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Swish ースウィッシュー  作者: 青空 翔
第一章 高校バスケの始まり
6/26

第4話 5対5②

残り約3分。

見ているこっちがハラハラする。たかが仲間内のゲームだってのに、どれだけ真剣に取り組んでいるかが分かる。


河田先輩がエンドラインから、センターラインの辺りに居た江川先輩にボールをぶん投げた。が、植原先輩ビがパスをカットして、再びオフェンスにまわる。


左45度にいた谷口先輩ビにボールが渡り、スリーポイントシュートが打たれる。


ボールは惜しくもボードに当たって跳ね返ったが、ゴール下で河田先輩と争っていた夏川先輩ビが、ジャンプしてチョンッとボールをリングに落とすように押し込んだ。


13−25。


流れは完全にビブスありチームにある。

ビブスなしチームの先輩たちは、疲労困憊の顔をしている。

負けている時は、かなり精神的にも負担がかかる。


再度エンドラインに立った河田先輩は木下先輩にボールを渡した。


木下先輩が相手コートまでボールを運んでいく。


木下先輩はトップに居る上島先輩にパスして、リターンパスを走りながら受け取る。


筒井先輩ビと植原先輩ビが反応したが、木下先輩はすでに二人の間をボールを持ってすり抜けていた。ゴール下にいた夏川先輩ビが手をあげてディフェンスしているのを、一つドリブルをダムッと突いて躱す。そのまま左レイアップを打った。

ボールはゴールに入った。


「木下先輩上手すぎるだろ……」

また声に出ていた。


15−25。


今のプレイで少しビブスなしのチームは盛り上がったかもしれない。


ビブスありチームが再び攻める。


ボールを持っていた谷口先輩ビがゴール下の相川先輩ビにパスを出す。

河田先輩がディフェンスする。

谷口先輩ビは左方向にフェイクを一つ入れた。河田先輩が反応したのを見逃さず、フェイクを入れた方向とは逆にドリブルをつき、ゴール下のシュートを打とうとする。

次の瞬間、河田先輩の手が谷口先輩ビの腕に当たる。


俺は間髪を容れずブザーを鳴らした。

ビーッと音が鳴る。……俺この音嫌い。

「河田先輩ファウルです。フリースローです。シュートは入っていないんでツーショットです」


「しまった……」

河田先輩は本気で悔しがっている。

このゲームに本気で取り組んでいると分かる。


「ツーショット」

ボールをフリースローラインに立つ谷口先輩ビに渡す。


ダム、ダム、と谷口先輩ビ独自のルーティンをして、ボールを構え、シュートする。


スパンッと小気味良い音を立ててボールはネットをくぐった。


15ー26。


「ワンショット」

再び谷口先輩ビにボールを渡す。


先ほどと同じルーティンを行い、ボールを構え、打った。


「あ、ずれた。右!」

谷口先輩ビが言うと、右の方で相川先輩との戦いを制していた夏川先輩ビが跳んで、リバウンドのボールを掴む。そのまま右コーナーにいる筒井先輩ビにパスを出す。筒井先輩ビがスリーポイントシュートを放った。

綺麗な放物線を描き、ボールはそのままゴールに吸い込まれた。


15−29。


「やべえぞ負けるぞ……」

河田先輩が呟いている。ここまで聞こえてるけどね。

「しっかりしてください河田先輩」

木下先輩が声をかけている。


木下先輩がボールを運んでいく。

右45度にいる江川先輩にパスを出す。リターンパスが木下先輩に帰る。

そのパスをカットしようと筒井先輩ビが手を伸ばしたが、木下先輩は筒井先輩ビの手よりさらに奥に手を伸ばし、ボールを取ると、ロールターンをして筒井先輩ビを抜き去る。植原先輩ビがカバーに出たが、木下先輩は上島先輩にボールを投げる。

上島先輩がスリーポイントを打った。

ボールは空中を1秒ほど飛び、その後ボードに当たってリングに入る。


「いよっしゃ!」

上島先輩がガッツポーズをしている。


18−29。


「11点差か……」

河田先輩がつぶやく。


ビブスありチームボールからゲームが再開する。

筒井先輩ビがボールを運んでいく。


木下先輩がディフェンスにつく。


刹那、レッグスルー(ボールを足と足の間に通してドリブルすること)をしようと筒井先輩ビがボールを動かした瞬間を見逃さず、ボールをスティール(オフェンスからボールを奪うこと。)する。そのままゴールに向かって突っ込んでいく。レイアップでしっかり決めていく。


20−29。


このプレイが功を奏したか、少しビブスなしチームの流れが良くなり、24ー32で最初の10分間を終えた。


3分の休憩時間になった。俺は水筒運びをマネージャーの野口さんに頼まれた。

2チームは一応今は敵同士なので、一緒には休憩しないようだ。俺はまずビブスありチームの方に行くことにした。



「ふいー……疲れるー」

ベンチに座るや否や植原先輩が早速声を漏らす。

「木下あいつやべえな。速いし鋭いし」

筒井先輩が木下先輩を褒めてる。よかったですね木下先輩。

「河田先輩きついっす」

相川先輩は河田先輩とマッチアップしていたんだった。そんなきついんだ。

「河田なー。あれでもあいつ一年の時は当時の三年の先輩に吹っ飛ばされてたぜ」

「そうなんすか?俺もっと頑張ります」

植原先輩と相川先輩で話が盛り上がっている。


俺は俺でやらねばならんことがある。


「水筒ですー……」

水筒を先輩たちに運ぶ仕事だ。


「おー、サンキュー」

「あざっす」

「あんがとさん」

「ありがとう」

「ありがとー」

お礼を言われるって気持ちいいね。


「後半も頑張ってください」

俺はそう言うと、次にビブスなしチームの方に向かう。


「お、ちょうどいいとこに来た」

近くまで寄って行った途端河田先輩に話しかけられた。


「?水筒ならここに」


「ちげーよ。後半から、お前に出てもらうから。こっちチームで。はいお前の分のビブス。あ、水筒ありがとね」

一通り喋り終わると河田先輩はドッカとベンチに座り込んだ。


「え?え?俺まじで出るんですか!?」

「だからそう言ったじゃん開始前に」

「いや、そうですけど……」

「江川と交代な」

「いや質問をさせ」

「よろしく!!」


あのー……。知らんぷりして水分補給している先輩たち……。ヘルプなしですか……?


「いいんですか俺が出て」

「いーのいーの。お前の実力見たいしね。江川だって了承してる。」

「いいプレイ期待してるぜ」

さりげなくプレッシャー掛けないでください江川先輩……。

「じゃあ、ありがたく出さしてもらいますけど……植原先輩たちの了承は得ているんですか?」

「……いーのいーの」

「なんですか最初の間。」

「…………いーのいーの」

「知りませんからね」

河田先輩って意外とマイペース?マイペースとはちょっと違うか……?

ま、いいか。


持っていたブザーを江川先輩に渡す。


そして俺はコートに足を踏み入れた。


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