんにニキさん!今日はクエストの依頼ですか?」
「うん!ところであたしの依頼期限って過ぎてたりしてない…?」
「カードを確認しますね。どれどれ…
あ!危なかったです!期日は明日でしたよ!?」
「あ、あぶなかったのだ…」ほっ…
「よう!二人共来てたか!!」
「カヴィ姉!こんちわ!」
「どうもカヴィさん。聞きたいんですけど
依頼の期日って本当に1か月なんです?」
「あー…あれなぁ。コルトの奴が良平に会いたいからって
それで短くして欲しいって頼むもんだから…」
「…っな!/// 違うんです良平さん!!
ギルマスが勝手にやったことなんです!信じてください~////」
「ハハ…でも、そのおかげでニキちゃんの期日前に来れたんだ、
全然気にしてませんよ」
「良平さん…」///
「さっすが良い男は言うことが違うねぇ!よし!
今回の依頼料は10%上乗せしてやる!あそこのボードから
クエストの紙を持ってきな!」
「あれか…お?」
見覚えのあるモヒカン巨体の背中が見えた。
「ようザック!」
「ん?おう!良平じゃねえか!クエスト受けに来たのか?」
「あぁ。折角だから一緒に受けないか?
今回ギルマスが報酬10%上乗せしてくれるらしいんだ」
「そいつぁいいな!お前となら高難度のやつもイケるぜ!
ん?ニキも一緒なのか?」
「よろしくなのだ!」
「これは楽なクエストになりそうだぜ!なぁ、こんなのはどうだ?」
――――――――――
A級クエスト
ホーンドベアーの討伐
場所:死の森
報酬:金貨30枚
――――――――――
「良さそうだけど死の森ってなんだ?」
「何だ知らねえのか。死の大地の森林部分の事だ。」
「死の森は危険な魔獣がたくさんいるのだ!
でもあたしたちなら大丈夫だと思うぞ!」
「なるほど、それって近いのか?」
「あぁ!ギルド内に転送ポータルがあるから
付近の詰め所まで一瞬だぜ!」
「よし、これを受けてくる。」
「おう、戻ったか!どれ、ホーンドベアー討伐か。
なんだザックも一緒かい。
あんたらいつの間に仲良くなってんだい?」
「もういいだろあの事はよぉ!で、10%上乗せってのは本当かよ?」
「10%は良平だけだ!文句があるなら消えな!」
「んだよ…まぁでも楽なクエストになるんだ。構わねえぜ!」
「というわけなんでこれでお願いします。」
「よし!外のポータル広場から行きな!
まぁ実力のある3人だし問題無いだろうけど気を付けるんだよ!」
「良平さん…ご無事で」
「ええ!では行ってきます。」
~~~~~
死の大地 冒険者駐屯基地
シュゥゥゥン…
「ついたぞ。ここが詰め所だ。」
詰め所の中には冒険者と思しき人物達。
ポーションや食料物資の売店もあった。
「へー売店まであるのか」
「良平、お前ヒールは使えるのか?」
「あぁ。アイテムボックスがあるから食料も問題ないぞ。
このまま行こう。道案内は頼んだ。」
「あたし方向おんちだからザックに任せるのだ!」
「ほーアイテムボックス持ちか!よし任せな!」
~~~~~
死の森到着から20分
「リョーヘー、つのつのベアーは爪もだけど
角の突進には気を付けるのだ!」
「つのつのベアーて…あれ?もしかしてあの人形って」
「そうだぞ!本物はとってもこわい魔獣なのだ!」
「お前ら静かに…!あれだ…」
体長5メートルはありそうな角の生えた巨大熊が見えた。
「うお…まじでデカいな…」
「こっちは風下で俺らにまだ気づいてないな…
木に囲まれててもアイツにとっては小枝みたいなもんだ。
向こうの開けた場所で戦うぞ。
ところでニキは武器持ってないのか?」
「あたしはこれがあるのだ」
ニキちゃんはメリケンサックのような物を手にはめた。
そういう戦い方なのか。
「チっそんなモンで…相当自身があるようだな?」
「つのつのベアーは何度かこれで倒したぞ!」
「そうかい。おう良平、この前は無様な所見せちまったから
お前はそこで見学してな。俺達だけであいつを殺る。」
「…気をつけろよ?ヤバそうだったら援護するから。」
「おう。よし、いくぜニキ!俺が広場に誘うから援護頼むぜ!」ダッ!
「まかせるのだ!」ダダッ!
ザックとニキちゃん。お手並み拝見だ!




