出会いとかは感動的な方が良くない?
「天総院学園」
それは、日本でも有名なお嬢様学校。
あらゆる分野のエキスパートを集め、未来を担う人材を輩出する事を理念に掲げた学校だ。
在学中は快適な学習環境を提供するため、最新鋭の機材を取り入れている。
そんな未来を約束された場所に足を踏み入れた私の名前は、十条麗華。
祖父は財閥の当主で、父の名前の聞けば大抵の企業は震えあがるくらい影響力を持っている。
そんな祖父の勧めで留学をしていた私だが、祖母の危篤を知り帰国。
母の容態も落ち着いた所で、一族の説得もあり日本に留まることとなる。
学園長である父の勧めもあり、天総院学園へと編入する事になったのだが…。
「搬入、こっちでーす。周りの生徒に迷惑かけないようにお願いしまーす」
学園にそぐわない物が搬入されていく。
物。もの?
物っていうかこれは…。
「なんか変なの搬入されてるー」
「今回も俐々愛先輩?」
「じゃない?」
周りの生徒は全く動じていない。
どころか…。
「常習犯だと…?」
もう見慣れてます。と言わんばかりの表情で足も止めずに校舎へ歩いていく生徒たち。
「でも学校に戦車持ち込んで何するんだろうね」
「さあ…?」
センシャ。戦車。
「嘘やん…」
聞こえてくる話を整理するに、どうやら俐々愛という名前の生徒が持ち込んだものらしい。
そして、常習犯であるということ…。
足を止め、呆けている間にもどんどん戦車は運び込まれていく。
「置く場所、あるのかしら」
私は、細かいことは考えないようにした。
戦車が動く際に生じる大きな音を聞かないフリをし、校舎へと歩いていく。
「下駄箱…」
漫画では転校生は職員室にいくもの…という相場があるが、ここではその限りではない。
スマホで受け取った写真を頼りに教室へと向かうが…。
何やら騒がしい…。
騒ぎの原因はどうやら―――。
2-B。
騒ぎの原因であろう教室の表札を確認する。
私の入る予定であるクラスも――――2-B。
「大丈夫かしら…」
一抹の不安感を無理やりに振り払い、教室に入ろうとする。
「ごめんなさい、入らせてもらっていいかしら」
既に相当な野次馬が集まっている。
私が声をかけるとみんなはすぐに道を開けてくれた。
あまり音をたてないようにし、ドアを開ける。
騒ぎの原因は、どうやら一人の生徒のようだ。
「俐々愛、戦車なんて持ち込んで何に使うの?」
「昨日ガ〇パン見たら私もやりたくなってね」
「そんな軽々しくできるものじゃないよ?!」
俐々愛。聞き覚えのある名前だ。
目の前にいる長身で銀髪の女の子が、どうやら今回戦車を持ち込んだ真犯人のようだ。
同じクラスだったのか…。
転校初日で既に先行き不安だと思っている私をよそに、彼女たちは盛り上がっていく。
「でも私、気づいたのよ」
「気づいたって…何に?」
「一緒にやる相手がいないわ」
「でしょうね…」
「戦車って返品きくのかしら」
きかないと思うよ?
入口のすぐそばで呆けている私。
だが、周りはそんな私に構うことなく進んでいく。
「待ってたわ…転校生…」
「?!!?!?!」
めちゃくちゃビビる。
というか私に気づいてたの…?
私彼女と面識あったかしら?
頭をフル回転させて記憶を探る。
私の一族は日本では三大財閥と呼ばれるほど有名だ。
その一族である私は留学する前は社交界に顔を出していた。
記憶力がいいこともあって人の顔を忘れることはほとんどないのだけれど…。
「あなたを待ち続けて苦節300年…」
長いよッ。
「今でも忘れないわ。幼い頃、自由研究で一緒にホームレスの生態を調べた日々…」
絶対私じゃないよね?
「教室で鍋をしてあやうく火事になりかけたあの日…」
普通に危ないよ?!
「でもあなたを待ち続けた日々ももう終わり…。これからは…」
「これまでのように、楽しい日々を送りましょう!」
こちらを向き、そう言い私に手を伸ばす彼女。
「………」
その場に沈黙が流れる。
全員と一回ずつ目が合い…。
「誰??!!!?!?!?!?」